August 26, 2005

日本海とGoogle マップ

 Click to popup.

ぼくは高校や中学のころは地理が嫌いだった。暗記しなきゃならないものだと思っていたからなのだが、ずいぶん後に一転して地図が好きになった。地理というのは暗記するのではなくて想像力を働かせるものなんだと気づいた。
 Google マップは、ぼくたちがこれまで想像力にたよっていたところを絵にしてくれたので、想像力の足りなかった部分を埋めてくれるし、想像力の方は、もっと別のことにつかえるようになるのがうれしい。衛星写真と地図のあいだを、地球上の離れた場所を、瞬時に自在に行き来する。遠くから見ることも近づいてみることもカンタン。そうやって見ているうちに、国境によって切り裂かれ分割された世界が、海と土と緑で蔽われたひとつながりの世界であることが、実感としてわかるようになるのだ。このことを友人の宮前眞理子さんに電話で話したら、「宇宙飛行士が地球を見ると、世界観が変わるっていうけれど、そういうものかもしれないわね」と言った。さらに、海の写真は海底の起伏もわかる。ひとつながりの地表の、低いところに水がたまった部分が海とよばれるにすぎない。価値を数量化して指標にすることをぼくはきらいなんだが、これは、コンピューターの処理速度が向上して、それがある段階を越えたおかげで量の変化が大きな質の変化をもたらしたのだ。

 地図の範囲さえ自在になる。「サテライト」を選んで、画面の中心に日本海を持ってくる。そしてそれを陸地が取り囲むようにすると、ぼくが思っていたものとは日本海がすっかり別のものになる。大陸と細長い島で囲われた池のような海。かつてのひとびとは、この海をこんな風に感じていたにちがいない。隔てるものであると同時にむすぶものではないか。朝鮮半島は、壱岐・対馬を経て行き来するものだから、日本の北にあるような気がしていたけれど、じつは島の全体からすればむしろ西にある。
 この地図を見ているうちに、池のようなこの海を日本海と呼ぶことに固執しなくたっていいだろうという気がしてくる。「日本の海だ」といいつづけるのは大人げない。2002年のワールドカップの招致合戦を繰り広げていたころ、当時参議院議員で招致活動の中心の一人だった釜本は、韓国は委員を買収しているとさえ非難するほど対立した。ブラジルは日本を応援したが、ヨーロッパの委員が提案した共催という結論になった。おかげで交流が劇的に変化した。ワールドカップの開催が友好の「資源」となったのだ。

 かつて、日本と琉球のことを朝鮮では海東(ヘドン)と呼んだそうだ。このことばをはじめて見たときに、友人にたずねると、朝鮮の古称だと説明してくれたと思っていたのだが誤解だったらしい、朝鮮から見て海の東つまり日本と琉球を指すようだ。中国は、例によって中華思想だから邪馬台国が記録されたのが後漢書東夷(東の辺地)伝だったように、自分中心はおたがいさまだったのだ。国際的な関係が確立する時代に、たまたま日本海という名称が認知されて現在に至ったのだろう。
ワールドカップの開催権については、他人に言われて渋々共催に従ったんだが、むしろ、池のように周囲を囲まれる海の名称を、いっしょに考えてみないかとぼくたちが言い出せば、平和のための資源として活用できるだろう。スタジアムの命名権が商売の種になるんだから、海の名前を平和の種にすることもできるだろう。同じことを相手に要求されてから動き出せば、それは争いの種になるだろうけれど。・・・・・Googleマップはそんなところにまで我々をつれてきてくれる。


