September 19, 2008

ナローボートのマリーナ

NarrowboatMarinaS.jpgClick to Jump to GoogleMap

 モールトン屋敷のあたりをGoogleマップで散策を続けると、いろいろなものが見つかる。モールトン屋敷の南側の川沿いの工場はモールトン家の家業のゴム製造工場だったのだろうと秋山さんがコメントされたが、そこから南東に1.5kmほどのところに、水路の一部が膨らんだように寄り添う池がある。モールトン家の前に流れるのはBradford Riverとあるから川だが、これは運河だ。岸の近くに碇泊している細長い船たち。ナローボート(narrow boat)ではないか!
 池には、桟橋に舳先を寄せてたくさんのボートが身を浮かべて、揺れる水に身をまかせてのんびりとしているようだ。サムネイルをクリックすると「Marina at Widbrook Nr Trowbridge」と書かれた写真が見られる。たしかにマリーナなのだ。アンカレッジの水上飛行機たちを思い出した。こういうのを見つけると胸が高鳴りつつ、自分がボートや水上機になったつもりか、のんびりした気分になる。

 このcanalをたどって南西に移動してみてください。こんな仕掛けがある。これは水位の差を調整するためにつくられた「Lock」というものだと知ったのは、kai-wai散策の川と船についてのすてきなエントリーのひとつオックスフォード便り(11)だった。
さらに西に追ってゆくと、運河と川が交差している。 川と道路の上をこえるcanalのための石積の立体交差だ。 

 canalとは、水そのものの利用もしくは船の移動のために人工的につくった水路だとWikipediaには定義されている。これは後者だろうが、産業革命以前につくられたcanalは、鉄道や自動車が発達したのちには、大量輸送の役割を果たすことはなくなったはずだ。にもかかわらずnarrow boatはたのしみのための船として、ここではcanalやlockという仕掛けをしっかりと活かしている。
 この豊かさは、かつてイギリスが世界を経済力で支配していた時代に、外国からすいあげたもので蓄えられたはずだ。アフリカで、インドで清朝中国で、さらに中東諸国で、現在の世界に満ちている争いの多くは、この国をはじめとする西欧の国々がまき散らしたものだ。・・・しかし、その結果として築き上げたものを、この国の人たちや西欧はけっしておろそかに消費してしまうことがないようだ。ヨーロッパの川は、多くの国を経て海にいたるので、勝手にそれをいじるわけにはゆかないということもあるのだろう。ヨーロッパ中に水路のネットワークが巡らされているので、カヌーでヨーロッパをめぐることができるのだという話をきいたことがある。canalは、単独では成り立たない大きなシステムをつくる重要な一部なのだ。miniやモールトンの自転車も、それに道路を加えた大きなネットワークをつくっているのだ。

 それにひきかえぼくたちのくにの近代は、うつくしく豊かな山や川や海を持ちながら、入り江や湾を埋め、わずかな距離を縮めるためとして橋をかけ山を穿ち、あまり必要のないダムをつくり、とりかえしのつかない無駄な土木工事を続けてしまった。さきごろ川辺川のダムの計画を中止するとした熊本県の決断は、方向を変えてくれるのかもしれない。せっかく費用をかけるなら、役に立つことに使えばいいだけのことではないか。

■関連エントリー
オックスフォード便り(5)/kai-wai散策
オックスフォード便り(9)/kai-wai散策
オックスフォード便り(10)/kai-wai散策
オックスフォード便り(15)/kai-wai散策
平底船:ナローボート/MyPlace
柳川堀割物語/MyPlace

投稿者 玉井一匡 : September 19, 2008 07:50 AM
コメント

kawaさん
 日本で施設をつくる場合には、おおかたの場合は必要があってつくるのではなくて、まず容れものをつくって、そのあとで利用者あるいは利用法そのものをつくり出すというのがつねですが、マリーナというものの場合も、そうなのでしょう。舟で遊ぶという文化があってそのための施設をつくるのではなくて、「レジャー施設」という投資を増やし、そのつぎにレジャーという消費を育てようというのが目的だったのでしょう。日本中で、水のあるところにはマリーナ、山にはゴルフ場とテニスコートをつくろうとしていました。いったい、日本には、こんなに沢山ヨットをやるやつがいるんだろうかと思いました。
 運河につくられたものをmarinaと呼ぶようになったのは、もともと石炭などをはこぶためにつくられた運河を海に見立てて遊んでしまおうという思いがあって、united KINGDAMでは、こういう使い方をするようになったのではないかと、ぼくは思うのですが。


Posted by: 玉井一匡 : September 27, 2008 09:10 PM

that are used exclusively by non-industrial pleasure craft such as canal narrowboats.
漁業や運搬といったプロ使用ではなく、ヨットやナロウボートといった私用、お楽しみ用といったことみたいですね。
へ〜、仕事以外の為の波止場、港湾なんていつ頃成立したんだろう。
漁港には使うことは無いのでしょうか。お遊び用に使うとしたら、いつ頃出来た言葉なのでしょうか。
水運が産業の為でなく個々の暮らしや楽しみの為に開放されているんだ。
イギリスではいつ頃でしょうか、国の豊かさの指標なんでしょうね。

