May 24, 2006

「もんしぇん」の公開

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以前のエントリーで、「もんしぇん」という映画のことを書いた。ときどき、うちの事務所にあつまっては議論をして数年間、昨年で撮影と編集が終わっていたのだが、やっと上映の日程と上映館が正式にきまった。といっても、5月のはじめにきまったのにiBookの変調・ラオス行き・腰痛と続いて、いつのまにか時がたち、先日は、MADCONNECTIONでおなじくシグロ製作のドキュメンタリー映画「エドワード・サイード OUT OF PLACE」をエントリーされた中で、iGaさんがこの映画のことにふれてくださった。ぼくは、これがつくられる過程を見ていたので、進行を報告してゆこうとしているのだが、すっかり遅れをとってしまい、ちょっとあわててエントリーすることにした。もんしぇんの監督をした草介は、OUT OF PLACEの監督佐藤真氏のドキュメンタリーで助監督をしたことがある、佐藤さんの弟子だ。
天草市の第一映劇で7月15から25日まで先行プレミア上映、東京は上野の「一角座」で8月19日からロードショー。遅ればせながら、もんしぇんの公式ウェブサイトの募集も始めたと、シグロのサイトにも書かれている。

 昨年、「第一映劇の館主の柿久さんとここで待ち合わせたんだ」と、夕海が事務所にやってきたことがある。柿久さんはサザンオールスターズの熱心なファンで、コンサートを聴くために東京にいらしたのだが、映画館主ときいて思い浮かべるよりずっと若い人でおどろいた。ただならぬ映画への情熱で小都市で小さな映画館の運営に奮闘し、年に一度の天草映画祭の中心を担う。「もんしぇん」を応援してくださるのも、その情熱のおかげだ。そのとき、夕海とかりんをコンサートに連れて行ってくださった。
 彼らが、東京ではなく天草を出発点として上映することにしたのはほかでもない、この映画では、地形や場所、天草の海と島、むろんそこのひとびとと培って来た関わりあいも、映画の一部をなす大きな意味をもっているからだ。mF247でも、「脈動変光星」の活動拠点は熊本県として登録してある。
 一角座は上野の東京国立博物館の構内の一角にあって、道路をはさんだ向かいには国際子ども図書館がある。Googleマップの衛星写真でみればこの写真には、まだ一角座はなくて空き地だ。樹々や博物館に囲まれたここちよい環境は、若者が集まり商業・娯楽施設の密集するようなまちとはかけはなれ、映画館としては異色の立地だ。ここで上映することになったのは偶然ではない。主宰の荒戸源次郎氏にお会いして、映画ができるまでのことや映画についての話をきいていただき、後日に試写も見ていただいて実現にこぎつけた。若者たちの数は少ないけれど、そのかわり盛場とはちがって競合するものがないし、お年寄りにはむしろ身近な場所でさえあるかもしれない。その気になれば、若者は多少はなれたところだって来てくれるだろうと見込んだ。
博物館は時間と場所の断片を集積させた箱のようなものだが、だとすれば映画館は、世界を光と音に姿を変えて閉じ込めた博物館かもしれない。それならは、じつは、この場所は映画館にとって意外でもなんでもない、ふさわしいところではないか。

 そしてもうひとつ、ここを選んだ大きな理由がある。上野の山からその足元にかけては谷中・根津・千駄木のまちが広がる。「もんしぇん」は、十数年前の高校生時代に夕海が訪れた天草の、島の入江という地形と場所の力にうながされて動き始めた。3年前には島に住み町立の化石の博物館で臨時職員として半年はたらかせていただいたけれど、さすがに、今ここではそんな時間は残されていない。
しかし、御所浦という場所とそこの人びとの力が作用しあったように、時の積みかさねと場所の力のあるまちでなら、たがいに影響を及ぼしあいながら上映することができるかもしれないと、上映場所を選ぶにあたって夕海は考えた。「もんしぇん」は、閉じられ完結した「作品」ではなく、さまざまな接点を持った不定形の「できごと」でありたい。「ロングテール」としての映画上映は、恐竜の頭の映画とはべつの方法でべつのことを伝え別の力を持つことができるはずだ。Blogの縁も、ここには少なくないよと言うと夕海はおどろいた。

 そもそも一角座は単なる映画館ではない。荒戸源次郎氏が、みずから製作した映画のために国立博物館という聖地の只中に作ってしまったものだ。「ツィゴイネルワイゼン」「どついたるねん」「赤目四十八滝」などを製作あるいは監督し、ここで上映中の「ゲルマニウムの夜」は6か月間の長期上映中である。音響と映像に渾身の力をそそいだという。器もしっかりした映画館だが永続的な建物を意図してはいない。

もんしぇんは、海からとどけられた素敵な箱になってくれるだろう。

投稿者 玉井一匡 : May 24, 2006 08:11 PM | トラックバック
コメント

tommy よろしくお願いします。そうだ、一角座のチケットで博物館の常設展示も見られるんだよ。そのことも友達におしえてあげてください。そして、映画を見に来た人たちが博物館を楽しんで、そのあとで谷中・根津・千駄木と、まちを楽しんでほしい。さらに、このブログのテーマなのだけれど、まちを自分の場所だと思ってくれるようになったら本望というものです。

