February 04, 2010

岩城里江子 Live in Love Garden

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 岩城里江子さんは、これまでアコーディイオン二人という構成のデュオで演奏活動を続けてきたが、この一年ほどはたまにほかの人のライブにゲストとして出るくらいで、自分のライブ活動は休止して曲づくりなどに専念してきた。先日、ソロで再出発するライブを聴きにいった。ほかの聴き手たちも同じだろうが、ぼくは里江さんのアコーディオンの演奏とともに笑顔を見に行きたいと思っていた。

 会場のLoveGardenも、昨年は大きく変わった。ぼくは、数年前のkai-wai散策のエントリーでこの店を知ったのだが、じつをいえば京島の地名さえそのときに初めて知ったのだった。kai-wai散策の写真で、ガーデニングショップというカテゴリーを大きく逸脱するような面構えが衝撃的なくらいかっこよかったのでしばらくして行ってみると、長屋や下町らしい商店街が残る街の中に置かれたこの店はなおさら異彩を放っていたし、それでいてまちと馴染んでいるのだった。
昨年、店の主であるcenさんは、みずからコツコツと手を加えはじめて、すっかりその店を変えた。LOVE GARDENは、ガーデニングの腕とそれにかかわるものを売る店から、ひとが集まる場所になろうとしている。
その中に納まるギリギリいっぱいの30人ほどが、この日このライブに詰めかけた。

 里江さんは、久しぶりのライブとあってはじめひどく緊張していたらしい。だれだってそうだろうが、はじめのウォームアップの数曲は客も里江さんもほぐれなかったけれど、やがて彼女は自身からもぼくたちからも緊張をふき飛ばしてしまった。彼女のアコーディオンの身上は、音楽と笑顔になって彼女からこぼれ出す「生きるよろこび」といったものなのだということを、その時にあらためて感じさせられた。
 この充電期間に客演した昨年の秋もそうだった。ルー・タバキン・トリオのライブの前座・・・なんていってごめんなさい、ほかの言葉がわからないんだ・・・としてソロで演奏したのだが、トリオとセッションをやってみないかと突然に声を掛けられての初めてのジャズだというのに、ルー・タバキン・トリオの三人を相手に堂々と即興でわたりあった、両手いっぱいの笑顔とアコーディオンという楽器で。

 演奏が終わってからは、残った10人ほどが車座になって話がはずんだ。話題はおのずからアコーディオンという楽器にあつまる。ぼくたちはアコーディオンのことを知っているようでいて分からないことがたくさんあることに気づく。
11kgもの重さがあることも知らなかったが、笑顔で演奏している里江さんの両腕と腰は、つねに笑みを絶やさないシンクロナイズドスイミングの選手の水中に隠れた足と同じように、密かな忍耐が支えているのだ。
アコーディオンの一部を外して、その中の仕組も見せてくれた。cenさんは電気仕掛けがあることを予想していたそうだが、そこには見事な機械仕掛けがびっしりと詰め込んであって、もちろんICもコンデンサーもない。かつては人手をつかってフイゴから空気を送り出していたパイプオルガンの、演奏家とふいご吹きのしごとをたったひとりでやってしまうのがアコーディオン奏者なのだ。
 彼女のアコーディオンはコバが使っていたものだそうです。ところで、「ふいご」を漢字で書くと「」なのだと知りました。

 このまちには、東京スカイツリー という巨木が生長している。周りにも、大規模なマンションがあちらこちらに作られている。その代わりに、長屋や細くて親密な路地がどんどんなくなってゆく。その一方で、LOVE GARDENや里江さんのような小さくてもつよい力が、コロッケやちくわの天ぷらや豆腐をつくって売る店、鉢植えの植物、それらを買ってゆくたくさんのひとたちが、巨大なモノでなく人間の生活というタネを撒くことによって、都市を血の通った生き物にしてゆくのだ。

■関連エントリー
Rieko Iwaki ノスタルジー♬/LOVEGARDEN
ブルームーンの夜@ラブガーデン/らくん家
あの兄弟の小さいほうは船に乗って世界を駆け巡った/Across the Street Sounds
アコーディオンソロ@京島
ブルームーン@京島/東京クリップ
ルー タバキン @ WUU/kai-wai散策
ルー・タバキン+岩城里江/MyPlace
■アコーディオンとバンドネオンについて
アコーディオンの構造/アコーディオンの部屋
バンドネオンという楽器

投稿者 玉井一匡 : February 4, 2010 11:37 PM
コメント

fuRuさん
コメントおそくなってごめんなさい。
ありがとうございました。YouTube見ました。
アコーディオンというのは、気持ちいいでは終わらせずに
こころを騒がせるところがあるんだなと思いました。

Posted by: 玉井一匡 : March 5, 2010 02:21 AM

「西陽のメコン」
解禁になりました。
http://af-site.sub.jp/blog/2010/03/post_1131.html

Posted by: fuRu : March 3, 2010 12:15 AM

らくさん
そういうことでしたか。道理でamazonでさがしても、そういうのが見つからないわけですね。
恥ずかしながらミュゼットって言葉を知らなかったのでwikipediaをしらべてみみました。いろんな意味があるんで結局どれなのかわからない。ちびオーボエやちびバグパイプのことでもあるらしい。画像をさがしたらルイ・ヴィトンのショルダーバッグがたくさん出てくる。けれど、きっと音楽の形式のことなんでしょうね。知らなかったおかげで、ほかのいろんなことを知りました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ミュゼット
http://fr.wikipedia.org/wiki/Musette_(instrument)

