May 09, 2007

タリアセン・ウェスト:TALIESIN WEST


MADCONNECTIONのエントリーにそそのかされて、Google Earthを開きハーレン ジードルンク(46°58'23.93"N 7°24'46.78"E)を見ると、川のほとりの小高い森の傾斜地にそって階段状に集合住宅をならべてアトリエ5のつくりだした生活環境は、今もとても気持ちよいものであることがよくわかる。周囲は緑濃い森のまま残されている。
 森を迂回する道路の切り通しも集合住宅の敷地の傾斜も、地形を分かりやすく見せるから、まだ実物を見ていないぼくはそれだけで十分に心がときめく。集合住宅は森を切り開いてつくられたが、斜面をたどる階段状の屋根の上は、芝生で覆われている。切り取られた森と芝生の屋根とゆるやかにうねる川はコルビュジェの思想の見事な実現だ。Google Earthで建築の衛星写真が地表にはりつけられてつくり出す二次元半を僕が大好きなのは、文字通り建築が地形に溶け込んでしまうからだ。ここの場合は建築の意図がそこにあったからなおさらなのだ。それを見ているうちに、F.L.ライトのタリアセン・ウェストはまだ見ていないぞと思い出して、Google Earthに乗って行ってみたくなった。タリアセン・ウェストは、こことはまたかたちのちがう関わり方を大地との間につくりあげているはずだ。

「TALIESIN WEST」と書きこむだけで飛んでいく画面( 33°36'17.89"N111°50'46.64"W)は、対角線に沿って斜めに走る道路によって二分されている。その北東側には山並み、 南には大規模な住宅地開発でつくられたらしきまち。斜めに走る道路と見えるのは近づいて見れば川だが、それがどこも同じ幅で定規をつかったような弧を描き、いかにも人工であることがわかる。地表に近づくと、おだやかな傾斜の丘のつらなりを背景に、遊牧民のテントのように散在する建築群。タリアセンウェストだ。・・・・と、これで十分に感動してしまうのも、ハーレンジードルンクと同じように、じつはここにもぼくはまだ行ったことがないからなのかもしれない。それだけに、地表を斜めに傾けて見ると、見る見るうちに背後に丘がふくらんで想像をかたちに変え、そのかたちがあらたな想像を目覚めさせる。川の南側に近づけばタリアセンとは対照的に、それぞれがプールを抱え込んだ家が地表を埋めている。かつて見た写真の、人里離れた砂漠という環境からは、ずいぶん変わってしまったようだ。
 ライト一行がここに来る数年前、彼らはリゾートホテルの計画のためにアリゾナに滞在していたことがある。その間、彼らは砂漠の真ん中に木造の箱の上にテントをのせたような住居群をつくり生活と仕事の拠点とした。それがのちにタリアセンウェストの原型となった。その後、改めて冬のための仕事場としてここにタリアセンを作りはじめた時、ライトはすでに70歳をこえている。といっても、それから20年を越える間、建築家としての活動をつづけたのだから、まだまだぼくたちは若いわけだ。

 アメリカ合衆国が他人の土地を奪ってつくられた国であることに、ライトはひそかな疑問あるいは居心地のわるさを感じつづけていたのだとぼくは思いたい。彼はタリアセンの周囲から掘り出した大きな石を積んでコンクリートを流し込み壁をつくり、それをふたたび大地の一部のようにした。屋根はテントの進化形でありつづけた。木部には、周囲の赤い土と同じ色を塗った。持ち上げた屋根を支える細い支柱はインディアンの槍や羽根飾りのようだ。彼はここを、定住したインディアンの建築にしようとしたのではないか。
F.L.WrightFoundation.jpg かつてライトは、フィリップ・ジョンソンMOMAで企画したインタナショナル・スタイル展への出展を拒んだ。世界中どこにも同じ価値をひろげることをこころざすインタナショナルではなくアメリカを、アメリカ合衆国ではないアメリカをこころざしたからだ。南米のインディオの造形をコンクリートブロックに彫り込んだのもそのためだ。「モーターサイクルダイアリーズ」の若きチェ・ゲバラが、旅をするうちにアルゼンチンという国家から、普遍的な「アメリカ」にアイデンティティを移していったように、ライトはアメリカ合衆国という国家から逸脱した「アメリカ」に自分を結びたかったのではないか。だとすれば、国家をこえる普遍的な世界をめざした「インタナショナル」と、じつはライトは通底していることになる。ただし、彼は「場所の力」をよりどころにし、それを大切にした。そして、チェ・ゲバラの「アメリカ」にはアメリカ合衆国は含まれない。ライトに美術館をつくらせたグゲンハイムは、チリの鉱山で奴隷のようにインディオたちを働かせて財を成したのだと、「モーターサイクルダイアリーズ」で主演したガエル・ガルシア・ベルナルがインタビューで語っていたのが忘れられない。

