September 11, 2008

アレックス・モールトン屋敷

MoultonEmblem.jpgClick to Jump to MoultonSite

 モールトンの自転車の正面についているエンブレムを見ると、「Alex Moulton」の文字の上に立派な館のレリーフがある。これは、自転車を設計したアレックス・モールトン博士のすまいであり、モールトン自転車の本拠地でもある。

 このごろは、とくに外国の小説を読むとき、物語の背景を理解するためにGoogleマップをひらき、舞台として登場する場所を見て想像力を広げるようになった。ディック・フランシスの競馬シリーズ推理小説の新作を読みはじめたがこの前に読んだときにはまだGoogleマップなんてものは世の中になかったんだなと感慨にひたりつつイングランドの郊外の、競馬の厩舎や馬場がたくさんあるまちニューマーケットを上空から眺めているうちに、アレックスモールトンの屋敷もこんなところにあるのだろうかと思って「Holt Road,Bradford on Avon」と打ち込んで検索した。
 Holt Roadはすぐに見つかったが道路沿いを探してもモールトン屋敷はなかなかみつからない。この道を中心にして捜索の範囲を拡げてあたりを巡っているうちに、航空写真を精一杯拡大してたどっていくと、やっと見つけた。

 三つの切妻が連続した屋根と二つの切妻の連続をつくってそれを直角に交差させるという形式の屋根、テラスのかたち、いずれもモールトンのエンブレムに使われているモールトン屋敷の絵とピッタリ符合する。屋根の影が地面に落ちているのを見れば、エンブレムと同じであることが分かる。工場としては、かつて馬小屋や納屋などに使われていた離れを使っているようだ。かつて、松任谷正隆が司会をするテレビの番組カーグラなんとかというやつでモールトンが紹介されたことがあった。工場では、アムステルダムのオリンピックで優勝したというジイさまが、一本ずつスポークを組み立てていた。

 間違いない。ここがアレックスモールトンの屋敷だ。会社の本社でもあるのだろう。聞きしにまさる、いい家だ。

AlexMoultonPrfile.tiff  アレックス・モールトンに、まだなじみのないかたのために付け加えておこう。モールトン卿は、自転車をつくる前に、あのminiのための独創的なサスペンションを設計して会社を起こし製造した人だ。といっても、曾祖父はグッドイヤーと提携し、家業はゴムにかかわるものの製造を受け継いでいる。モールトンと共同開発した自転車を製造しているのがブリジストンであるのも、ゴムと自転車をつくるという共通項でつながりがあったのかもしれない。(ブリジストン モールトン)

 miniというクルマをつくるにあたって、設計者アレック・イシゴニスはあの小さなボディの中に最大の居住空間と可能な限りの性能を盛り込むための、ありとあらゆる方法をつくした。
 大部分の部品はあたらしく開発するのではなく、既存のものを利用して、そのレイアウトによって最大の居住スペースを捻出したのだ。モーリスマイナーに使われていた既存のエンジンを横に向けておきボンネットを短くした。変速機は、そのエンジンの下に潜り込ませた。FFにしてフロアシャフトをなくし、運転席のドアをえぐって薄くするためにガラスは引き違いにした。座席の背を立てて客室の長さを食わないようにした。だからハンドルは大分上を向いていた。そして、タイアが室内に膨らまないように、あんな小さなタイアをつかった。それは、車体の重心を低くして安定をもたらす結果も生んだ。そういうあたまの使い方が、ぼくは大好きだ。
 小さなタイアは道路のデコボコからの振動を拾いやすい。それを吸収するために円錐形の小さなゴムの塊でつくられたモールトンのサスペンションは、miniの奇跡を実現するために大きな貢献をしたのだ。

 スエズ動乱で運河をつかえず石油はが急騰したときに、モールトンはガソリンのいらない乗り物として自転車をつくり、miniのトランクに入るように小さく分割できる自転車をつくった。楽にタイヤを回せるように小さいタイアをつけた。が、小さな車輪が道路のデコボコを拾いやすいのはクルマとおなじことだ。
 だから、モールトンは自転車にゴムのサスペンションをつけた。

 モールトンの家が聞きしにまさる、いい家だと書いたが、それは、この敷地内の庭や建物がいいということにとどまらない。この屋敷を含めた周りの環境、それをつくりだすシステムがすてきだということなのだということが、Googleマップでこのあたりを散策してみるとわかってくる。

■参照
アレックス・モールトン/Wikipedia
Alex Moulton/英語版 Wikipedia

■関連エントリー
Alex Moulton AM-5/aki's STOCKTAKING
自転車通勤/MyPlace

投稿者 玉井一匡 : September 11, 2008 11:19 PM
コメント

そういえば、エンブレムに描かれた屋敷の図の上にAとMのイニシャルをくみあわせたものがありますが、これは三つの切妻屋根のつらなりと重ねているのでしょうね。

Posted by: 玉井一匡 : September 13, 2008 11:58 AM

秋山さん
やはりそうなんでしょうね。ここで、ミニのサスペンションも次々とつくられたんだろうし、その前にはお祖父さんの代に馬車のタイヤをつくっていたわけですね。そう思うと、感慨もひとしおだなあ。
こういう場所でそういうものがつくられ続けたというのは、文化がちがうのですね。それも、残念ながら程度が違うという気がします。
はじめのころには川の水をつかって製造して、輸送には船をつかったのでしょうか。日本の皇太子がイギリスに留学していたときに川の交通について研究したというのは、誰かの勧めによるのでしょうが目のつけどころがいいですね。

Posted by: 玉井一匡 : September 12, 2008 10:46 AM

それはそうでしょう。モールトン卿のプライバシーを超えています。
屋敷の前面、川沿いに工場が広がっていますが、これがモールトン家の家業、今は違うと思うけれども、ゴム製造の工場なんでしょうね。

Posted by: 秋山東一 : September 12, 2008 08:57 AM

秋山さん
スターの住宅を空から見つけるというのは、なんだかのぞき趣味のような気がするのですが、この屋敷のばあいは、それがないように思うのです。
それは、ここが自転車をつくるという公的な活動をしているところだからなのでしょうね。それに、まわりにはすてきな場所がたくさんあるからかもしれません。
それらについても書きたいのですが長くなりそうなので、「モールトン屋敷のまわり」は、つぎのエントリーにします。

Posted by: 玉井一匡 : September 12, 2008 07:50 AM

やぁ、すばらしい。
モールトン卿の屋敷が MyPlace だなんて、考えてもみなかったなぁ。

Posted by: 秋山東一 : September 12, 2008 12:40 AM
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