July 11, 2010

菅直人への期待と岡田武史への批判:池澤夏樹と馳星周

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 今朝、というよりも昨日の夜中に、ワールドカップの三位決定戦がおこなわれた。監督の掲げた目標が達成されたら日本がやっていたところだが、ドイツとウルグアイの試合のテレビ放映はどこもやらない。それよりも、今日は参議院選挙の投票日だ。
 先日、ふたりの小説家がそれぞれ一人ずつの人物について書いたエッセイが朝日新聞に掲載されていた。いずれも興味深いだけではなく、ぼくの思うところを書いてくれているのがありがたい。またしても駆け込みだが、投票前にエントリーしておきたい。

 小説家は池澤夏樹と馳星周、それぞれ菅直人と岡田武史について書いたもので、前者は消費税10%を口にしてからマスコミがことごとく批判的になった菅直人について肯定的な側面を評価している。後者は、マスコミがこぞってヒーロー扱いしている岡田武史に批判的だ。
・・・写真をクリックすれば、全文を読むことができます。

 どの新聞も多数と同じ立場に立つのであれば、マスコミというのは、群集心理をそのまま活字にする装置に過ぎない。ここにあげた記事は少数意見だが、すこぶるまっとうな指摘をしている。紙面の一隅において、ひとつの少数意見をもないがしろにはしないことを表明するためのものにすぎないのではなく、まっとうな考えをもつ人もマスコミにいるし、ひとりひとりのなかにまっとうな見方も潜んでいるのだと希望をもちたい。

 沖縄に住む池澤は、沖縄に対する政策の批判を踏まえつつ菅への期待を短い文章で表現している。民主党代表として登場した時にはあれほど持ち上げた菅のことを、消費税の増額を口にしてから支持率という指標の低下をきっかけにマスコミはこぞって否定に転じた。池澤は、消費税の増額という問題を選挙前の時期に口にすることをフェアな態度だとむしろ肯定する。また、「最小不幸の社会」という目標を「久しぶりに質量のある政治家の言葉」であるとして高く評価し、小泉政権のすすめた「自由」は強者の最大幸福を実現し、優位にあるものの立場をますます強化するものとして対比させる。また、首相の座を世襲政治家が継承してきたが、菅が市民運動を出発点としていることも政治の基本であると指摘している。そのとおりではないか。

 一方、馳は、新聞がヒーローとして持ち上げる岡田の、日本代表チームの監督としての能力についての疑問を書いている。監督に奪われていた自信を、幸運の手伝ったカメルーンに対する勝利で監督に奪われ続けた自信を取り戻した選手たちがグループリーグを突破した途端、ふたたび元に戻った。幸運に助けられて達成した結果を過大評価して岡田のしたことを肯定していては、今後の成長はないと指摘する。
 これまで、負けそうになると視線は宙に浮かび、敗戦後のインタビューをすっぽかし、ディフェンスの若いバックアップを一人も育てようとせず、ベスト4を目指すというスローガンを信じないやつは代表に呼ばないと言い放ってきた代表監督。サッカーファンの大多数は、岡田が監督でありながら選手たちはあれだけやれたのだから、オシムが監督だったらどんなサッカーをやっただろうかという思いからはなれられない。それなのに、岡田は「もう一試合やらせてやりたかった」と記者会見で言った。つまり、おれはここまで選手を連れてきてやったと言いたいのだ。この大会の実績のおかげで協会の会長などになることのないように願いたい。
 勝つことで注目が高まった。それを強化に利用するのは結構なことだが、まっとうに評価を下してほしい。しかし、それをできるひとがそういう権力の位置にいるのだろうか。

 谷垣禎一が、ふたたび日本を「いちばん」にすると言うのを聞くと、岡田がベスト4を目標に掲げたのを思い出す。たしかに、かつてある指標からは日本が一番だと言われた。しかし、そのありようがぼくたちに何を残したのか、そして何を目指すべきなのかを考えることは、サッカーの問題よりはるかに深刻だ。

投稿者 玉井一匡 : July 11, 2010 07:11 AM
コメント

shinさん
 「政府のレベルは国民のそれを下回ってきた」と、池澤は書いてくれていますが、われわれ国民のレベルが、それほど高いとは思えないのです。自分自身が世の中を支えているという意識はどうも我々日本人には乏しいように思うのです。子供が親を育てるんだと言ったひとがありましたが、政治家は有権者が育てるものでもあると思うのです。
マスコミのレベルと、読者・視聴者のレベルの関係も同じようなものではないでしょうか。

Posted by: 玉井一匡 : July 17, 2010 08:32 AM

池澤さんと馳さんの変わった視点に興味を持ちました
(馳さんは次回)やはり菅さんには改めて沖縄考え直して欲しいし、ゼロに戻って米軍基地を考え直さないと、誰もやらなくなってしまいそうです
それで地元吉祥寺から出たのだから、政治始めた頃のゴミ拾いを思い出し権力的にならずにいてほしいな...いまはとても嫌な奴にしか見えません

