November 15, 2004

チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記

GebaraBook.jpgエルネスト・チェ ゲバラ 著/棚橋 加奈江 現代企画社/2,000円che002.jpg
  何年か前に娘が買ってきた本を自宅の本棚からさがしだした。ロバートレッドフォードがなみなみならぬ熱意を込めて「モーターサイクル・ダイアリーズ」という映画にしたとaki'sStocktakingで知ったからだ。 チェ・ゲバラと年長の友人アルベルト・グラナードがモーターバイクに二人でまたがりアルゼンチンを出発し、ほどなく壊れたバイクを捨ててヒッチハイクに乗り換えチリを経て南米を縦断する。そのときのゲバラ自身による記録がこの本である。
 読み進むうちに、ぼくはかつてこの本を途中でやめたわけを思い出した。

ありていに言えば読みにくいのだ。正直に言えば翻訳が下手だ。なにしろ「チェ・ゲバラと聞けば、胸が熱くなるおじさんもいる」と、Aki's Stocktakingには書いてあってこのBlogにリンクしてあるから、今度は最後まで読もうと決めていたのだが、それでも途中で5冊ほどほかの本を読んでしまった。ゲバラの原文が修辞的な表現が多いせいもあるのだろうが、それ以上にゲバラへの想いがあまりないせいだろうと婉曲に言っておくが、彼が言いたいことが伝わらない。

 こういうことを言いたいのだろうと読者の側が想像力を補いながら読んでいくと、当時の南米の国々のありかたやそれらとアルゼンチンの関係について、ゲバラがどう感じていたのかがわかってくる。今でも、サッカーを見ているとアルゼンチンには白人の選手が圧倒的に多く、他の南米チームが先住民やアフリカ系選手の多いのとは明らかに違いがある。まして、この時代のペロンとエビータがいたアルゼンチンは、他の国々からは理想の国のように見られていようだ。
 ブラジルが大きさで南米において特別な存在であるなら、アルゼンチンは人種の構成とそれがもたらした社会のありかたが特別だったらしいと、のちにチェ・ゲバラとよばれる若者の目を通してぼくたちにも理解される。 ブラジルを除く南米の国はすべて共通の言語を持つから、国による違いよりスペイン語という緯のつながりが強いらしい。スペイン語を話す人たちの下には、その地に受け継がれて来た本来の言語を話すインディオ(ヨーロッパ人が、この大陸をインドだと思い込んだから、先住民をインド人と呼んだんだ)が置かれる。スペイン語をしゃべる人たちの上には、安く労働力を買いたたき資源を吸い上げて富を拡大するアメリカ合衆国の大企業という模様が織りなされている。

 若い医学生と駆け出しの医者の二人づれは、南米縦断の旅をつづけながら、ハンセン病の病院で働いていたおかげで過剰な敬意を払われ、それによりかかり羽目を外し続ける。しかし、それは同じ基盤に立つスペイン語をはなす白人という身内に対してであって、いつも奪い取られるばかりの先住民へのまなざしは共感に満ちているし、奪い取る者たちへの義憤は熱い。南米におけるアルゼンチンの特別なありようとスペイン語が作り出し、アメリカ合衆国の力への反感が育てた南米の連帯感が、このころのゲバラに肉体化されたのなら、のちにキューバ革命に加わり、さらにボリビアでのゲリラ戦に命を賭けたのは自然なことだ。
 ふたりは、行く先々でサッカーチームの助っ人となって、アルゼンチンの若者らしく活躍するのだが、ゲバラのポジションがキーパーであるのが、ぼくにはちょっとした新発見だった。フォワードかトップ下くらいのような気がするのだ。

 多くの場合、本を読んだあとで映画を見ると不満に思うことが多いけれど、これはあとで映画を見ると大いに満たされるにちがいないと、ぼくは期待し確信している。

関連エントリー
「モーターサイクルダイアリーズ」

投稿者 玉井一匡 : November 15, 2004 11:40 PM | トラックバック
コメント

こんな時間にトラックバックしたのに、すぐにコメントがくるとは思いませんでした。もう、そんな前になるんですね、秋山さんのエントリーは。
このエントリーも書きかけのまま、しばらく放置されていました。いや、熟成ということにしておきましょうか。これは本についてけなしているもんだから、映画を見たくなったんだけれどその前にこちらをアップロードしておかなければならんぞと思ってエントリーしました。読んでみたら随分と手を入れたくなってしまいました。
日付はちゃんと11月15日に変えました。秋山さんに負けないように映画をみなくっちゃ。

Posted by: 玉井一匡 : November 16, 2004 02:11 AM

玉井さんがトラックバックして下さって、私の「モーターサイクル・ダイアリーズ」のエントリーを思い出した。8月末の頃だったのだ。
玉井さんが映画を見たんだな....と思ったら、本を読んだのですね。
私もその時、本を手に入れ読み出したのですが、1/4ほどで放ってあるのでありました。やぁ、映画を見てから読むことにしよう。

Posted by: 秋山東一 : November 16, 2004 01:58 AM
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