February 09, 2009

PATRIA O MUERTE:祖国を、さもなくば死を

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 以前、友人の塚原がキューバみやげに、ゲバラの肖像のはいった3ペソのコインをくれた。ミーハーといわれてもしかたないが、ぼくはこんなものがうれしいのだ。ビエンチャン、バンコクなどでもゲバラのTシャツを買った。このコインは直径26mm、ゲバラの肖像の上に「PATRIA O MUERTE」と書かれている。「祖国を、さもなくば死を」は、アメリカ独立戦争の前にパトリック・ヘンリーが演説で言ったという「自由を、しからずんば死を(give me liberty or give me death!)」にちょっと手を加えてアメリカに投げ返したのにちがいない。
だが、キューバでは外国人であるはずのゲバラにとって、ここで言う「祖国」とは何を意味しているのだろうかと、気になっていた。
ゲバラの映画「CHE」の一本目、「チェ 28歳の革命」をまだ見ていないうちに、上映している映画館がほとんどなくなってきた。インターネットで調べると、ユナイテッドシネマとしまえんではまだ21:30からの回だけやっているのを知って金曜の夜に駆けこんだ。

 昨年の秋、「ゲバラの映画がカンヌで上映されて評判がよかったらしいから、日本にもきっと来ますよ」と、ギンレイホールの藤永さんが新聞の切り抜きを手渡して知らせてくれた。「モーターサイクルダイアリーズ」やその原作「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」の話をしたことがあったからかもしれない。日本で上映されるにしても単館上映だろうと思っていたが、全国のあちらこちらで上映されることになった。
 監督はオーシャンズ11スティーヴン・ソダーバーグであるし、商業的な成功もねらおうというのだ。そんなことが可能になったのは、監督が言うようにブッシュがあまりにもひどかったこともあるだろうし、ゲバラの人気が広がったことや、アメリカ合衆国にとってゲバラがもう「危険」でないと思われるようになったせいかもしれない。

 さて「PATRIA O MUERTE!」だが、この映画では1964年、国連でアメリカの経済封鎖を非難しキューバの革命政府の正当性を主張するゲバラが演説の最後に言い放つ。右のYouTubeの映像ではゲバラの国連演説の声が聞けるが、ここにはそれらしいことばが聞こえない、ぼくには。
 オートバイで南米の国々をいくつも越えて巡り国境を越え、後年メキシコでカストロと出会い一緒に小船グランマ号でキューバに渡る。ゲバラにとって祖国とはアルゼチンでもなくキューバでもなくて、中南米のアメリカ諸国のすべてを意味していたのではないか。それらはヨーロッパからやってきた連中が勝手に切り分けたにすぎない。だとすれば国境というものを別の何ものかに変えようと考えるのは当然だ。
 南米諸国に手を伸ばし利益を吸い上げるアメリカの貪欲に対して、それぞれのくにが独立を保ちつつ共生し、グローバリズムに対抗する南米を祖国として、ゲバラは自然な思いでボリビアに渡ったのではないか。

 キューバを愛し、国境に頓着しなかった外国人といえばもうひとりアーネスト・ヘミングウェイが思い浮かぶ。彼は、やはり国境を越えてスペインの内戦に参加してフランコの軍と戦った。ファーストネームERNESTがゲバラのERNESTOと同じだったのは偶然だったにしても、銃によって自殺した文豪ERNESTと、閣僚の座を捨てて喘息の身をジャングルの苦しい戦いに投じたERNESTOの最期に共通するところがあるのは、偶然ではないように思えてしかたない。
ふたりとも、外国で死を迎えたとは考えなかっただろう。

ゲバラのTシャツは、いくつかもっているけれど気恥ずかしくて人前では着たことがないが、こんど東京ハンズで部品をさがして、コインをペンダントに仕立てようか。
が、その前に「チェ 38歳の手紙」の、つらいボリビアを見なければならないのだ。
去年見たフランスのテレビ局の長時間インタビューが思い出される。
「信じられないよ、あいつは喘息の薬を置き忘れてボリビアに行ったんだよ!」と
何十年も前のことを、外国のジャーナリストに話していたカストロの、いつもながらのあふれ出る情熱とことば
弱点や欠点をたくさん持っていて、ときにはうんざりさせられるんだろうが、だからこそなおさら敬愛される
なんと魅力的な男たちをふたり、歴史は出会わせてくれたのだろう。
この映画が描くのは、英雄の悲劇より、革命の成功より、かくも魅力的な二人の男なのではないか。

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投稿者 玉井一匡 : February 9, 2009 12:20 PM
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