Posted by: shin : July 17, 2010 12:12 AM

加嶋裕吾さま
 じつは、ぼくももうひとつ小沢昭一の記事と三つならべてエントリーしようと、はじめは思ったのでした。しかし、そうすると、ずいぶん長くなってしまいそうだし、菅直人の話は選挙結果がでてからでは気持ちが変わってしまうかもしれないし、岡田武史のことも書いてしまってからワールドカップの決勝戦を見たいと思ったから、まずはふたつを書くことにしました。
小沢昭一のことは、三つの中でもっとも興味深い話だと思っていたことですから、あらためてもうひとつエントリーしますね。
裕吾さんが芸者の置屋の2階で子供時代をお過ごしになったというのを以前にお聞きしたときに、ぼくはとても羨ましくうかがいました。たとえば、幼馴染みの友人にヤクザの親分の息子がいるなんていのもいいなと、思うところもあります。ものごとの善悪を簡単な物差しで決める世界は、薄っぺらで退屈だと思うのです。

Posted by: 玉井一匡 : July 14, 2010 11:20 PM

玉井さん こんにちは。もう一方の話題の相撲について、7月7日の朝日新聞で小沢昭一が「相撲はもともと閉じられた世界のものだった。」として意見を述べています。ここにはその引用があります。 (かいた人の意見はま、そんなものかと思いますが)。私は子供の頃、長野で芸者の置屋の二階に家族で住んだ経験があり、この閉じられた社会というのがわかる気がします。極論を言えば、「悪さ」の味わいを知った最初かも知れません。私はこの小沢昭一の意見には賛成したいと思います。
 また、いくつか思うことがありました。その一つは、マスコミについてですが、マスコミは個人として述べることが無い、ということは、発言に責任をとらないということかと思います。そうすると、述べたことはその後忘れてしまっても、何も問われることがない。発言に継続性が失われている。そのような意見に左右されるのは私は嫌です。
 また、政治と経済ですが、政治の駆け引きと、投機による経済の上り下がりに影響されるのもとっても嫌です。マイケル ムーアが監督したキャピタリズムに1%の富裕層と99%のその他という言葉が出てきますが、ほとんどの人がその99%です。私は常々、このゲームからどのようにして逃れられるかを思っています。
 そして、もう一つは、民主党や、岡田監督のように、いつまで個人もしくは単一のものがが組織を引っ張る制度が続くのだろうか、とも思います。日本の政治で言えば、首相が外交と内政の両方の責任を取るのは既に無理があるのではないでしょうか。皆、本音を言えば、消費税は20%ぐらいにしないと日本はもたないと、思っているのではないかと思います。だけど増税がいやだという考えが素直に繁栄されてしまう。その課題と、沖縄の基地の問題を問いて、どちらかの責任で首相が変わる、これでは政治と経済の双方が中途半端のままですよね。制度疲労がきているのではないでしょうか。
 サッカーでは、やはりひとりの監督でチームが変わる面白さはあると思います。あの、マスコミの変わりようには辟易としましたが、しかし、その前にあのマスコミの攻撃にさらされながら、立場を維持するのも過酷なことですね。その点外国人ならばわからないことも、日本人ではもろに感じますよね。彼の技量はともかく、彼が農業をやりたいと言ったことなどわかる気がします。
 私たちの21世紀は個人がある程度の自由を得た、少なくとも日本では、と思います。さすれば、その個人の自由の上に成り立つ制度、方法論を、『学者』がもっと柔軟に考えてもいいのではないかと思います。マスコミが話題になりますが、社会の基礎となる学者がどうも動いていないように感じます。経済が成長を基軸にした時代は望めないのではないでしょか。社会の成長よりも個人の成長を中心に考えるとでも言ったらいいでしょうか。もっと別のいい方をすれば、99%の大衆の一員である私が、1%の支配層に左右されないで生涯を過せるシステムです。大衆である私が、上に立つ人々の無駄な不安に踊らされないシステムが考えられないでしょうか。そのように「最小不幸」の問題は政治だけで解決するものではないのではないかとも思いはじめています。
 その点、田舎で自給をある程度目指すのも一つかとと考えますが、都市にお住まいの方々には適さない方法論ですね。

Posted by: 加嶋裕吾 : July 14, 2010 08:17 AM

えっ栗さん
 きのうは、予想されたこととはいえ、民主党敗北の話題が盛りだくさんなので、あまりニュースを見たくありませんでした。しかし、捨てる神あれば拾う神あり、いや拾うタコでしょうか、ぼくの応援していたスペインがワールドカップで優勝したのを心の支えにしました。午前三時からの試合は、後半の途中から生で見たので、夕方にはずいぶん眠くなってしまいました。
 

Posted by: 玉井一匡 : July 13, 2010 12:07 PM

選挙後になりましたが、興味深く拝見しました。池澤夏樹さんは、元々好きな作家の一人で、著書も何冊かですが揃えているので、玉井さんのブログを開いた瞬間、おっ!と思いました。

そして玉井さんが書かれている少数意見の取り上げ方と、マスコミや一人一人のまっとうさの考察を読んだ後に記事に目を通せたのが、良かった気がします。
マスコミと群集は、お互いに煽ったり、煽られたりして、大きな流れをつくることもありますが、こうして違う意見、何となく皆と同じではない見解、別の角度からの視点が、きちんと取り上げ続けられる事が大事だなと、改めて感じる機会になりました!

Posted by: えっ栗 : July 11, 2010 09:59 PM
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