ことしのぼくの年賀状には、戌年だからcooのシルエットをつかいました。なんてかきながら、背景は写真だがcooのシルエットはぼくが描いたんだったと思い出した。でも、とにかくcooを思いながら描いたのだ。ブログにもそれをエントリーしました。下記クリックしてください。絵をクリックすると大きくなります。そうすると、cooのシルエットの下に「MonChien」と書いてあります。これは、「もんしぇん」とフランス語の「わたしの犬」とをかけたのです。コメントにもうすこしくわしく説明してあります。
http://myplace.mond.jp/myplace/archives/000230.html

Posted by: 玉井一匡 : June 3, 2006 08:24 AM

はい、私も力になれるかわかりませんが、なるべくたくさんの友人にこの映画のことを広めようと思います!上野の博物館の中に映画館があるなんて今回初めて知りました。そこへいくのも楽しみです。
cooちゃん、なんですね?以前、空ちゃんと聞きました。工芸科の同級生二人にも子犬をもらって頂いたのですが、たまに会わせると面白いんです。共通して皆、エネルギーがすごいです。溢れています。そういう血筋かもしれません。cooちゃんは、きっと人間のような人格のある子になってるんだろうな・・・と、勝手に想像しています。

Posted by: tommy : June 2, 2006 11:26 PM

やあ、ほんとに久しぶりだね。偶然だなあ。放送は九州向けだけれど、ロバートハリスの番組は東京で作っていて、録音は東京でした。十年以上も思い続けて、やっと、公開になりそうなのです。場所が上野の博物館の中だから、地元の根津や谷中のひとたちにもいっしょに面白がっていただけるように、いまは、あちらこちらいろんな人たちとお会いしたり、忙しくしています。撮影も、そんな風にして天草や御所浦の人たちに支えていただいてできたのでね。よかったら、何か力を貸してやるというか、いっしょに面白がってください。
ところで、cooはすっかりわがやの家族の一員として欠かせない奴になっています。一度、トミーに会わせたいと、前からときどき話に出るのだよ。

Posted by: 玉井一匡 : June 2, 2006 10:40 AM

お久しぶりです。憶えていらっしゃるでしょうか??とみぃです。  中学時代からの親友が去年結婚して、福岡に住んでいるんですが、ふ とラジオをつけたところ夕海が登場したんだそうです。九州限定だったみたいですね?彼女は急いでテープに録音してくれていて、つい先日、私も最近の夕海の様子を知ることができました!しばらくずっと疎遠だったので。大学時代やその後も少し映画のイメージを聞かせてもらい、楽しみにしていましたがとうとう現実になったのだ、と感動しました! 映画の公開はいつなんだろう?と、タイトルを検索したらここにたどり着きました。突然にお邪魔します。
 映画、是非観に行きます!たぶん妹と行きます。
 あと、ずっと昔頂いた着物のお礼がいいたかったのです。あの生地達からたくさんの創作するヒントをもらいました。言葉では言い尽くせないんですが、発見や驚きや、あたらしく勉強することがたくさんあって本当に感謝してます。またお話できる機会があれば嬉しいです。 では、失礼します。
                                                                                    

Posted by: tommy : June 2, 2006 12:33 AM

はい、さっそくお伺いいたします。

Posted by: fuRu : June 1, 2006 03:47 PM

ようこそ、ぜひ加わってください。じゃあちょっと、あの暗がりに来てくださいな、お客さん。

Posted by: 玉井一匡 : June 1, 2006 03:13 PM

masaさんのところで盛り上がっている
「もんしぇん」応援団に入団を希望します。

Posted by: fuRu : June 1, 2006 02:59 PM

nozさん ありがとうございます。ぼくの腰はもう大丈夫みたい。nozさんの腰もホロホロ効果で快方に向かっていることでしょう。
じつは、ウミホタルのはなしも、この映画に出てきます。その熊本のひとにとって、ウミホタルとその海がとても大切なものをつくりあげてくれるのでしょう。どんな場所であれ、自分のそだった場所を、心のどこか深いところから愛することができるのは、とても大事なことだと思うのです。自分の存在がかけがえのないものだと信じることのできる無意識を、それが育ててくれるのではないでしょうか。そういう機会をゆたかにひそめた場所を、ぼくはつくりたいと思いますが、吉村流にいえば、それが「精霊の棲むいえ」ということなのでしょう。

Posted by: 玉井一匡 : May 29, 2006 11:11 PM

玉井さんこんにちは。
腰痛の快方ともんしぇんの上映決定、おめでとうございます。

天草と聞いて、大学の時、熊本出身のクラスメートから聞いた、海ほたるの話を思い出しました。ずっと見たいと思っていたのに、忘れてしまっていました。
天草の、映画と海を見る旅行ができたら夢のようだけど、一角座で見ることに意味があると思って、ここはやはり上野での上映を待つことにします。
スチール、とてもすてきですね。今からとても楽しみです。


Posted by: noz : May 29, 2006 10:12 PM

お騒がせしますが、AKiさんの母校の近くでもありますので、おもしろがってやってください。当人は、母校の近くなんていうと自主制作映画だとおもわれちゃうかもしれない、なんて言っています。と、いいつつ自主映画のように、あちらこちら自分で動き回り、ポスターもチラシもまだできていないというぐあいですが。

Posted by: 玉井一匡 : May 26, 2006 11:00 AM

たのしみですね。待ち遠しい。

Posted by: AKi : May 26, 2006 03:33 AM
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