August 31, 2006

まろいまろいたま

 夏の終わりを心地よくすぎてゆく風が、けさは、もどることのない時間の流れのように感じられた。そのせいなのか、ついこのあいだのことを、歌と一緒に思い出した。新潟の母の家の近くに大きな、けれども今では誰も住んでいない古い屋敷がある。そのまわりをmasaさんと歩いた時に、からたちの生垣に緑色の実がなっているのを見つけた。3cmほどの直径の球形の実で、きめの細かい表面にはこまかい産毛が密生している。

「からたちの歌」の何番目の歌詞だったのか憶えていないが「からたちの花が咲いたよ」「からたちの棘はいたいよ」の次くらいだったろう、「からたちのたまはまろいよ」で始まって、「まろいまろいたま」と続いた。からたちは、棘のおかげでどろぼうよけとして生垣に使われたんだろうが、白い花が咲くこともアゲハチョウの蛹が棘に糸を掛けて変身の場にすることも知っていたのに、からたちの実を目にした覚えはなかった。「まろいまろいたま」というのはきれいな球をなしているということなのだと知って、なんだかうれしくてひとつを手に取ってひねると、うぶげのせいで手のひらとたまの間にちょっと距離があるように感じられる。それをポケットに入れて、ときどき感触を楽しんだり、「これ、何だと思う?」なんて人にきいたりしているうちに、どこかになくしてしまった。先日、それを思い出してもう一度とりにいった。そのたまの中身がどんなふうになっているのか知りたくて、まな板の上にのせ包丁を両手で持って転がらないように慎重に刃を押した。いかにもかたそうな様子だったのに思いのほか抵抗なく、すっと包丁を通した。切り口を見ておどろいた。花や葉のようすを見れば容易に想像のつくことなのにまぎれもない柑橘類だ。手に取ると、ほとんど弾力を感じないくらい固く感じられたのは、こんなに皮が厚かったからなのだ。
ところが、こんな切り口を見たのに、ぼくとしたことが味見をしなかったことに、あとになって気づいた。今度はかじってみようと思っている。

投稿者 玉井一匡 : August 31, 2006 10:39 PM
コメント

皆さん、こんにちは。「少女の乳首の尖きに富士とがり」だとか、「尖りはじめる少女の乳首の富士」だとか、市川市民は歌うことがあるんでしょうかね。全体にみて、なんだか歌詞の内容が抽象的で難しいですね~(^^;;。三善晃さんの作曲ですし、一度聞いてみたいですね。

Posted by: わきた・けんいち : September 4, 2006 05:19 PM

詩人というのは、言葉に敏感な人なのかと思っていましたが、これを見るとむしろ言葉に対して大胆というよりは鈍感な人なのではないかと思ってしまいます。そういえば、小説家が知事になって、とても想像力の乏しい人であることがわかりました。わたしたちも、じぶんたちの専門とすることに、かえって鈍感になってしまうことのないように気をつけねばと、自戒しました。

Posted by: 玉井一匡 : September 4, 2006 04:28 PM

まぁ、詩人なんてそんなものかも知れません。
先ほどお亡くなりになった、宗左近氏もたくさんの詩をお作りになりましたが、その内容はびっくり仰天、この世のものとは思えません。

透明の芯の芯(市川讃歌)
http://fweb.midi.co.jp/~monora/kuraya/sinsin.html

Posted by: AKi : September 4, 2006 01:14 PM

iGaさん ヘクソカズラとオオイヌノフグリは、かわいそうな名前だと、ぼくも、かねてから思っていました。しかし、そこまで意図的だったのかなあ白羞オヤジは。女の子たちもククッとしながら歌っていたんで唱歌。

Posted by: 玉井一匡 : September 4, 2006 10:53 AM

furuさんの「ヘクソカズラ」のコメントに「イヌフグリ」のことを書いた後なので、「きんの・たまだ・よ〜」について書き込みするのを遠慮してしまいました。「イヌフグリの実」も「からたちの実」も産毛のようなものがあると云うことから、白秋先生の脳裏に浮かんだイメージも悪ガキのそれと大差ないような気もします。とうぜん、童謡だから女の子も歌う訳で、そのフレーズを楽しんで聴いていたかも知れませんね。

Posted by: iGa : September 4, 2006 09:40 AM

「植物園へようこそ」で検索したら、ちゃんと実のなった写真がはじめにでていました。カラタチはカラタチバナが縮まったのだとあります。柑橘のキツはタチバナだよなあなんて納得しました。そういえば実の大きさは、スダチと同じくらいだなと思っていたので、スダチの「ダチ」もカラタチのタチと同じなんだろうと思って調べると、案の定、酢橘という漢字がありました。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/BotanicalGarden-F.html