Posted by: 玉井一匡 : February 9, 2010 08:45 AM

マルゴーのワルツはトリオとソロならあるけれど、ガリアーノ・ポルタルコンビではこの曲やっていないみたいですね。(書き方悪くてすみません)。
ソロの方は、「パリミュゼット」という3枚シリーズのCDの中に入っていて、アコーディオンを始めたばかりの時、夢中で聴きまくった憧れの曲でした。
ちなみにポルタルとのデュオは、いたずらっ子ふたりがノリノリで掛け合ってるみたいでものすごく楽しいのですよ。
こんなデュオがやりたい!というのがSarasaのモチベーションでした。

fuRuさん、きゃー。
メメメメールします。

Posted by: らく : February 8, 2010 09:53 PM

fuRuさん
YouTubeで検索したけれど見つからなかったけれど、そういうことだったのか。

Posted by: 玉井一匡 : February 7, 2010 02:19 PM

らくさん
そうだったんですか。
ガリアーノとミシェル・ポルタルのマルゴーのワルツですね。
ロシアでアコーディオンていうのも、似合いそうですね。新島さんのエントリーに影響されて想像すると、もしかすると教会のパイプオルガンへの密かな思いというのがあったのかなあ。

Posted by: 玉井一匡 : February 7, 2010 02:17 PM

YouTubeに登録した「西陽のメコン」
はやく、らくさんのお許しが出て公開できないものかしら。ちなみに、友だち登録してくれると観ることができると思います。

Posted by: fuRu : February 7, 2010 11:32 AM

二部で弾いた「一生弾き続けたい”マルゴーのワルツ"」はガリアーノの曲なんですよ。ガリアーノ、かっこいいですよねえ。私はミシェル・ポルタル(バンドネオン・サックス)とのデュオが好きです。オシムも弾くのは知りませんでした。タバキントリオのロシア人のべーシストも「家にはアコーディオンがあって小さい頃弾いてたよ、もう全然弾けないけどね」とさらりアップテンポの曲を弾いてくれました・・・汗かきました。
でもあちこちに古いアコーディオンがあってその音色がいろんな人の思い出に関わっていると思うのはなんだか楽しいですね。

Posted by: らく : February 7, 2010 09:47 AM

らくさん
MacBookが入院していたので、なかなかエントリーできなくてごめんなさい。つぎの里江さんがどこにいるかたのしみにしています。
 それにしても、いままでぼくはアコーディオンについて何も知らなかったことを知りました。このあいだ、LOVEGARDENもリンクしている藍Brogに、「ヨー・ヨーマとリシャールガリアーノ」というエントリーがありました。CDジャケットの写真を見たらアコーディオンを抱えている男がいる。この人のことも知らなかった。
「ヨー・ヨーマとリシャールガリアーノ」/藍Blog:http://craftai.com/blog/?p=663
リシャールガリアーノ公式ウェブサイト:http://www.richardgalliano.com/
オシムのことを書いた本に、彼の父はアコーディオンの名手でオシム自身もなかなかうまいんだと書いてありました。バグパイプとも血のつながりがありそうだし、いろいろひろがるんだなあ。

Posted by: 玉井一匡 : February 6, 2010 09:43 PM

じわあっと玉井さんの文章が深いところに沁みてきて、2つのガラス玉のあたりからぶわっと湧き出てくる体内循環システムをただ今まじまじと実感しました。
それは、会場とみなさんのエネルギーが風のように私が抱いている楽器に吸い込まれて音になって出てくるのと、ちょっと似ているかもしれません。
なんてかっこいいこと書きましたが、身上が、『音楽と笑顔になってこぼれ出す「生きるよろこび」』なんて、あまりにすてきすぎて呆然としています。

Posted by: らく : February 6, 2010 09:23 AM

cenさん
スカイツリーが完成したら、それをLoveGardenの役に立てたいですね。
その前にも、これからスカイツリーとともにLoveGardenがどう成長してゆくのか、楽しみにしています。
しかし、毎回、スージーを移動させるというのも大変だなあ。

Posted by: 玉井一匡 : February 5, 2010 06:16 PM

masaさん
masaさんがいらっしゃらなくて、いい写真を残せなかったのは、岩城さんのためには、とても残念でした。ぼくはまだなれないG-11を持っていったけれど、あとで見たらいい表情の写真がなくて、ムービーの中からやっとこいつを取りだしたので、こんなボケボケの写真になってしまいました。
音を出さずに撮れるし腰ダメもできるから、撮り手がよければ、こういうときには役に立つかもしれない。

Posted by: 玉井一匡 : February 5, 2010 06:02 PM

玉井さん、素敵な文章をありがとうございます!
あっ…こういうことだったんだ!と、なにもわからないボクは、やっと納得した次第です(笑)これからもよろしくお願いいたします♬

Posted by: cen : February 5, 2010 04:49 PM

何人集まったか...よりも、どんな気持ちが集まっていたか...が大切なんだということを、あらためて思わせる文ですね。僕は参加できずとても気になっていましたが、このエントリーを読んでいるうちに、その場に居た、31人目の気持ちになれた気がしました...。

Posted by: masa : February 5, 2010 01:26 PM
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