February 23, 2009

Tokyo Picnic Club:東京ピクニッククラブ

PicnicClub1.jpgClick to Fly them onto Newcastle/Gateshead
 2月20日の夜、HUMという集まりに参加した。
 正式な名称は武蔵住宅都市懇話会。メンバーのひとりが、自分の追求しているテーマについてレクチャーをする。それについて質疑・論議をおこない、のちに懇親会に移行する。住宅と都市についてある程度の共通する関心をもって高校の同窓生が集まるという会なのだ。そういうものがあるということは参加した友人の話で何年も前から知ってはいたが、ぼくはこれまで行ったことがなかった。今回は友人が転送してくれた案内のメールに好奇心を刺激されて、打合せで30分ほど遅れたからそっとドアをあけて入っていった。(むっ、40人ほどが席についていて、建築の内田祥哉先生や高校時代の数学の先生にして担任、のちに校長・大坪先生・・大先輩もいらっしゃる)
 話し手の太田浩史氏は、東京ピクニッククラブなるものを夫人とともに主宰している。遅れたせいで彼がピクニックに関心をもったきっかけについては聞き損ねたが、本職は建築家だ。彼は61期ぼくは38期、その差23。はじめぼくは、ピクニックなどという軟弱をちょっと気に入らないが何をやっているのだろうかと話を聞きはじめたのだが、聞くうちに行動力と企画にすっかり感心してしまった。

 太田氏は、イギリス人の蒐集したピクニックセットのコレクションをオークションで落札した。受け取りに行くと、ぼくは世界でいちばんのコレクターだから今度はきみが世界一になったんだよと言われる。
 東京ピクニッククラブは、あちらこちらの公園や公開空地、空き地(ブラウンフィールドと呼んでいる)、はては中央分離帯など、都市につくられながら放置に近い扱いをうけている空地(くうち)から何の手も加えられずにいる空き地にいたるまで、命をふきこみ、もちろんみずからは楽しむために、ラグを敷いてピクニックバスケットを開き酒食を楽しむ。
 デザイナー、フードコーディネイターなども加わり、さまざまなモノを企画・製作したり行動したりする。それについては東京ピクニッククラブのウェブサイトに詳しいのだが、サイトには、たとえばつぎのような項目がある。

*ピクニックの心得(15Rules):ピクニックをたのしむための15のルールの制定
公園や緑地の乏しい日本の都市に、ツールを用意し行動をくわだて、屋外に一時的とはいえ開放的生活空間をつくり出す行動とするべく15のルールを設けた。
たとえば RULE 02にはこうある・・・「 屋外の気候を活かすべきである.蒸し暑い日には涼風のナイトピクニック,寒い日には陽だまりのランチピクニック,適した時間と場所を見つけて楽しむべし」野生生物のように環境にみずからを適合させるのだ。

*Works:これまでにつくったモノ、行動したコト
 新しいピクニックセットのデザインの提案、Portable Lawn(キャスター付き可動芝生)のデザインと制作、ボディに芝生模様の塗装をほどこしたSMARTのデザインと制作・・・等々ピクニックをたのしむための29の実積があげられている。
PicnicClubAngel.jpgPicnicClubMilleniumBridgeS.jpg中でも特筆すべき「Work」はモノではなくピクノポリス(Picnopolis)とよぶイベントである。
イングランド北部の都市ニューカッスル/ゲイツヘッド(川をはさんで北にNewcastle Upon Tyne、南にGatesheadがある)から「ピクニック・イベントを企画 して欲しい」という依頼をうけておこなったものだ。公園の芝生の一部を飛行機の形に切り取る。そこに残された土には「Grass On Vacation」という看板を立てて芝生の不在を報せ、切り取った飛行機型の芝生はPortableLawnに姿を変えて期間中あちらこちらに移動する。その芝生(mother plane)に率いられるようにグリーンの飛行機型エアマットを配置につかせて10日間に10カ所でピクニックをひらいたのだ。
 ニューカッスル/ゲイツヘッドには、プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドFCがある。巨大彫刻エンジェル・オブ・ノースや動く橋ミレニアムブリッジをつくった。12億円ずつ10年間にわたり、市が費用を負担してさまざまな施設をつくったりイベントをおこなったりする制度が設けられている。その一環としてこのイベントが行われたのだ。こういうことをやらせる自治体があり、それを導く政治家がいて、それをつくる市民が健全であるはずだ。
 エンジェルをつくったアントニー・ゴームリーは、はじめ市民の90%がこの彫刻に反対だったのに対して、何度も何度も訪れて市民に説明し対話をおこなった末にこれをつくった。そういう過程もアートの一部分なのだと彼は考えている、とてもすてきな人なんだと、この日の参加者のひとり田中孝樹氏は話してくれた。
 さらにその背景には、かつて産業革命を起こして牽引し、おそらくは工場労働者を劣悪な環境で働かせ、資源や販路を手に入れるために植民地を手に入れた時代があり、さらにはイギリスの産業の没落があっただろう。そこに橋やエンジェルのようなモノたちやを置いて活動をうながすことによって、この都市を再生させたのだ。

太田氏の本来の研究テーマは「都市再生」だという。

HUMの懇親会では、このイベントのときに地ビールの会社と提携してつくられた草の香りのビールの差し入れがあった。

■追記
 この芝の飛行機を見てエンジェル・オブ・ノースに似ていると思ったので、ぼくは会場でその関係について質問をしたのだが、そういえばJリーグ百年構想のMr.PITCHはあるく芝生だったなと思い出した。サッカーもイギリスに起源があるのだ。
 Google Earthでイギリスの郊外を飛行すると、羊の散在する牧草地がどこまでも続く風景が多くて、だらしなく都市が広がる日本の都市郊外と較べるとなんと美しいのかと、いつもうらやましく思う。芝生というものは、イギリスにとっては飼い慣らした自然のたいせつな記号なのだ。
 日本で芝生の意味するものは、決してイギリスと同じではないだろう。だからこそ、芝生を飛行機に見立てて英国にとんでゆくというのはうまい考え方だ。では、地形も歴史も違う日本にとって、イギリスの芝生にあたるものは何なんだろう。

