July 12, 2004

殻々工房

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 7月9日から10日にかけて那須の殻々工房(からからこうぼう)体験に参加した。
 LANDshipBe-h@usのシステムを使って、若い野沢さん夫妻がみずからの手で店と家つくりをした。現場の隣にテントを張って那須の寒い夜をしのぎながら、駆体や設備工事はプロにやってもらって、進行に応じてさまざまなかたちで、みずからの手でつくっていった。壁を塗り家具をつくり塗装をして看板をつくり木を植えて、5月の連休のころに開店した。いま、屋上緑化に取りかかっている。

 Be-h@usは集成材の柱梁を金物でつなぐ。その骨組みに屋根、床、壁と断熱材を入れた合板のパネルをはめ込めば、高精度で気密と構造強度にすぐれた躯体ができあがる。システムがシンプルで分かりやすいし、ウェブサイトには部品も作り方も公開されているから、セルフビルドはBe-h@usの得意技のひとつである。
 それにインターネットが結びつくと、世界がとてもひろく豊かになってゆく。インターネットの得意技は、はなれた場所にいる人がひとつの時間と場所を共有できることだ。那須を訪れたとき、すでにぼくたちは野沢さんたちのBlogサイトKARAKARA-FACTORYを去年から見ていたし、お互いのサイトにコメントを書いたりメールをやりとりしていたから、ぼくはすでに殻々工房という場所をちょっとだけ共有していた。はじめて訪れたのに、ぼくは殻々工房を見学するというより参加するという気がした。

 野沢さん夫妻がこの店に「工房」という名を選んだのもいろいろなわけがあったにちがいない。普通の言いかたなら「レストランの一部がギャラリーになっている」ということになるだろう。しかし、ただ食べ物や飲み物を提供するだけの店ではない。食べものをつくり、飲み物をつくり、店をつくり、そして人と人の共有する場所をつくる。ふたりはそうこころざしたのだろう。
 店の軒下に、遠くから見たときには犬小屋と思われる木の箱がある。燻製つくりの箱なのだ。この日のために豚のバラ肉とと合鴨とラムの骨付胸肉の燻製がつくられる過程も見ることができた。手作りの板張りの箱の底に電気コンロを置いて、小さな鋳物のフライパンに木のチップをのせて煙をだす。箱の中に塩をした肉を吊るし、その煙に浸すこと2,3時間。それだけで、とてもうまい燻製がつくられた。この日は豚肉と合鴨とラムだった。今日のメールによれば、このあいだの豚肉がイマイチだったので、肉屋に頼んだらもとのうまい肉になったと書いてある。ぼくは十分にうまいと思っていたのだが、こんどの機会にはもっとうまいベーコンがたべられるわけだ。
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click the right image to pop up:何度見ても「旨そう」と溜息をつくSmoked合鴨

 「store」は商品を蓄えておいて売るみせだが 「shop」というのはつくって売る店なのだという。ぼくたちのまちのまわりからは、shopがつぎつぎと姿を消していった。storeというカテゴリーで店をつくれば、大きいほど商品構成はゆたかになるし安く売れる。大きければ大きいほどいいというアメリカ型、グローバリズムの世界になってゆく。しかし、ひとが集まる場所である飲食店には、その場で「つくる」要素が多く残されている。だから大きいほどいいという堕落には陥らずに頑張る余地がある。

 まだかまだかと思いながらやっとたどり着く。ここは、ふつうなら店をつくる場所ではないのかもしれない。しかし、軽井沢や清里とおなじように、大小をとりまぜたあらゆるテーマパークの寄せ集めと化した別荘地で自分たちの世界をつくるには、この場所は正しい選択だった。まわりの風景を壊すような過剰な自己主張はしない、大きな看板もつくらないということにしても、周囲に埋没しないですむ。
 殻々工房はとてもよくできている。「ハーフビルド」でこれほどのものが作れるのは、野沢夫妻の生き方、デザイン能力、そしてつくる力が卓越しているからだ。その力によるところがとても大きいから、Be-h@usなら、だれでもこんな風にできるというわけではないだろう。

 野沢夫妻は、この土地に店と家をつくり、料理をつくり、訪れる人たちとともに場所をつくる。BlogサイトKARAKARA-FACTORYには、店ができる前から、訪れない人も共有できる場所をつくった。セルフビルドの建物には、いつまでも完成はない。だからふたりは「工房」となづけたのかもしれない。

投稿者 玉井一匡 : July 12, 2004 11:02 AM | トラックバック
コメント

玉井さんありがとうございます。
まるで私たちの日々の生活をハードカバーに綴じてもらったような気分です。
玉井さんが書いてくださった私たちのことを、私たちは誇りとしてずっと心に持っていようと思います。

Be-h@usは、私たちを成長させてくれる建物です。要るものと要らないもの、その理由を考えさせてくれるからです。
よく考えながら、いつでも自分たちの感覚にぴたっと合う空間を、楽しみながらつくりたいと思います。
そして殻々工房を、場所に力を感じさせるような店にしたいと思います。
またぜひ、いらしてください。
お待ちしております。

Posted by: nozawa : July 13, 2004 11:47 PM
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