 

投稿者 玉井一匡 : May 9, 2007 08:48 AM
コメント

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Posted by: dbgmt : April 28, 2010 12:02 PM

AKiさん  そういうことば、ぼくは知りませんでした。でも、そのとおりですね。てっぺんに立って周りを見下ろしたがるなんていうのは、あまり上等な心理ではないし、伝統的な建て方からみても、尾根や丘のてっぺんに建てるのは城くらいのものですね。
 建物の高さを自慢しようなんてのは、ずいぶん程度の低い価値観だとおもいますが、東京都庁舎は、サンシャインをわずかに超えて当時の日本一の高さに固執していたのを思い出しました。

Posted by: 玉井一匡 : May 13, 2007 08:35 AM

iGaさん じつは、ぼくはgoogle Earthの建築の3D表示にあまり積極的でなかったので、タリアセンウェストの3Dモデルの表示についてはレイアのチェックボックスをチェックするかどうかという程度しかしていませんでした。タリアセンを開こうとすると、赤い正方形に白く「A」の文字を抜いたアイコンが出てきて、Aの貼付けられた建物が勝手に出るときと出ないときがあって、じつはちょっと邪魔だなと思っていました。
iGaさんのコメントをみて、じつは初めてテクスチャーを貼付けたやつを見ました。ぼくのやりかたがまだ不十分なのでしょう、周辺の敷地の精度が向上するところまでいかないので、iGaさんのソラリス状態が実感できないのです。
 さまざまなレベルの情報が共存する状態は、きっといつまでも変わらないんでしょうね。だから、ぼくはそれを混乱というよりはおもしろがっちゃうことにしてます。

Posted by: 玉井一匡 : May 13, 2007 08:26 AM

「建物を丘の上には建てない、建てると丘がなくなってしまうから」と言ったのはライトだと思ったけど........はて。

Posted by: AKi : May 12, 2007 11:48 AM

Google Earthで見たタリアセンウェストの3Dモデルですが、敷地は中程度の解像度写真で周りが低解像度写真によるイメージが、まるでタルコフスキーのソラリスの海に浮かぶ家のイメージと重なって、何か漂泊する自我の表象として見えてきました。

Posted by: iGa : May 12, 2007 11:31 AM

iGaさん
周りの町が想像とはまったく違うんで、ぼくも驚きました。フロリダやアリゾナのシムシティは、引退した金持ちたちがプールサイドでゴロゴロしてアザラシの群れのようなものでしょうが、それからすると、ライトの元気ぶりはすごいですね。かくありたいものです。
 ところで、どうやったのか、いまだに分からないんですが、Google Earthでここにやってくると3Dモデルのタリアセンウェストが開くときがあります。しかし、こういう種類の建築は、半端な3Dになるよりも衛星写真の方が、周囲との関わりかたの雰囲気が分かりやすくていいなと、ぼくは思いました。

Posted by: 玉井一匡 : May 10, 2007 05:41 PM

タリアセンウェストを俯瞰で見るとライトが山の麓の場所を選んだのが、何となく納得できますね。それにしてもタリアセンウェストの西側にある人工的な用水路の向うに広がる街はまるで「シムシティ」ですね。未開発の地域まで既にグリッドが用意されているし、ゲーム感覚で自治が行なわれているような、、、気がしてきます。
そういえばGoogle EarthのサイドバーのレイヤにAIAの特集コンテンツが組込まれていたので、それを頼りにタリアセンイースト( 43° 8'29.37"N  90° 4'13.30"W)を見てきました。タリアセンイーストの周辺は詳細な写真はありませんがタリアセンイーストの3Dモデルはありました。

Posted by: iGa : May 10, 2007 12:08 AM
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