April 13, 2009

非電化工房探訪記


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4月8日、JEDI一同6人で那須に行った。目的は「非電化工房」で毎月2回開かれる見学会である。
製品の実物を手に主宰者の藤村靖之氏による非電化についての講義をうけた。工房賭して使われている建物は、かつてバブル時代に、人工池のほとりの傾斜地に貸しスタジオなどが建てられたがその後荒廃していたのを購入し改造したものだという。

 藤村さんの著書のタイトルが「愉しい非電化」であるとおり、我慢をして電気を使わないのではなく、むしろ非電化をたのしもうというのが基本的な姿勢だ。電化生活と同じくらい便利で快適というわけにはゆかないことは承知のうえで、非電化製品には別のたのしさがあるし、環境を傷つけることも少ないから、ぼくたちはむしろきもちよく生きられる。

たとえば、いま開発中の手回しの籾すり機を消費者が使う。消費者は農家から籾のままの米をじかに買う。生産者は農協の買い上げ価格よりも高く売れるし、消費者は米屋で買うよりも安く米を買うことができる。籾のままの米は低温貯蔵しなくても保存できるので原発3基分の電気消費が抑えられる計算だ。

同じように、自分でコーヒー焙煎器をつかって焙れば、ぼくたち消費者は薫り高いコーヒーを飲めるし、ブラジルの農家は苦労をかさねてつくる無農薬コーヒーを生豆のまま消費者に高く買ってもらえる。
モンゴルで板とペットボトルと鉄板でつくったものと同じ非電化冷蔵庫があった。電気のない草原の中で遊牧民が一頭の羊を一週間保存できる。空気がきれいなぶん夜間輻射による熱の放出が大きいので、日本でステンレス製の非電化冷蔵庫以上の性能を得られるのだという。
部屋に入ったとき何本も箒がかかっているのが気になっていた。非電化掃除機もつくったが、箒のほうがいいんだという。カーペットだけは掃除機でないとゴミを取れないが、ゴミもろとも空気を吸い込むというのはすこぶる効率が悪い、名人の箒は8000円するけれど8年も使えるんだと言われたが、うちでは箒も使っているが気合いをいれて掃除をするときには掃除機をつかうのだ。ちょっと考え直そう。HidenkaFujiS.jpg浄水器を手に説明する藤村靖之氏 Click to PopuP

 藤村さんは、思想をもってモノをつくり出す発明家であるが、それにもましてモノを発明しつくることを通じて思想を語る思想家なのだ。
現在の人間社会がかかえる根本的な矛盾は、生産と消費をつねに拡大させなければならないということにあると思う。この経済危機の原因は、どうしてもそこにたどりつく。地球のもっている資源も廃棄物を土に返す能力にも限界があって、今すでにそれを越えていることをぼくたちは知っている。しかもそういう恩恵を受けるのはわずかな「先進国」の住人でしかなく、残りの国には飢餓にさえおびやかされている。
そういう状態をなんとかしなければならないという思いが、電気を使わずにすむ道具を発明するという行動になったのだろうと、発明品の数々を見て彼の話を聞くと理解できる。
電気は、それでなければできない作業のためにつかうべきなのだ。

 火力や原子力の電気は、熱で蒸気をつくりそれを回転運動に変えてつくられる。そこで費やされるエネルギーの数十パーセントが無駄に熱として捨てられる。さらに輸送の途中で送電線から熱として電気を失いながら、ときに数百㎞を経てやっとのことで都市に辿りつく。そんなふうにしてやってきた電気を、また熱にもどして使おうというのが「オール電化」だ。ばかばかしいではないか。しかも、電力会社は「クリーンエネルギー」として原発を増やそうとしている。だから、まずは、電気の消費を減らそうというのが、藤村さんの考え方だ。
①電気を使わず、すこし手間はかかるがたのしく作業ができる。②消費者も生産者(とりわけ農業)も経済的なメリットを得られるようにして金持ちの道楽に終わらせない。③道具はこわれても自分で直せるようにつくる。そうやって長期間使ったあとに、回復ができないほど壊れたなら、そのときにはできるだけ早く土に還るようにする。

 もともと太陽から地球に送られる熱は、大気のない宇宙空間をよこぎって送られた輻射熱だ。あらゆる地球上の活動のエネルギーは、もとをたどれば太陽から送られてくる熱に依存している。地上で受ける太陽の熱の60%もが夜間放射されると藤村さんは説明された。それをつかって非電化冷蔵庫は庫内を冷やすのだ。輻射で放出される熱は宇宙の彼方に送られるが、コンプレッサーから捨てられる熱は空気としてあたりを漂う。工房の暖房は薪ストーブでまかなわれていた。それも輻射熱で暖めるではないか。エネルギーは、形式を変換するたびにロスが生じるから、輻射熱という形式で利用するのは、そういう意味でも効率がいいのかもしれない。

