November 19, 2009

ストリートビューに遭遇

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 自転車で走っていると、停車中の白いプリウスにすれ違った。
 ん?・・・そういえば屋根の上に黒い物体を載せた画像が視界の端に残っている。
 一度は通り過ぎてから自転車を停めてふりかえった。
 あいつだ。クルマの若者が外に出ている。ぼくは自転車の向きをかえて押しながらプリウスにもどり
「ストリートビューですか?」とたずねると、やや緊張を走らせながらそうですと答えた。
「ぼくは、ストリートビュー大好きなんだよ」と、思いをうちあける。
「そうなんですか」白いポロシャツを着た、みるからに好青年という面だちの若者から緊張が消えた。

「文句を言われたりするの? ちょっと神経質すぎると思うけどなあ。外国の小説を読むときなんか、舞台が都市にくると、ぼくはたいていストリートビューを見ながら読むんだよ」
「そうですか。行ったことのあるところなんかいいですね」
「むしろ知らないところの方が、想像力がはるかにひろがっていいんだよ。行ったことのないところが大部分だし」もっとうれしそうになった。
「写真で見たカメラはボールみたいに丸かったけれど、これは八角形だね。上向きのはいくつあるの?」
「日本のはみんなこれです。上向きにはひとつだけです」合計9つのレンズがあるわけだ。
「写真とっていい?」とたずねると、またちょっと心配そうになった
「これで撮るし、ナンバーは入れないから大丈夫」と、構えると画面をチラリと見た。
「iPhoneなんですか」
「iPhoneでストリートビューを見ると、ますますリアリティがあっていいよね。はじめて見た時は、ツールが画面に出てこないからやり方がわからなくてね。偶然に画面を縦にしたら見えるし水平にしたら航空写真になるでしょ、飛行機に乗っているみたいだからひどく感動したよ」
「どこか行くときにはいいですね」
「そうそう。実物のまちと見較べながら歩くと分かりやすいよね」

 そのとき、自分の脚に寄りかからせていた自転車がズルズルとすべって横になった。
でも、iPhoneがパシャッタ!という音をたてている最中なのだ、そんなことに構ってはいられない。すると彼は自転車を起こしてくれながら、かっこいい自転車ですねと言う・・・いいやつだ。アレックスモールトンという自転車なんだよと、こんどはこちらが説明する側になった。
ほんとうは、ぼくも入れた記念撮影を撮ってもらいたいと思いながら言い出せない、憧れのスポーツ選手に会った少年のようだった。聞きたいことがいくらでもあるし、向こう側に回って逆光でない写真も撮りたかった、ダッシュボードには何があるのかも見たかったけれど、なんたって初対面だもの、このあたりでありがとうと言って、思いを残しながらふたたび自転車をまたいだ。
いい朝で一日が始まった。

投稿者 玉井一匡 : November 19, 2009 08:05 AM
コメント

Gatta Italianaさん
 たしかに、想像の世界から踏み出したくないときと、実際の空間をつかみたいときが、ぼくにもあります。でも、ヨーロッパの場合は、日本のように変化が激しくないし、まったく知らないまちであることがあるので、GoogleMapsやストリートビューが、想像力のつばさになってくれるように思います。
 フランスでストリートビューがはじめて見られるようになったのは、ツール・ド・フランスのときにレースのコースになっていたところでした。ふつうは都市が多かったのに、いきなりフランスの田舎が見られたので新鮮でした。
 それにしても日本のまちは、悪い方にどんどん変わってゆくことが多いので、ヨーロッパをみると、いつもうらやましく思います。

Posted by: 玉井一匡 : November 20, 2009 11:01 PM

いつもフォローがすてきだなと思っております。
(メルマガを読んでいただいているとのこと、ありがとうございます。)
私自身は、フォローが行き届かない質なのか、ものぐさなせいなのか、
あまりストリートビューは見ないのです。
小説を読むときはなおさら想像の世界だけにはまろうとしてしまいます。
今度、おっしゃるようなストリートビューの活用を
実践してみたいです。

Posted by: Gatta Italiana : November 20, 2009 06:59 PM

Gatta Italianaさん
 遠くからコメントをありがとうございます。
「ガッタ・イタリアーナ」のメールマガジンが届くと、イタリアの日常生活を楽しませていただいたり、羨ましがったりしています。
小説を読むときに限らず外国からいただいたメールやサイトを読むときにも、具体的な場所が書かれているとGoogleMapsをひろげたくなります。そこにストリートビューがあれば、ひときわ想像力と世界がひろがって楽しさが何倍にもなりますね。
だから、できるだけ楽しい気分になるように、Googleは晴れたときに写真を撮るようにしているんでしょうか。このときは快晴でした。

Posted by: 玉井一匡 : November 20, 2009 08:37 AM

ちょっと緊張したり、ホッとしたり、思いがけない現場を楽しませていただきました。
こういう咄嗟の出会いを描かれたのを読むのが好きです。

Posted by: Gatta Italiana : November 19, 2009 10:31 PM
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