January 09, 2008

川の地図辞典 江戸・東京/23区編

KawanoChizujiten.jpg川の地図辞典 江戸・東京/23区編/菅原健二著/之潮(collegio)刊/3,800円+消費税

 現在の東京23区の白地図に川の位置を描きこんだものと、同じ場所の明治初期の地図をとなり合わせのページにならべた地図帳(アニメーションのように素早くページを繰れば残像を利用して比較しやすい)。それに、川ごとの説明が分かりやすく書かれている川の辞典という構成。だから「川の地図辞典」である。現代の地図は、国土地理院の二万五千分の一に、暗渠になったものも含めて川を分かりやすく書き加え、明治の地図は明治10年代の陸軍測量局によるものを使っている。

 ものごとを知るには、まったく逆の二つの方向がある。ひとつは、自分自身が直接に接する具体的な事柄から疑問をいだき、そこから普遍的な原理に至る方法。もうひとつは、まず普遍的な原理を知り、それを物差しにして具体的なものごとを理解してゆく方法だ。
この分け方で言えば、一見したところこの本は二つ目の方法をとっている。ただし、読者はひとつ目の方法をすでに身につけていることを前提にしているから、じつは二つの方法で攻めようというのだ。さらに、Google Earthの併用も考えているのかもしれない。この一冊で、川という要素を主要なツールとして東京23区の地形全体を表現しているのだ。原理を提供し、読者それぞれが具体的な接点を発見し書き加え肉付けしてゆく。
 ぼくは、小世界をポケットにいれるような、こういう本が大好きだ。たとえば日本野鳥図鑑であれば、鳥によって日本の全体を表現する、日本という世界のミニチュアを一冊の本にしてポケットにいれて運ぶことができるわけだ。広辞苑は持ちあるくのにはちょっと重いけれど、ことばという網で掬い上げた日本のミニチュア。つまり、「川の地図事典」は川という網で掬いとった東京都23区のミニチュアなのだ。

この本が、kai-wai散策の1月3日のエントリーで紹介されると、つぎつぎとコメントが増えていき、1月12日,15:46 現在で100を超えた。エントリーの前日、1月2日のkai-wai散策のエントリーへのコメントで、わきたさんがこの本のことを紹介されたことがそもそものはじまりだった。 
発行元・之潮(コレジオ)の代表の芳賀さんは、「川好きotoko」という名でコメントに加わり、つづいて「川好きonna」さんも登場して、ブログと本の世界がつながるべくしてつながった。それをつなげたのは、川とまちを歩くという現実世界での行動であることがとてもすてきなことだ。

追記
下記のブログで「川の地図辞典」についての「同時多発エントリー」をくわだてましたので、まだでしたらお読みください。
■masaさん:kai-wai散策:「川の地図辞典
■わきたけんいちさん :Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」:「『川の地図辞典』(菅原健二/著)
■M.Niijimaさん :Across the Street Sounds:「川の地図辞典
■じんた堂さん:東京クリップ:「フィールドワーク:尾根を行く川
■光代さん:My Favorite Things:「川の地図辞典」
■AKiさん:aki's STOCKTAKING:川の地図辞典
■IGAさん:MADCONNECTION:川の地図辞典-1

投稿者 玉井一匡 : January 9, 2008 10:32 AM
コメント

後半もよんでくださっていらっしゃいましたか。わざわざありがとうございます。
下町の堀割が残されていたら、東京はすてきな町になっていただろうにと前から思っていることではありますが、この辞典の説明をよんでいると、くやしい気持ちがますます膨らみます。それを、東京中、日本中に伝染させたいですね。

Posted by: 玉井一匡 : January 13, 2008 02:55 AM

玉井さん、リンクの件、なんら不都合ございませんですよ~。
実はわたしも「幻の後半部分」を読んでおりました。下って、上って、そしてサンバが登場したところで(わたしも見にいったことありましたから)その日の暑さが伝わってきましたです。

Posted by: M.Niijima : January 13, 2008 01:09 AM

Niijimaさん
しまった。無断でリンクしちゃいました。
しかも、このエントリーは後半が消えちゃったのです。いや、厳密に言えば、消しちゃったですが、申し訳ありません。書いている途中でお腹がすいてきたんで、中断しちゃいました。
さて、この本ですが、なんだか持っているのがすごくうれしいですね。どこでページを分けるか、どの川を入れるか、決めるのが大変だっただろうし、暗渠のルートを調べるもたいへんだったでしょう。やっぱり、中学や高校時代にあたらしい辞書を買ったときみたいな気分なのかな。

