September 22, 2005

プルートウ

 浦沢直樹の「プルートウ」の第2巻をHさんが持ってきてくれた。前にエントリーしたが、彼は読み終わった本をDVDに保存する。背表紙の部分を裁断機で切断し、自動スキャナーで取り込んでDVDにしてしまったので持ってきてくれたのだった。いらなきゃ捨てていいよというが、ぼくの好きそうなやつを選んでくれるから、ぼくは捨てない。パンチで穴をひとつあけてリングを通した。第1巻は、まだ裁断していないのを持ってきてくれたのが事務所に置いてあったから、それはHさんに返した。
「プルートウ」は、鉄腕アトムの生まれた2003年4月7日を記念して浦沢が書いた鉄腕アトムの物語なので、表紙には作者として「浦沢直樹×手塚治虫」とある。雨の中で傘をさしたアトムがカタツムリを見つけるという登場で第1巻は終わった。だから、アトムが本格的に出てくるのはこの2巻からなのだ。浦沢がこの企画を虫プロに持ち込んだときのことを、手塚治虫の息子である手塚眞があとがきに書いている。一旦は婉曲に断ったのに、試作版をもって再度訪れたので、さすがに了承せざるをえずに浦沢に注文をつけたのだそうだ。キャラクターも浦沢流で描いて手塚治虫にガチンコ勝負を挑んでほしいと。

その注文のとおり、お茶の水博士、田鷲警視、アトム、そしてウランちゃんも登場するが、浦沢流の人物になっていて、長いあいだぼくの記憶に固定されてきたものとの違いが、彼らの登場のたびに感慨をあらたにする。たとえば漫画を実写版の映画にしたときの違いとは、別の違いがあるんだ。
人間をはるかに越えた能力を持ちながら限りなく人間に近い感性をもつロボットの苦悩は、アシモフ原作のアイロボットがそうであったようにロボットSFに共通のテーマだが、浦沢が丁寧につくりなおしたキャラクターは手塚が書かなかったものを表現する。手塚の人間たちはロボットのように見えるが浦沢のアトムは人間にしか見えない。手塚のアトムは未来とロボットを考えさせたが、浦沢アトムはロボットを通じて現在の世界と人間を考えさせる。イラク侵攻の問題も取り込む。浦沢が「やわらちゃん」を書いた人でもあることを思えば、かくも性格の違う漫画を描いてしまう才能に敬服する。
ところで、plutoは冥府の神、惑星の名では冥王星だ。海王星はなんとなくtitanだと思いこんでいたのだが、調べてみたら大間違いでtitanは土星の第6衛星。カタカナで使われると、あるときは金属のチタンになり、ロケットならタイタンと表記される。船の名になればタイタニック。つまり、titanは太陽系の惑星とはレイアがひとつ違うのだった。海王星はneptune。
2巻の最後のページには、それまで後ろ向きだった少女が憤慨してふりかえるクローズアップのウランで終わる。

投稿者 玉井一匡 : September 22, 2005 02:30 PM | トラックバック
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