December 04, 2006

タクワンのかほり

 今日の正午少し前にゆうパックが届けられた。週末に届けられ不在配達通知が残されていたので連絡したところ午後に持って来ることになっていたのに、予告よりも早く届けられた。不在配達の紙に書き加えられていたから何が誰から送られたのかはすでにわかっている。古山憲一郎氏から「たくわん」が送られてきたのだろう。ことは11月25日のエントリー「第4回アースダイビング:王子の玉子焼き・むこうじまのもんじゃ」のコメント欄に3年もののタクワンを入手したが「現代人の離婚の理由になりそうな匂いがします。」と古山氏がお書きになったのに端を発するが、何の脈絡もない乱入だった。やがて古山氏の友人iGaさんさんが事情を説明するコメントで続き、AKiさんもことがタクワンとあって及び腰でコメントに参加した。古山さんはお詫びの品を送ったから悶絶してくれとの再コメント。
包装はジップロック+ポリエチレン袋+封筒+ゆうパックの四重装にもかかわらず鼻をよせればしっかりにおう臭パックだ。おそるおそる包みをはがして手に取ってみると、たしかに強烈な匂いではあるが旨そうだと思わせる。外から2番目の包装である封筒には「本式の井戸端等、風通しの良い場所で開封して下さい」との警告文が書かれている。
「保管期間12月9日まで」と書かれたシール、「1日目」「2日目」という紙がセロテープで止めてある。予告の時刻より早く届けられたのは、郵便局ができるだけ早く縁を切りたかったからなのだろう。

 古山さんの警告に逆らってぼくは、うちの事務所のあるフロアの湯沸室をタクワンのかほりで満たして匂いを充分に吟味してみたかった。とはいえ、さすがに昼間は遠慮して、7時頃にタクワンを1本取り出した。全部で3本おくっていただいた。色は味噌漬けのような焦げ茶色、長さは27~8cm太さ2〜3cmほど、大根が牛蒡のような姿になっている。元の大きさは分からないが、3年間で水分はすっかりなくなって繊維だけになっているはずだ。クサいと思ったのは包みを開いた一瞬で、冷たい水で糠を洗い流してしまえば、もう旨そうなにおいとしか感じられない。くさやが、はじめはあんなにくさいのに、火を通すうちにうまそうな匂いに思われてくるのと同じようなものだ。先日の第4回アースダイビングで、kadoorie-aveこと小野寺さんに、中国の臭豆腐にまつわる話をうかがった。クサい、しかし旨いものについての楽しいはなしだが、ぼくはまだたべたことがない。
 自然がいかに合理的に作られているかを知るたびに、生物は身体にとって必要なものをうまいと感じるようにつくられているはずだから、食べたいと思うものを食べるのが身体にいいはずだと、ぼくは思っている。若い頃と今では、食べ物の好みがすっかり変わったのも、身体が必要にするものが変わったからだ。しかし、このタクワンのような存在は、その理論の基本から逸脱する。苦い、渋い、エグイ、辛い、酸っぱい、かたい、そしてクサいという、一般的には腐敗や毒を意味する排除されるべき味や匂いだ。しかし、「・・・であるほどいい」あるいは「・・・であるほど悪い」という単一の物差しでものごとを評価しないこと、さまざまな物差しをあててキラリと鈍い光を放つものを探り出すこと、クサみの中に別の旨さを感じ取るようになることが文化というものだ。若いご婦人の脚に喩えられるみずみずしいしろいやつが、細く黒く筋だらけに成り果てたのに、それはまた別の旨さを持ち始める。
 洗い終えると事務所に持ち帰り、できるだけ薄く切った。においの素を減らしたいからではなくて、目下、歯の治療中なので歯に負担を少なくしたいからだ。・・・・・・・旨い。お粥やお茶漬けでたべたらさぞかしうまかろう。古山さん、ありがとうございました。以後、あなたは古漬けのタクアンと分ちがたく結ばれたまま、ぼくの記憶にしっかりと保存されることでしょう。そうそう、臭豆腐(しゅうどうふ)も試してみなければ。

投稿者 玉井一匡 : December 4, 2006 11:45 PM
コメント

kadoorie-aveさん このタクワンは、見た目から想像されるよりも美味しい匂いがすると思われます。この分野では、中国人にはかなわないでしょう。「一臭万年・香飄万家」というコピーからしてすごいではありませんか。そういえば、沢庵だってもとは禅宗の坊さんの名前なんだから中国仕込みのものかもしれませんね。
ところで、ドリアンの匂いを説明するのに、タイに長くいたぼくの叔父の表現は「ウンチとバナナを混ぜたような匂い」でした。ぼくはそんなものを混ぜた状態を想像したくないので、匂いを想像しようとも思いませんでした。そのあとで、実際に食べたときには、それほどクサくないが、それほど旨いとも思いませんでした。
農大を舞台にしたという「クサ漫画」も読んでみます。一臭千年もたのしみだな。

Posted by: 玉井一匡 : December 11, 2006 02:15 AM

むむむ。タクアンですか!美味しそうで恐ろしげな様子ですね。興味津々。
臭豆腐‥‥私の持っている臭豆腐は、古山恵一郎さん(はじめまして!)と同じ「王致和」のものです。台湾や広州で食べた揚げた臭豆腐は、どうということもないくささでおいしく食べられるのですが、北京製のこちらはちょっと戸惑います。なんと言ってもラベルに書かれている言葉が「一臭万年・香飄万家」ですから。液体の色も食品とは思えない色なのです。(ここでは、具体的にいえません...)
このタクアンさんもそのようなかほりなのでしょうか。

