January 08, 2006

ジャン・ユンカーマン

 1月5日の朝日新聞夕刊に、ジャン・ユンカーマンの記事が掲載されていた。「映画 日本国憲法」をつくったひとだ。日本の歴史を振り返ってみると、ぼくたちはとても貴重なものを持っているのにそれをないがしろにしていることを、たとえば明治初期に捨てられた仏教寺院や仏教美術のように、外国人に指摘されてから気づくということが何度かあった。「映画 日本国憲法」も、この憲法についてやはりそれが繰り返されている。
 ユンカーマンは、幼児期に日本に来て、帰国後ふたたび日本に戻り高校時代を日本で過ごしたあと、大学院を終えて再び日本に戻った。日本を舞台にした数々のドキュメンタリー映画は、どれもが日本に対するやさしいまなざしで描かれている。写真が彼自身のおだやかな表情を伝えている、そのままに。けれども、このすてきなものたちは、このままではなくなってしまうよと、ぼくたちにむけて痛切に語っている。
 ジャンさんは、たまたまぼくの自宅から歩いても10分ほどのところに住んでいる。昨年の秋に、朝から彼の自宅を訪ねたことがあった。映画「もんしぇん」の英語字幕と、主題歌の歌詞の英語字幕についての打合せのためだ。建築家に設計を依頼したとおぼしき、気持ちよさそうな住まいだった。

 はじめに、字幕の英訳をやってくれないかとたのまれた。というより草介が頼んでくれたというべきかもしれない。翻訳は、最後にのこされる言葉の質できまると、ぼくは思っている。英語から日本語への翻訳はやったけれど、ぼくは英語圏に定住したこともないから日本語を英語にするのは手に余ることだから、だれかネイティブの人に最終的に手をいれてもらえるなら、やってみようと思った。しかし、なにさま時間が切羽詰まっている。結局は順番を逆にすることになった。
ジャンさんにまず翻訳していただき、それについてぼくが、意見というより質問のようなものかもしれないが、こうしたらどうだろうかということを書いたメールを送る。夜遅くにそれのひとつひとつについての返事が届いた。その翌朝に自宅を訪ねるということにしていた夜に。ぼくがかかわることになったのは、「もんしぇん」をつくった若者たちが何を伝えたいのか、あるいは何を伝えてほしいかについては、そばにいたぼくがよく知っているからというわけだ。主題歌の歌詞の字幕だけは逆に、ぼくが書いた英語をジャンさんに目を通していただくということになった。ジャンさんの映画も「もんしぇん」も、制作が同じSIGLOなので、お願いすることになったのだった。
chomski911.jpg 彼は、午後に山形の映画祭から戻ったばかりだったのに、ぼくのメールにすべて目を通し返信したうえに、翌朝には、こころよく素人の意見に耳を傾けてくれた。新聞の写真のようなおだやかな笑顔を絶やさない。舞台は日本ではなかったけれど、「チョムスキー 9.11」もジャンさんのつくった映画だが、その中でチョムスキーは、あの時期のアメリカでイラク攻撃を批判するという命がけの行動を続けながら、終止おだやかな話しかたと笑みを続けていた。このふたりのおだやかさの下には、へこたれない強い意志がつらぬかれていにちがいない。きっと。

投稿者 玉井一匡 : January 8, 2006 02:25 PM | トラックバック
コメント

aiさん、コメントありがとうございます。こういう問題については、ちゃんと自分自身の目でものごとをみて自分の頭で考えなければならないですね。この映画は、そのために力になってくれると思いました。この憲法は日本が周辺の国のひとたちにしたことに対する謝罪の表明なのだという意見や、かけがえのないとても大切な宝物なのだという指摘をはじめ、ここの映画の中で語られていることの大部分が、素直に同意できるものでした。武力を増強するよりも、市民レベルでの友好関係をつくってゆくことの方がはるかに、平和のために役立つにちがいないと思います。ワールドカップ以降の日韓関係の変わりようは、それを証明したのではないでしょうか。
 この島々にあるもの、住む人々を、ぼくは自分にとってとても大切なものだと思っています。そして、完全無抵抗主義者ではないから、もしも侵略を受けるようなことがあれば、ゲリラ活動に参加するかもしれない。年齢制限なんてないでしょうしね。しかし、というよりも、だからこそかつてさまざまな形で日本に傷つけられた近隣の国の人たちが日本に対していまだに反感を持つとしても、それを分かるつもりです。
 脅威を語り「防衛強化」にみちびくよりは、ソトには友好をきずき、ウチには大切に思うにあたいするくにをつくるほうが、効果的で気持ちよく生きることができるのではないでしょうか。日本をよく知った上で、第三者の目でぼくたちの持っているもの受け継いだものの価値を教えてくれる、ジャンさんや、この映画の中で発言してくれている人たちのような人がいることは、しあわせなことだと思います。

Posted by: 玉井一匡 : January 19, 2006 02:22 AM

「映画日本国憲法」をようやくお正月に見終えました。3回ほどみて最後までようやくたどりつきました。第9条についてアジアを初めとする国際社会でどうとらえられているのかがよく判りました。このジャン・ユンカーマンさんのような外国人が日本に居住拠点をもってなおこのような活動をしてくださっていることに感謝しなくてはならないと思います。制作会社のSIGLOもなかなか頑張ってのようですが知りませんでした。
簡単な手段としてblogで若い方たちが憲法を改正するべきだなどと書かれているのをみるにつけ本当に何を情報として選べばいいのかわからなくて気付くところが違うのでは・・・?と思ったりもしていました。

Posted by: ai : January 18, 2006 05:37 PM
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