October 22, 2005

ナイトホークス

 nighthhawks.jpg ナイトホークス/ マイクル・コナリー/古沢 嘉通/扶桑社

 漂泊のブロガーを見たら「エドワード・ホッパーの描く民家にちょっと似ていませんか?」なんてことがかいてあるので、おやと思ってしまった。ちょうどその日、ぼくは文庫本2冊の推理小説を読み終わったのだが、そのタイトルが「ナイトホークス」だったからだ。「Nighthawks」は、エドワード・ホッパーの中でも、ぼくたちにいちばん馴染み深い絵のタイトルで、人通りもなくなった深夜の街、バーのカウンターの向こう側に男と女がならびこちら側に男が一人腰掛けているやつだ。

 原作も同じタイトルなんだろうかと思って本の扉を見ると「THE BLACK ECHO」というのだった。そのままだってべつに悪いことはないと思うけれど、この絵が小道具として登場するのでナイトホークにしたかった気持ちはよくわかる。なにしろ主人公の名は愛称ハリー、正式にはヒエロニムスでファミリーネームはボッシュ、人間や社会の表層の奥にひそむものを表にださないではいられない画家ヒエロニムス・ボッシュと同じ名前を作者は主人公に与えたのだ。画家と同じように、そこまでしなくてもいいだろうにというくらいに真実を掘り出してゆく。NighthawksがあるのはThe Art Institute of Chicagoだが、小説の舞台はロサンジェルスだ。組織の中に収まりきれない刑事を主人公にするハードボイルドで作者のデビュー作だが評判がよくてシリーズになった。構成力、人間を描写する力、すっかり世界に取り込まれてしまった。推理小説は、さまざまな事象とそれらを結びつける因果関係を発見する過程を楽しむものだとぼくは思うが、その必然性を疑わせるところがない。重層するのに無駄な事象がほとんどない。ぼくは推理小説ファンのつもりなのに1992年に書かれたこの本をまだ知らなかったことがうれしい。シリーズの残りが、これから書くものも含めればまだたくさんあるのだから。

投稿者 玉井一匡 : October 22, 2005 12:22 AM | トラックバック
コメント

ぼくが読んだのは文庫ですが単行本もあります。アメリカ在住経験のあるいのうえさんには、もっといろんなことが読み取れるんだと思います。

Posted by: 玉井一匡 : October 22, 2005 11:36 AM

玉井さん トラックバックありがとうございました。 ホッパーの「ナイトホークス」はニューヨークの孤独を描いていて私も好きな1枚です。それにしても主人公の名前がヒエロニムス・ボッシュとは ちょっとすごみがありますね。最近悲しい事に眼の力が落ちてきて 小さい文字が追えないのですが この本は読みやすい大きさの活字なのかなあ?

Posted by: いのうえ : October 22, 2005 10:28 AM
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