 都市につれてきた自然のもとで人々が集うという意味では桜だ。芝生は下にひろがる床、桜は上をつつむ天井。芝生の広場にさくらが点在するというのが日本の公園の典型のひとつになったのは、慣れ親しんだ桜と西洋の芝をあわせた結果なのだ。
15Rulesの10番目に「ラグに上がりこむのではなく,ラグを囲んで座るべし.ラグは集まりの象徴であるから」とある。ラグは床ではなくテーブルというわけだ。日本の花見で毛氈の上に座るのは、毛氈で床をつくるからなのだ。
 
とにかく、花見を美しくたのしむにはブルーシートでなく、きもちのいいものを使うようにしたいものだ。

 

投稿者 玉井一匡 : February 23, 2009 02:35 AM
コメント

きむらさん
わあ早起きですね。
これを読んでくださって、ありがとうございます。
MyPlaceということばは、ブログを始める数年前に考えたものですが
それより前に土井脩二さんが元気だった頃、彼にこの考えを話したことがありました。
共生のために自分を制限するという考え方よりも、むしろ
ほかの人の「所有」する場所もすこしだけ、自分のものだと考えるほうがポジティブで楽しいし、ムリがないから持続すると思うのです。
同じように、自分の「所有」するものも、一部はほかの人のものでもあるのだと考えるし
建築やまちをつくるときにはほかの人がその一部を自分のものと感じやすいようにすれば、まちも、くにも、もっと気持ちよくなるだろうと。
まわりが気持ちよくなれば、自分ももっと気持ちよくなるんですからね
土井さんは、常人にはできないようなレベルでそういう生き方をしたひとだったと思うのです。

Posted by: 玉井一匡 : March 6, 2009 11:32 AM

玉井さん

blogの
あらゆる場所が、その一部は君のものだ。もちろんきみの庭、隣の庭の花、前の道、歩く道の緑、行きつけの店。 
ここは大部分が、そこは少しだけ、あそこはわずかに。同じように君の玄関の木蔭も少しは通りがかりの人のもの。 
たがいにそう思って生活し、そうれをうながすようにいえや建物を作れば、だれもがもっと広い場所をもつことができる。

このお言葉、今日じっくり読んでみまして
しみいりました。
ありがとうございました。

mixiにblogをリンクできますよ〜。

きむら

Posted by: きむらまこと : March 6, 2009 06:14 AM

おさんぽ探偵さん
そういえばそのあたりだと聞いたことがあります。
ぼくは、この会で何十年ぶりでお会いしたくらいですから
お宅にうかがったこともなく図面や写真で知っているだけです。
とてもシンプルで気持の良さそうな住宅ですよね。
探偵さんの遭遇能力は、相変わらずですね。

Posted by: 玉井一匡 : February 28, 2009 10:28 AM

我が家から歩いて5分くらいのところに
内田祥哉さんのおうちがあるみたい。
すてきな平屋で周りときっぱり違って光ってます。

Posted by: おさんぽ探偵 : February 27, 2009 07:20 PM

AKiさん
コメント遅くなってしまいました。
新潟に行っていて、さきほどiMacに戻りました。
iPhoneでコメントを書こうとしていたのですが、どうもうまくいかず、いつのまにか眠っていました。新幹線のWi-Fiを待望します。
 この会の質疑応答で、ぼくも花見についてききました。
日本の伝統にも、季節限定の花見というピクニックがあるが、この頃は美しくふるまわないやつが多いから、それに対してピクニックを持って来るというのは、花見を気持ちよいものにするためにもとてもいいと思うというようなことを言いました。
太田氏は、日本ではピクニックよりも80年も早く吉宗の時に飛鳥山を開放して花見をしたんだと、イギリスで言ってきたそうです。
花見の方が早いわけですが、残念ながらお上から下されたものですね。

Posted by: 玉井一匡 : February 23, 2009 06:14 PM

ホテルで Picnic Basket を用意してくれるというのは、二人がピクニックするのに必要な全て、中味も全て用意してくれるということでした。もちろん、サンドイッチもワインも.......です。これは、旅館がお弁当を用意してくれるのと同じなのですが、あくまでもピクニック.......というのがいいですね。
我が国のお花見用の携帯お重や、携帯お酒容器は日本の Picnic Basket なんじゃないかしら。

Posted by: AKi : February 23, 2009 10:33 AM

AKIさん
そうなんですか。
この日、現場のあとに行ったのでおそくなってしまったのでそういう歴史の話をぼくは聞きそこないましたが、Basketというのはホテルに常備してあるものなんですか。
文化として根づいているということは、バスケットに入ったセットは、ありふれたものであるということなのですね。
だからでしょうか、オークションでも意外なくらい安く手に入ったのだそうです。


Posted by: 玉井一匡 : February 23, 2009 10:16 AM

ずいぶんと昔ですが、英国に長期滞在されたご夫妻に、お二人でピクニックに行かれた話を聞きました。ホテルに Picnic Basket を頼んでおけば、ちゃんと用意してくれるんだ.......という話を聞いて、ピクニックってちゃんとした文化なんだと理解しました。

Posted by: AKi : February 23, 2009 09:36 AM
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