April 17, 2006

刑部アトリエと林邸と四ノ坂 けさ

 東西に長い刑部アトリエは東側から解体が始まり、林芙美子邸と向き合う西よりの棟はまだ残されていたが、今朝からはとうとう丸太の足場をかけてシートを張っている。 このあたりの上下の道をつなぐ坂には、山手通り際の一ノ坂から二ノ坂と名付けられ、林邸と刑部アトリエの間にはさまれているのは四ノ坂、というよりも、むしろふたつの緑ゆたかな家につつまれているというべきだろうが、坂は途中から御影石の階段に変わる。おかげでクルマが通らない。左右の家のありかたといい坂の勾配といい、さまざまな要素がこの坂道をここちよくさせている。みちのたたずまいをつくるという意味では、この西棟の方が、まちにおよぼす影響は大きい。

二つの家には、いずれも屋根におおわれた門がある。数段の階段を上り林邸には和瓦、刑部アトリエには大谷石の門柱にスペイン瓦をのせた門だ。門は、とかく排他的な印象を作り出すが、屋根がかけられると、それがむしろやわらげられて人を迎え入れる気配が生じる。 屋根付きの門には格式を示す意図もあったろうが、この家たちの門の2mそこそこの低い軒高は、むしろ人間的なスケールをつくりだす。しかも、坂道に面しているので階段を設けるから門は道路から退がる。おかげで道の空間はすこしふくらんで、坂道にゆたかな場所ができる。ケヤキはたおやかな枝に若葉をつけ、残りすくない花をつけた桜、ぼってりとした花を開き始めた八重桜、そして林邸には、かつて庭の大部分をしめていたという孟宗竹が塀の背後にきっぱりと立っている。これがどう変えられるのだろうか。
日ごとに切り取られてゆくまちを見たあとの気分を変えたくて、牡丹寺の通称がある薬王院の門前の通りがかりに自転車をとめて開花の様子をのぞいた。一面の牡丹のうち3株ほどが開花しているが、いまにも開きそうに色を浮かべてつぼみをふくらませるものが2、3割ほどあるけれど、そのほかはまだ緑色のつぼみをつけている。カメラを首にかけたお年寄りに声をかけた。「もう一息ですね」「今週末でしょう」といわれる言葉には、開くまでの数日のときをむしろ楽しむ思いがひそんでいるようだった。

投稿者 玉井一匡 : April 17, 2006 01:40 PM | トラックバック
コメント

玉井さん こんにちは。 連日のご報告有り難うございます。私は土曜日にいってきました。外国から出稼ぎにきている若者が足場を組む木を 私のすぐ後ろに落っことして親方にしかられてましたが いや危なかったです。 
辛い話題のあとに 薬王院でのエピソードを書いていただいたのでほっと心が和みました。 

Posted by: いのうえ : April 18, 2006 02:50 AM
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