Posted by: 玉井一匡 : September 4, 2006 08:28 AM

わきたさん なるほど、ウィキペディアを開いてみたら、「万歳ヒットラー・ユーゲント」なんていうのを作曲したなんて書いてありますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/北原白秋
社会に対する、あるいは政治に対する思想は、そんなものがあったのですか。しりませんでした。しかし、とにかく、そういう側面があったということもひとつの事実として受け取って、味わい直すということにしましょう。単に時代におもねるというのではなかったことをのぞんではいますが。
まったく脈絡のないことですが、いつだったか、仕事で熊本に行った帰りに柳川に行ったことがありましたが、そこに、白秋の実家がありました。

Posted by: 玉井一匡 : September 4, 2006 08:11 AM

玉井さん、酒に弱いというのは、肉体的な障害ではないと思いますよ~。酒に強いほうが、肝臓の機能障害をおこしやすです(^^;。それでは、熟成して美味しくなったときに、ちょっと渋みのきいた「からたち酒」ご馳走になりますので、よろしくお願いいたします。少し、多目につくってくださいね~。ところで、「金のたま」のほうに注目しましたが、「まろいまろい」ってのはなかなかよろしいですね~。穏やかなで柔らかな雰囲気がいいなあと思います。しかし、このような童謡を作詞する一方で、北原白秋の人生は、かなり激しいものがありますね。晩年は、国家主義への傾倒が激しくなった(「Wikipedia」)なんてことも、初めて知りました。

Posted by: わきた・けんいち : September 3, 2006 12:53 PM

わきたさん ぼくもそう思います。でも、ぼくは酒そのものが嫌いなわけではなく、ひどく弱いという肉体的な障害があるというだけなのです。だから、ほんの少しつくって一口味わうだけでいいのだから、こういう場合の実験用の動物もしくは被験者としては、むしろふさわしいのです。果実酒なんてものは、おそらく正統派の酒飲みにとっては真面目に相手にするものではないのだろうと思いますが、あるいは、なんでもいいからアルコールを飲みたいという根っからの酒飲みのための薬という口実にもなるんでしょうね。
白い花、甘い香り、棘も葉も幹もおなじ濃い緑、そしてほぼ完全な球形の果実、さらに境界をつくる生け垣という、ぼくたちには興味深いありよう。そう思ってこの歌詞を読むと、なおさら興味深いですね。自分の名を白秋としているほどだから、実の色が黄色に変わることにも、とりわけ深い思いがあったのでしょう。黄色を金と見立てるのは世界中で共通することかもしれませんが、「きん」のかわりにこがねとかひかりとかいうことばを使うという手もあったろうにとも思いますけどね。

Posted by: 玉井一匡 : September 3, 2006 09:08 AM

玉井さんが、からたち酒をおつくりになるのですか?玉井さんは、たしかお酒をお飲みにならないと思っていましたが。かわりに、私が味見をいたしましょうか。ところで、「金のたま」は笑いますよね。北原白秋は、どんな気持で歌詞を書いたんでしょうね(^-^;;)ゞ。

Posted by: わきた・けんいち : September 3, 2006 01:36 AM

わきたさん からたち酒ですか。来週末に、また新潟にいく用事があるんで、まだ残っていることを期待しています。この色は、まだ熟していないのでしょうね。楽しみです。
と思いながら、なんで探さなかったんだと、「からたち酒」でGoogleしたら、ありました。なかなか丁寧に書いてあります。写真を見ると、からたちの実は熟すと、やはり黄色くなるんですね。これは、いけるかもしれない。
そういえば、からたちの歌に「まろいまろい金のたまだよ」という歌詞があったような気がしていたのですが、ぼくの誤解だと恥ずかしいので書かなかったけれど、さがしてみたら、やはりそういう歌詞があるんですね。
「金のたまだよ」なんていう歌詞に、悪ガキ(ぼくを含む)どもは「ククッ」と笑ってしまったことも思い出しました。
http://bbs.com.nifty.com/mes/cf_wrentT_m/FCOOK_B031/wr_type=M/wr_page=1/wr_sq=FCOOK_B031_0000000111

Posted by: 玉井一匡 : September 2, 2006 11:27 PM

玉井さん、こんばんは。からたちの実を初めて拝見させていただきました。こんな実がなるのですか。でも、どうも良い匂いはしても、「食用に適さない」という話しが多いですね~。まずいんでしょうか?ただし、「からたち酒」ってのはありますね。渋みがあるのだとか・・・。どんな味なんでしょうね。試食の結果を楽しみにしています。

Posted by: わきた・けんいち : September 2, 2006 11:08 PM

「お腹はこわさない」に訂正しました。
しかし、身体にせよものにせよ、こわさない方がいいにきまっていますね。重々、気をつけますが、このごろ、よく思うことがあります。人間の基本的な性格というのは変わるものではないということです。これは、変えることができるものなのかどうかと思いますが、変えることができるなら基本的な性格ではないということになるのかもしれません。

Posted by: 玉井一匡 : September 2, 2006 10:29 PM

そう言えば、以前、ラオスにいらした時に、穴に転落なさり(^^;スネに怪我をなさりながらも、カメラは見事に無傷…なんて事件がありましたね。そんなことを思うと、玉井さんが破壊名人(^^;ということでもないんですね~。要するに「玉井さんorお持ち物のいずれかが壊れる確立が、フツーの人よりも高い(^^;」ってことでしょうか?