追記:aki's STOCKTAKINGへすぐにトラックバックされたあと、きみは忘れっぽいから、「環日本海諸国図」にトラックバックしたよという電話も秋山さんからいただいた。Googleマップにはできないが方位を変えられるってことは、とても大きなことだと思うんだ、だからEARTH BROWSERを忘れちゃ行けないと。
両方ともそのとおりなのだ。ぼくは忘れっぽいおかげで、同じことに二度も感動してしまうことがある。しあわせな人だと言ってくれるヤツもいる。aki's STOCKTAKINGにあったのを調べようと思いながら書いていて、調べることを忘れてしまった。たしかに、地図の方向を変えるというのは、立場を変えて地図を見ることができるということだから、とても大きな違いだ。「環日本海諸国図」を見ればよく分かる。地図を180°回転しただけでまったく日本海の意味が変わってしまう。

五十嵐さんがいろいろさがしたローマの建築を上空から見る「ローマの休日」も楽しい。

投稿者 玉井一匡 : August 26, 2005 08:25 AM | トラックバック
コメント

これがミランとインテルのミラノダービーのスタジアムだ。
Stadio Giuseppe Meazza
http://www.worldstadiums.com/stadium_menu/architecture/stadium_design/milano_meazza.shtml
google map
http://maps.google.co.jp/maps?ll=45.477820,9.123491&spn=0.005324,0.005861&t=k&hl=ja
ついでにピレリービルも
http://maps.google.co.jp/maps?ll=45.484447,9.201736&spn=0.005324,0.005861&t=k&hl=ja

Posted by: iGa : August 28, 2005 02:29 AM

 ぼくもシエナを探しましたが、地図なしではとても見つかるもんじゃないですね。カズのときはともかく、中田が行ってから、イタリアがとても身近になり、これでまた親しみが増すでしょう。そうそう、サッカースタジアム探しってのもあるぞ。なんて、催促してるわけじゃないですよ、べつに。
イタリアに地図が重なったり、写真のパースペクティブの方向がそろうようになったりする時も、すぐ来るんでしょうね。あんな遠くから望遠で撮っているのにしては、パースペクティブが強いような気がしますが。

Posted by: 玉井一匡 : August 28, 2005 12:48 AM

シエナのカンポ広場も探しましたが残念ながら詳細な衛星写真はありませんでした。
その代わり丹下さんのボローニアの再開発計画を見つけました。

http://maps.google.co.jp/maps?ll=44.508098,11.365045&spn=0.005415,0.005861&t=k&hl=ja

Posted by: iGa : August 27, 2005 06:19 PM

 インターネットやeメールによって、ぼくたちははるかに離れた場所で同じ時間を共有することができるようになりましたが、Googleマップなどの地図は、はるか遠い場所を共有することを可能にしてくれたという感じがしますね。すばやく、位置と大きさを変えることができるというのは、上空から位置と高さを変えて地球を見ることができるということで、しかも無料だからだれでも同じように地球上を見ることができるわけだ。機械があればですが。

 しかし、ときどき冷静に振り返ると、ぼくたちができる以上のことをCIAや軍はできるはずだ。この画像データは、人工衛星をつかってつくられたのだろうし、かれらは持っているものの中から粗いデータをおすそ分けして小銭を稼いでいるのでしょうか。世界中を一つの力で動かして、どこも同じようなものしてしまおうとする人々がめざすグローバリゼーションが一方にあり、また一方では、ぼくたちの目指すような一人ひとりの自由や、それぞれの場所の受け継いできたものを大切にしようとする考え方があるわけで、おそらく、インターネットやGoogleマップたちは両方に役立つのでしょう。だからこそ、ぼくたちはこのツールの活用をひろげなきゃならないと思います。マクドナルドを探すよりも、グランドゼロの囲いや北朝鮮の国境を越えて上空から見たい、ローマの町の美しさを実感したい。できれば、サバンナを走るシマウマを見下ろしたい。
しかし、タダでそういうことができるのは、マクドナルドを探すのにGoogleを使うおかげだと思いだして、ビッグMacを食べるアメリカ人たちに感謝しようと思います。
GoogleEarthはMacでは見られないと書いてありますね。「でも、ぼくたちはMacで仕事をしているんだが」と添え書きをしているのをみてちょっとニヤリとしました。
 

Posted by: 玉井一匡 : August 27, 2005 08:38 AM
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?