明治通りから江戸川橋までの神田川の両岸には桜が並ぶ。岸の側には建物があるので存分に枝を広げられないぶん、川のうえには精一杯に両側から枝を伸ばしている。関口芭蕉庵前の駒塚橋のたもとには白い桜が毎年のように一足早く花を咲かせる。少しずつ花を開きはじめた対岸から芭蕉庵を見ると、斜面のしだれ桜が満開に近い。
たまに雪が降ると町の景色が一変して、乱雑をきわめる街並さえ静けさにつつまれるように、さくらは、春にとって長続きのする雪景色のようにまちを変えてしまう。花が咲くと、それまではまだ息をひそめていた新しい季節があたりを満たす。神田川のこのあたりも、桜がはなをつけるこの季節にはすっかり景色が変わる。あすにもそうした時が来そうなこのごろは、川の石の上で亀が日差しをせっせと蓄えている。
「歴史の足跡」というサイトの「歴史を留める東京の風景」というところにある関口芭蕉庵と神田上水についての記述が、地図や広重の江戸百景の絵も添えて丁寧だ。