April 18, 2008

伊東屋のアイコン:クリップと月球儀

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 鉛筆、消しゴム、パステル、定規、ハサミ・・・たくさんの種類の文具がMacの中に置き換えられるようになって二十有余年。そうしてMacを愛しているにもかかわらず、ぼくたちは自分の手で書いたり切ったりする道具のことを大好きだと、いまも想いつづけている。そういう時代にあって文具をあつかう店の「看板」として何を選ぶかというのは、当事者にとってはなかなか大変な、はたからすればとても興味深いことだ。伊東屋は、それにジェムクリップを選んだらしいと、つい最近になって気づいた。

 先日、銀座の伊東屋に行ったとき、スワンタッチといっしょに、もうひとつ買ったのが赤い大きなジェムクリップだった。ひとつ350円は、クリップとしてはとても高いかもしれない。しかし、ぼくはネクタイピンとして使おうと思ったから、そう考えればとても安いということになる。かつて、クロムメッキのジェムクリップの大きいやつをタイピンにしていたことがあるのだけれど、ほどよい大きさのやつがない。これでも少し小さいしバネが強すぎるけれど、伊東屋のアイコンでもあるから、間に合わせでやっているとは思わせないところがある。

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 うちの事務所には小物の文具をいれておく3段の小さな引き出しがある。ぼくはそれを「書く」「切る」「つなぐ」の3種類に分類した。ほんとうはもうひとつ「測る」の引き出しがほしいのだが、測った結果はぼくのメモリーのどこかに書き込むわけだから、それは「書く」に入れることにする。そうすれば、おおかたの文具はこの3つの分類のどれかにおさまるのだ。ふつうのジェムクリップは、「つなぐ」のひきだしに入れてある。
文具屋のアイコンを決めるにあたって、伊東屋は「つなぐ」ということを大切にしたいと考えたのだろう。それは、とてもすてきなことだと思う。しかし、ぼくの個人的な思い出としては月球儀が伊東屋のアイコンで、ぼくを伊東屋につないでくれるのだ。

 ぼくたちの学生だった時代、宇宙船によって月の裏側が見えるようになったので月は大きな関心の対象だった。だからだろう、銀座伊東屋の地球儀を置いてあるコーナーに「月球儀」というのが置かれるようになった。それにはひとつ、地球儀とはちがうところがあった。固定する軸がなくプラスティック製の円筒の上にスイカのように載せられているだけだった。
もちろん、それを手に取って見たのだが、ぼくは手に汗をかく質なので、ツルリと手から離れて地球の引力に負けた。拾い上げると、当然のように大きくひびが入っている。たしか2万円以上だったから、持ち合わせなどあるはずもないけれど、レジの近くに年配の男の人がいたので、それを持っていって謝った。
 すると、「固定していないので気をつけてくださいということを表示していなかったのは私どもの手落ちです。けっこうです。」と言ってくれた。以来、ぼくは伊東屋に恩を感じ続けている。だから、ぼくにとって個人的な伊東屋のアイコンは、いつまでも月球儀なのだ。先日、その置き場を見てみると、あのときと同じコーナーに、やはりプラスティックの低い円筒の台に月球儀は載っていた。しかし、いまでも、落とさないようにという注意書きはない。

 ぼくは一年のうち350日前後をジーンズですごすのだが、それにワイシャツとネクタイといういでたちが好きなのだ。
しかし、扇情的な口紅のような赤い色のクリップは、どのネクタイに合うだろうと考えると、なかなかむずかしい。

投稿者 玉井一匡 : April 18, 2008 11:12 AM
コメント

玉井さん、ご丁寧に場所まで教えてくださり、ありがとうございます。銀座に行く楽しみが一つ増えました!!

Posted by: えっ栗 : April 29, 2008 10:15 PM

えっ栗さん
追加します。
銀座の伊東屋では、月球儀は階段をのぼって2階、振り返ると地球儀と一緒にならんでいます。

Posted by: 玉井一匡 : April 29, 2008 08:09 AM

えっ栗さん
このことを思い出すたびに、伊東屋の老舗としての心意気を感じるのです。
それにつけても、ルイヴィトンやらブルガリやら
銀座には外国のファッションのブランドが百貨店の1階を占拠したり、自社ビルをつくったり、
まちとしての銀座の気概はどうなっているんだと思います。
ぼくたちも伊東屋や木屋に行くのが、消費者の気概ってものかもしれませんね

Posted by: 玉井一匡 : April 29, 2008 08:02 AM

「月球儀」お店の方の対応のエピソードも素敵ですし、月球儀そのものも興味をそそられます。銀座はたまに(といっても以前より機会は少なくなりましたが)出向くので、次回立ち寄ってみたいなあと思いました。

クリップをネクタイピンにするというアイデアも、遊び心があって面白いですね!!

Posted by: えっ栗 : April 29, 2008 07:45 AM

AKiさん
伊藤屋があつかわないのでは、世間であまり喜んでくれないんでしょうか。こんど銀座に行く機会には、入手しておきます。

Posted by: 玉井一匡 : April 18, 2008 11:12 PM

今日、地下鉄渋谷駅を下りた目の前の伊東屋に入りました。
あのスワンタッチを手に入れようとしたのですが、店員に聞いたら、昔あったが、今は扱ってない......とつれないご返事でありました。
でも他のものを発見、小さい店なのに SYRO がありました。500g秤で大きい方の台のもので、1万7600円....だったかな。ちょっと欲しかったなぁ。

Posted by: AKi : April 18, 2008 07:59 PM
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