ところで、前のコメントですが、「お腹はこわされない」->「お腹をこわさない」と直したつもりが、直っていませんでした。変な日本語になっています。

Posted by: masa : September 2, 2006 05:20 AM

masaさま そうか、ぼくの身代わりに壊れてくれたんだ。これからは、気をつけます。大事にしようという気持ちはあるんだけどなあ。その証拠に、自転車に乗っていて転倒して、はっと気がつくと自分は道路に仰向けになりながら自転車のハンドルを片手で持って、自転車は倒れないように持ち上げていたりするのですよ。馬鹿だね、といわれます。 とはいえ、masaさんにそういう指摘を受けると、わたしは一言もありません。

Posted by: 玉井一匡 : September 1, 2006 10:45 PM

玉井さん、「お腹はこわさない」とおっしゃってますが、その分、カメラやMacをこわしていらっしゃいますよね(^^; (ちょっと話が逸れました(^^;)

Posted by: masa : September 1, 2006 10:01 PM

yukiりんさん いっしょに毒味しましょうか。それまで、試食を我慢して。でもね、そういうことを進んでやるひとっていうのは、なにを食べてもお腹を壊したりすることがないんだよね。ぼくもそうなんだけれど。

Posted by: 玉井一匡 : September 1, 2006 06:44 PM

masaさん yukiりんさんもこうおっしゃっています。こんど行く時にまだなっていたら、両手いっぱいとれるだけとって来ます。ぼくも、けっこういけると思うのだ。とてもうまいのに、流通ルートに乗らないというだけであまり知られていないというものが、世の中にはありますから、からたちってそれかもしれないぞ。

Posted by: 玉井一匡 : September 1, 2006 06:40 PM

こんにちは。ご無沙汰いたしております。
その毒見役、ワタクシが買って出ましょう(^^;
これはどう見てもおいしいですよ。スダチやシークワーサーと似た感じですし、老化防止のビタミンCも沢山入っていると思われます。邪道ですが赤ワインにちょこっと絞ってもおいしそうでございます。(^^;

Posted by: yukiりん : September 1, 2006 05:02 PM

あ、味見は、そりゃやはり先輩からどうぞ(^^; 僕は、その後で結構です(^^; しかし「ジンに絞る」だなんて、いかにも飲めそうな人の会話になっていますね。

Posted by: masa : September 1, 2006 12:24 PM

きのう、事務所からの帰りがけ、ちょうどこれをエントリーしたあとのこと、いつものように目白の高台の下をうねるみちを走っていました。そのわきに、おばあちゃんがひとりでつくっていらっしゃる小さな畑があるのです。そこをとおりすぎたときにさまざまな木の中にからたちが一本だけまじっているのが視界の右はじに残されているのに気づいてあわててブレーキをかけました。もう午前0時を回っていたので明かりは乏しいし、畑とはいえよそのおたくを長い間見ているわけにもいかないけれど、自転車を停めて近づいて見ました。しかし、実はひとつもついていないようです。
そうだよな、こうだったんだなと、これまでに見たからたちのようすを思い出しました。こんど実をとったら、masaさんの分もとってきます。味見をしてみてください。ライムの代わりにジンに絞ってみますか。

Posted by: 玉井一匡 : September 1, 2006 08:32 AM

玉井さん、こんばんわ。玉井さんが、あの生け垣のそばで、じっとカラタチを観察し、写真を撮っていらっしゃった姿を思い出します。僕は、カラタチを見るのも初めてでしたし、ましてや実がなることなど知りませんでしたから、それが気になりながらも、その向かい側の古い家を撮ることに夢中で、とうとう、まろいたまに触れることもしませんでした。しかし、あれ以来、新潟の田んぼや玉井さんのお宅での場面などとならんで、カラタチの実のことが時々、ふと頭のなかに浮かんでいました。なぜだかわかりませんが…。ですから、この実の写真が表示された途端に、僕の想いは、一気に新潟に飛びました。今年の夏は良い思い出でいっぱいです。しかし、あのトゲは、柑橘類であることを示していたのですね。どんな味がするのでしょうか…。言われると気になりはじめます(^^;

Posted by: masa : September 1, 2006 02:32 AM
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