March 12, 2008

春の塔:「ふきのとう」と「とうな」

Fukinotoh1S.jpgClick to OpenPackage

 宅急便の小さな包みがとどいた。送り状のシールの品名欄には「遅すぎた春の香」と書いてあって、ほかに「午前中」と「ナマモノ」というシールが二枚。つつみの軽さとはかなげな手ごたえと「ご依頼主」の氏名から、中に何があるのかは想像がつく。
・・・開いてみると、案の定の香りがこぼれる。ふきのとうだ。
以前に送っていただいたのはいつだったか、エントリーを検索すると「ふきのとう・?・檸檬」というエントリーで、3年前の3月2日だった。
「このくらいに咲いたのが、あと20ケくらい、明日はぐーんとのびて20〜30cmくらいになるでしょう。」と書かれた背の高いのが1本、中くらいのが1本。ぼくたちの食べるふきのとうの茎の5~6倍ある。それを見て、本当はこれが蕗の「塔」なんだと気づいた。

 都会の川の斜面などで、だれにも食われることなく生き延びたふきのとうは、視界に入っていたはずだが初めて見たとしか思えない。無意識のうちに、食えないやつはふきのとうという概念から排除していたのだ。これが「海馬」のはたらきなんだろう。夜には自宅へ連れ帰ったが日付がかわっていたので、天ぷらを揚げて食べようとはさすがに思わない時間になってしまった。とはいえ香りの飛ばないうちに加工しておきたいので、みんなふきのとう味噌をつくった。・・・また飯が進む。

TohnaS.jpgClick to PopuP いま、これを書いている新潟には「とうな」というのがある。冬の終わり春の初めという季節、菜っ葉に塔が立ってはいるが外からはまだ蕾が見えないというくらいのやつを食べるのだ。菜の花は、花のつぼみたちが主役だが、とうなは茎だ。といっても、塔の立った菜っぱの一般ではなくて、そうやって食べるための品種がある。
 おひたし、味噌汁、煮物などにさっと熱を通して食べると、独特の香りとほんのり甘みがあるのうまい。ところがその甘さは、時間とともにみるみるうちに減ってゆく。トウモロコシや枝豆と同じように、とうなはその変化がはやい。だからなんだろうが、かつてはスーパーなどでは買えない季節の味だったが、保存と輸送の技術と品種改良のおかげなのだろう、この頃では地域ブランドをつけた「女池菜」とか「こばり菜」と呼ばれるものがスーパーで買えるようになった。ぼくは「塔菜」なんだと思っていたのだが「冬菜」と書いてあるのもある。しかし、畑からとれたてのやつにはとてもかなわないとおもうのだが。・・・と書いたら、なんと翌朝に、作一さんがとれたてを届けてくださった。

 「ふきのとう」のかすかな苦みや、「とうな」の甘みのようなほのかな味で季節の変わり目を楽しむというのは、いい文化だと思う。

投稿者 玉井一匡 : March 12, 2008 12:03 PM
コメント

aiさん
新潟の家の庭には、うるいやこごみとして食べられるやつを育てているのですが、食べるために育てているからではないということもありますが、なかなか芽を食べるというのがもったいなくて、できないうちに、すぐに大きな葉になってしまいます。

Posted by: 玉井一匡 : March 19, 2008 09:30 AM

iGaさん
「のらぼう」っていうのは、いいよび名ですね。春を待つ思いがこめられている気がするけれど、育てられる植物というよりは菜っ葉の畑のあちらこちらに顔をだしている野放図なやつらが思い浮かびます。
サイトも読みました。みんな、自分のところのやつがいちばん旨いと思っているらしいのが、どこも同じでほほえましいな。これも、保ちがわるいので、遠くには流通しないのだとすると、成長期の植物には絶えず栄養補給がひつようだからなのでしょうか。

Posted by: 玉井一匡 : March 19, 2008 09:03 AM


「蕗の塔」は見慣れている文字とは違うなぁと思っていたのですが、背の高くなった蕗のとうをみせられているうちに不思議にぴったりだと思っていたら、本来はそれで良かったのだとのことで納得いたしました。
>台という字の旧漢字「臺」に草かんむりをつけたやつだ。
これは面白い発見です?!
蕗のとうも冬の間、がくに包まれて雪の下でじっと春を待つわけですから栄養をじっくりとためているはずで、春先の一番に口に入れるのはきっと自然の摂理をいただくようななものなのですね。ほうれん草などは冬と夏の栄養の差が夏の三倍だと言われています。それが糖分なのかは忘れましたが、ビタミンは夏に栽培するものは、自分で消費してしますのだそうです。ちなみのほうれん草も春も本番になると花が咲き始めます。これはあまり好きではないので食べることはありません。

Posted by: ai : March 18, 2008 09:28 PM

露地物の春野菜が出回ると春を感じますね。八王子の北隣、五日市町(現・あきるの市)にアブラナ科の「のらぼう(野良坊菜)」と云う春野菜があります。20年前位は生産地の五日市周辺でしか手に入りませんでしたが、最近は八王子のスーパーでも置いてあることがあります。茹でてから氷水で冷やしマヨネーズで食べるのも美味しいですが、先日はベーコンとしめじと一緒に炒めて食べました。
http://www.shanghaitei.com/norabow/index.htm

Posted by: iGa : March 18, 2008 07:52 PM

「とうがたつ」の「とう」は塔ではなくて、もっと難しい字でしょ・・・となりのeMacのまえに座るtacが言った。
「ほら、こんな字ですよ」というディスプレイを見ると、なるほど「薹」という字だ。台という字の旧漢字「臺」に草かんむりをつけたやつだ。知らなかった。
台に草かんむりをつけると苔(こけ)になるのだが、だとしたら昔はこけという字をどう書いたのだろう。
広辞苑で「ふきのとう」を見ると、(蕗の塔からか)と書いてあるところをみると、とうの由来は塔ではあるようだから、このエントリーのタイトルは書き換えないでおくことにした。

Posted by: 玉井一匡 : March 17, 2008 09:05 PM

aiさん
藍blogで蕗とふきのとう味噌をみつけてコメントを書きかけていたらメール着信を知らせる音がして、開いてみたらaiさんのコメントでした。「茎たち」ということばを初めて知りました。「茎立ち」という意味なのでしょうが、春を待ちかねる兆しらしくていい呼び名ですね。
とうなは、雪の多いときの方が甘みが多くて美味しいと言われています。ネギも雪の下に寝かせておくと甘みがでるといいますから、寒い中にいると動物が脂肪を蓄えるように、植物は糖分を蓄えるのだろうと、ぼくは思っているのですが、本当のところはどうなんでしょうか。

Posted by: 玉井一匡 : March 17, 2008 06:48 PM

しばらく「とうな」について考えていたのですが、きっとこれは盛岡では「茎たち」という名で春先に売られているものだと思いあたりました。私はほとんど買うことが無いのですがこれを食べないと春が来た気がしないという人もいるくらいです。
アブラナ科の植物はどれも黄色の花を咲かせるのですが、もっぱらこの花が咲くとポチポチといただいてきてお浸しにするのが好きです!
蕗とうの長いのは山形で佃煮風にして食べると聞いたことがあります。香りがあってこれはこれで美味しいそうです。私も本格的に蕗のとうを採りに出かけよいと思います。

Posted by: ai : March 17, 2008 06:29 PM
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