ところで、この梱包の様子に、香港から友人が送ってくれたモノを思い出しました。ある日出がけに、郵便受けから書類封筒がだらんと出ていたので、とりあえず鞄に入れて仕事に出かけたところ、打ち合わせ中に臭いはじめて弱りました。開けて見たら、しっとりと重い25センチほどの鹹魚でした。

参考までに‥‥美大の「ハチミツとクローバー」、音大の「のだめカンタービレ」に対抗する?農大マンガ「もやしもん」がなかなかです。世田谷の某農大をモデルにしているマンガですが、醸造科が舞台で発酵と菌にまつわる話題がおもしろい。石川雅之・作/イブニングKC講談社     つい長くなりました。すみません。

Posted by: kadoorie-ave : December 10, 2006 09:57 PM

iGaさん そもそも古山さんはiGaさんにおくろうと思っていらしたのだから、納まるべき胃袋に落ち着くわけで、慶賀の至りであります。ご寵愛ください。

Posted by: 玉井一匡 : December 9, 2006 02:15 PM

昨日、頂いた「3年もののタクワン」、今朝になって思いだして確認すると、しっかりとバッグの中で己の存在を主張していました。「タクワンの存在証明」はそのまま残り香となってバッグに居座り続けています。可哀想ですが「タクワンの存在証明」は備長炭配合消臭剤に吸着させることにしました。

Posted by: iGa : December 9, 2006 12:40 PM

玉井様
御召しいただけいて光栄です。

鮒寿司:好きです。
くさや:好きです。飲み屋で誰か傍若無人なやつが頼むと、尻馬に乗っかって注文が殺到するのが面白いですね。

臭豆腐
浜松では秋翁お気に入りの臓器売買店の近く、ガード下のフィリピン食材店に「王致和」ブランドのものが時々見られます。我が家の「離婚アイテム」の原点はこれで、、「ドブの匂いの口で話しかけたら離婚します。」と言い渡されています。

臭チーズの逸品を作る友人が札幌におります。そのためにヤギを飼っています。
先年ピレネ山中の田舎町を通りかかったら、「村のチーズコンテスト」なるものをやっており、面白がってチャチを入れたら。審査員に任命され、翌年から毎年コンテストの招請状が来て困っていました。日高の牛乳屋の息子で、子供の頃、余った牛乳に酢を入れたものを、「牛乳豆腐」と称して毎日飲まされていたそうです。

Posted by: 古山恵一郎 : December 5, 2006 10:20 PM

わきたさん これはたしかに根性のすわったタクワンですね。「食べたきゃあお食べ」といって俎に載っています。しかし、鮒寿司は動物性の発酵食品だから、これ以上にクセが強いと思うなあ。琵琶湖畔では家庭でも作ったりするんでしょうか。そういうときは浅漬け状態で食べることもできるのでしょうね。
わきたさんにはクサヤをおみやげにするといいわけですね。普通はクサヤはムロアジを固いくらい充分に干しますが、伊豆大島に行った時にタカベなどいろいろなクサヤの、あまり干していないものをいただいたことがありました。私は喜んだのですが友人は辞退したので5、6匹食べ、旨かったけれどクサヤだけでそうとう腹一杯になりました。酒の肴にしないやつはご飯のおかずにするわけですからね。
 うーむ、隊長はたしかブルーチーズはいけたと思いますよ。

Posted by: 玉井一匡 : December 5, 2006 09:30 PM

玉井さん、小さい声でいいますが・・・。好き嫌いの多い隊長さん、ワインはお好きなようですが、赤ワインにあうブルーチーズなどは召し上がるのでしょうか?これは、あれの臭いに近いですけど。

Posted by: わきた・けんいち : December 5, 2006 07:15 PM

玉井さん、こんばんは。ほう、これが噂のタクワンですが、なんだか根性のはいったタクワンですね~!!僕は発酵食好きですよ。鮒寿司や臭豆腐、両方とも好きです。でもね、クサヤは食べたことがありません。西日本では、食べるチャンスがあまりないのかもしれませんね。タクワン、鮒寿司、臭豆腐、それぞれ何の臭いに近い「匂い」なのか、説明することができますが、少しやはり書きにくいですね(^^;)。ちなみに、クサヤは、例のモノの臭いに近いと聞いています。

Posted by: わきた・けんいち : December 5, 2006 06:40 PM

iGaさん 本当に送ってくださったのだと私も思いました。古山さんは3本お買いになったとのことでしたから、私に3本お送りくださったところをみると新たにお買い求めくださったのではないでしょうか。有り難いことです。
しかし、この色では長屋の花見で玉子焼きに見立てようというにはちと無理がありそうだから、長屋の御免状ダイブでは色の濃い唐墨という見立てにしますか。

Posted by: 玉井一匡 : December 5, 2006 12:43 PM

AKiさん おそろしい話で恐縮ですが、AKiさんの場合は、他の発酵食品つまり液状化したやつを存分にあるいは過剰に摂取されるので、もう充分だからいらないよということなんでしょうね。わたしはその液状化したやつが苦手ですから、おたがいバランスがとれているんでしょう。話の種に、次回の御免状ダイブのときには一本を持参する所存。

Posted by: 玉井一匡 : December 5, 2006 12:34 PM

わっ、本当に送ったんだ。
こまわり君の口癖に「慣れれば美味しいクサヤの干物」なんてのがありましたが、、、

Posted by: iGa : December 5, 2006 10:59 AM

恐ろしいことです..........。

Posted by: AKi : December 5, 2006 08:43 AM
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