Posted by: 玉井一匡 : January 12, 2008 10:59 PM

玉井さん、リンクをありがとうございました。わたしのほうも、このエントリーにリンクさせていただきましたことお知らせいたします。
「小世界をポケットにいれる」と玉井さんが表現されたこと、masaに!ですね。そして、こういう小世界がポケットに入っていることは、とても心地よく、さらには何度もページを開いて、うんうんと頷いてしまう。まったく頼もしい本です。

Posted by: M.Niijima : January 12, 2008 09:43 PM

masaさん、わきたさんお悔やみありがとうございます。
ここにコメントを書き始める前にまずは、と思ってkai-wai散策をのぞいたら、またまたmasaさんやってくれましたね。はじめは写真だけをみて、「こんな地図があったんだ」と思い、ぼくの川の地図辞典を取り出してみたら、「ない、ない、落丁だ!」なんて思いながら文章を読んで安心、つぎに感心。すぐにプリントアウトしてスプレー糊で貼り付けました。
満足に浸りながら、このエントリーの消えてしまった後半の書き直しにとりかかります。どうせ、なにを書いたかすっかり忘れちゃったので、思い出そうなんてことはしませんが。

Posted by: 玉井一匡 : January 12, 2008 04:04 PM

玉井さん、僕は、「幻の後半部分」、きちんと読みましたよ~!!

Posted by: わきた・けんいち : January 12, 2008 08:07 AM

大阪だったら、わきたさんのノルマは増えますね。>玉井さん。 ええと、浪速版、粗末で稚拙なものしかできないような・・・、細かな作業は、得意ではないもので・・・(^^;;;;;。

Posted by: わきた・けんいち : January 12, 2008 08:04 AM

玉井さん、こんばんわ。学者というより探求者…と、僕の目には映る玉井さんらしいエントリーですね。
それにしても、エントリー後半が消える前に、いちどお邪魔し、自分のブログのエントリーをして戻ってみると、あれれ?状態…。こういうのって実にガックリきますね。さすがに悪い冗談を発する気になれません(^^; Googleで過去の文章がキャッシュに残っていないか?とちょっと探してみましたが、探せませんでした。

Posted by: masa : January 12, 2008 04:51 AM

わきたさん
 遅くなってすみません。さて、わきたさんのところにコメントしようかと思っていたら、先手をとられちゃいました。
やらなきゃならないことと、できるだけはやくエントリーしなければというのに板挟みでした。あまり大きい声では言えませんが、秋に修理したカメラがまたしても同じ症状で故障してしまい、携帯電話でとった写真は今ひとつ気に入らず、之潮社のサイトから借用して、まだあまり整理できないのにエントリーしてしまいました。それにつけても、論理の整理されたわきたさんのグレーの固まりを見ると、さすがに学者であると改めて敬服します。ぼくはついつい帰納型が性に合っているようで、あるところまで整理がつかないのです。

 この地図は、やはり川の解説を読みながら地図と照らし合わせるとおもしろさがひとしおです。想像力がどんどんふくらんでいきます。そうやって読んでいると、この川辞典は、川図鑑なのだなという気がします。生物などのふつうの図鑑は、個体について説明するものだけれど、川は個体について語るだけでは不十分で、まちとのかかわりや歴史についても説明しなければならない。動物で言えば行動学のようなものですね。だから、一本ずつの川を絵にするのではなくもっとひろがりのある地図という形式にならざるをえない。川の行動学図鑑かな。カヌーのための川の地図がありますが、あれが個体としての川の図鑑ですね。そこでふたたび考え直すと、やはり川は生物よりもことばに近いのかもしれない。単独でひとつの語をつかうことは少ないのですから。だとすれば、やはり川の地図辞典といういいかたは正解なんだろうと、元に戻ります。
この本がうまく売れたら、八百八橋という浪速の「川の地図辞典」がほしいですね。たのしみです。大阪だったら、わきたさんのノルマは増えますね。

Posted by: 玉井一匡 : January 12, 2008 03:11 AM

玉井さん、こんばはん。待ってました~!!連日、首を長くして、一日に何度もクリックしてチェックしていました。「まったく逆の二つの方向」って面白いですね。「演繹と帰納」というのに近いですね。しかし、頭で理解したとことと、身体で理解したことのあいだに何か発見があったとき、とっても嬉しくなりますよね~。もう、玉井さんの『川の地図辞典』には、どんどん書き込みが増えているのかなと想像しています(^0^)v。こんどぜひ拝見させてください。

Posted by: わきた・けんいち : January 11, 2008 10:21 PM
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