必要のない電化製品をふるい落としていって、ぼくが最後に残すものは一番たいせつなものということになるが、それは何だろうかと考えてみる。
・・・・いろんなことができるというのを別にしても、やはりMacを一台ということになるだろうなあ、やはり。

■追記
モデムの不調やらなにやらあって、ぼくのエントリーはすっかり遅くなってしまったので、JEDIの御一同のエントリーの後塵を拝することになった。この他に、殻々工房と雲海閣でもさまざな発見があったがそれは後日。

■関連エントリー
那須 /春の遠足/aki's STOCKTAKING
那須二大工房巡り/MADCONNECTION
非電化と凧揚げ/kai-wai散策
非電化工房・那須アトリエ見学会/KARAKARA-FACTORY
春の遠足、那須の工房めぐり-1/Things that I used to do.
この他に、翻訳家の村松潔さんがいらした。そもそも昨年のこと、村松さんがコーヒー焙煎を秋山さんに実演して見せたことが、ことの始まりだったのだ。

投稿者 玉井一匡 : April 13, 2009 04:35 PM
コメント

きむらさん
ご無沙汰してしまって・・・すみません。
完全な「非電化」生活というのは普遍的な解決ではないでと思いますが、現実にここまでできるのだということを知ることができる、大切な経験でした。
藤村さんは、しかめっ面したり、人を批判するのでなく、面白く非電生活を探ろうという姿勢であるのが、とてもいいなと思うのです。

Posted by: 玉井一匡 : June 11, 2009 11:18 PM

おひさしぶりです。

非電化住宅にはやくすみたいものです。

脱穀機が楽しみです。


Posted by: きむら : June 10, 2009 04:55 PM

shinさん
先日はどうも。
全くの非電化というのは現実性がないですよね。
しかし、自分の生活でできるだけ電気を減らしていって
ここまでならいいかなというのを考えると、どうなるだろうかと
考えてみたいと思うのです。
同じ生活を電気なしでというのではなく
やはり生活は変える、しかし楽しがったりおもしろがったりできる範囲で変える
とすれば、一般的なことは言えないから、ウチだったこのくらいと
自分に引き寄せて言わなくちゃあならないのではないでしょうか
ビールが大好きな人は非電化冷蔵庫というわけにはいかないでしょう

Posted by: 玉井一匡 : April 27, 2009 05:17 PM

今日はながながお疲れ様でした
「妃殿下(非電化)」やっと、体に入った感じです
それにしても非電化って、物理的にも大変なことですね

Posted by: shin : April 25, 2009 02:20 AM

光代さん
きっとそうだろうと思っていました。
日本とは限らないでしょうが、大都市のように社会のシステムが複雑になっていると、ものごとの本質が見えにくくなってしまいますが、遊牧民の生活のように独立した小さなシステムを形成しているところにいくと、それがはっきりと感じられるのでしょうね。
分かるような気がします。
光代さん、全然落馬なんかしてないとおもうけど。裸馬を乗りこなしてしまいそうですよ。

Posted by: 玉井一匡 : April 21, 2009 10:23 PM

まさしく、そのお書きになってらっしゃるモンゴルの遊牧民のための非電化の冷蔵庫の調査に 長男が参加してきたのです。
あれ以来、彼はどんどん 自分を開放して行っているように感じます。
非電化プロジェクトが 思想や活動を越えて、人が人として生命力をもって生きる力を与えてくれるんだなあと実感したのです。
馬から落馬したみたいな変な文章になりましたが、お分かりいただけたらうれしいです。

Posted by: 光代 : April 21, 2009 05:24 PM

masaさん
過分なお褒めです。恐縮です。ぼくはどうも軟弱なので挫折しがちです。しかし、藤村さんは意志が堅固であるうえに、発明家はまず自分がモノをつくって「これをつかうと、こんなに素敵な生き方ができる。つかってみませんか」と言うことができるのですね。建築でそれをやるのは難しいけれど、そのかわり、途中でいろいろなことを話し合いながら進めていけるということもあるでしょうね。

Posted by: 玉井一匡 : April 17, 2009 12:27 PM

「思想をもってモノをつくり出す発明家であるが、それにもましてモノを発明しつくることを通じて思想を伝える思想家なのだ。」という一文に参りました。藤村さんの人物像を実に的確に描いていらっしゃると思います。
が、モノをイエに…発明を設計に…置き換えてみますと、それは紛れもなく、玉井さんご自身のことではないか!と…誰もが思うのではないでしょうか。少なくとも僕はそう思いますし、思っていました。

Posted by: masa : April 17, 2009 01:22 AM
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