Posted by: kawa : September 26, 2008 11:14 PM

kawaさん
そう言われればそうですね。
で、まずMacについているDictionaryを開いてみました。
marinaと打ち込むと、こう書かれています
noun
a specially designed harbor with moorings for pleasure craft and small boats.
ORIGIN early 19th cent.: from Italian or Spanish, feminine of marino, from Latin marinus (see marine ).
19世紀にイタリア語かスペイン語から来たとかいてありますが、海とは、とくに書いてありません。
そこで、こまったときのwikipediaの英語版を開きました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Marina
ヨットやボートを繋留する設備のほかに、駐車場、シャワー、燃料の供給、レストランなどの施設をそなえ、そのうちのサービスの受け方によってさまざまな料金体系があるというようなことが書いてあります。
この最後の方に、つぎのような記述がありました。
In the United Kingdom the word "marina" is also used for inland wharves on rivers and canals that are used exclusively by non-industrial pleasure craft such as canal narrowboats.
「イギリスでは、「marina」という言葉が川や運河に面して、ナローボートなどのプレジャーボート専用につかわれるwharfのこともいう」と
じゃあwharfとharbourとは、どう違うんだろう

Wikipediaでは
・wharfはつぎのアドレスに
http://en.wikipedia.org/wiki/Wharf
A wharf is a landing place or pier where ships may tie up and load or unload.
船を係留して上下船できる場所だと書いてあります。
Wikipediaを日本語表示にすると「埠頭」になります
・harbourはつぎのアドレスに
http://en.wikipedia.org/wiki/Harbour
A harbor or harbour (see spelling differences), or haven, is a place where ships may shelter from the weather or are stored.
船が、どんな天候でもまもられるところだとあります。
これもWikipediaを日本語表示にすると「港湾」です

Wikipediaを外国語表示と日本語表示で切り替えると、文化的な違いが読み取ることができるのでおもしろいということをしばらく前に見つけて、楽しむようになりました。
埠頭だ、港湾だという言い方をすると、役所用語のようで、なんだか楽しくなくなってきますね。


Posted by: 玉井一匡 : September 26, 2008 04:40 PM

ずっと昔、琵琶湖にヤンマーのマリーナを作るという計画がありました。川や湖でもマリーナでいいのかなと思いました。
マリーナはマリーンとは関係が無いと思って良いのでしょうか。

Posted by: kawa : September 26, 2008 01:00 PM

光代さん
ぼくも、アメリカの好きなところはたくさんあります。大好きと言っていいところもいっぱいある。しかし、あんな大きな国、ろくな歴史の蓄積のない国をそのままマネしようとすることは大間違いですね。
かれらもまた、そういう違いに気づかない無神経なやつが多くて、自分たちが最高だとハナから思いこんで、よその国に自分たちのやり方を移植するというかよくいえば親切の押し売りを、今も性懲りなく繰り返していますからね。
 大阪も東京も、むかしの地図に堀割が巡らされているのをみると、これがそのまま残されていたら、美しいまちができただろうにと、おもわずにはいられません。日本でも、福岡県の柳川のように暗渠になりそうなところから堀割を生き返らせた例があることは、救いですね。以前に、「柳川堀割物語」をエントリーしたのを思い出したので、関連エントリーのリストに加えておきます。

Posted by: 玉井一匡 : September 21, 2008 11:39 AM

川や道路よりも 運河が優先されているのが驚きです。
子供の頃有った狭い小さな川(子供の時はそう思っていましたが 今考えると生活用運河だったかも)が、埋められたか暗渠化しているのか 消え失せているのが当たり前になっていた私には ちょっとショックです。
出来上がった大阪の町が 本当にどう見ても全然美しくないんですもの。
正しい情報無く 突然完全な敗戦を受け入れざるを得なかったという事も関係あるように思います。
自分たちのそれまでの文化を否定的にしか考えられなくなった事、そして、歴史というものが余りないアメリカの文化を追いかけざるを得なかった事も。
自然や積み上げられ磨かれて来た文化よりも 物とお金がタップリ有る事を優先させちゃったんでしょうねえ。

・・・なんかね〜、淋しいんですよね〜、町を歩くと。
美しい帽子をかぶって歩きたいのに、ただの「帽子のおばさん」にしかなりません。
町に 美しい帽子が溶け込めないんです。

Posted by: 光代 : September 21, 2008 08:58 AM

秋山さん
Googleマップを見ていると、ますますヨーロッパのまちはどきれいだと思い、それがたのしくもあり、ときに日本を思うと情けなくも思ってしまいます。
ストリートビューの代わりに写真が見られるっていうのも、なかなかありがたいですね。このごろは、本を読むときにGoogle Earthとマップを開いているので、おもしろいけれど時間がかかります。

Posted by: 玉井一匡 : September 19, 2008 04:46 PM

実にいい景色ですね。
平面で見て、Panoramio の写真を見ると想像していたよりも高低差があって........実に美しいですね。札幌の横谷さんに出かけてもらって panprama を撮ってもらって........と思ったけれど、すでに、あるかもですね。

Posted by: 秋山東一 : September 19, 2008 12:50 PM
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