August 01, 2010

LA VIE EN ROSE

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 LA VIE EN ROSEと名付けられたクレープは、渋谷に新しくできたクレープリー ティ・ロランド(Creperie Ti Rolande)の看板メニューだ。なるほど・・・バラの花に見立てたんだね。
 と思いながら、ためらいつつ思い切ってナイフを入れ、フォークですくって口にはこぶと、かすかにバラの香りを漂わせる「花びら」に包まれているのは苺のシャーベットで、透けて見えたのは生のブルーベリー。フランス人の若いシェフ、ジュリアンの力作だ。

 このクレープは特別に華やかだが、他のクレープやガレットはむしろ地味で素朴だ。パリのモンパルナスにはクレープ屋が多いそうだが、中でも一番の老舗 Ti Jos(ティジョス)の女主人ロランドさん直伝のスタイルは円形を二回ふたつ折りにして扇形にたたむ伝統的なやり方だから、中身が見えにくい質実剛健なのだ。両面を焼かなきゃだめよという。
 この店の名の「Rolande」は、彼女の名前からとったのは言うまでもないが、「Ti」はブルターニュ語の「・・・のうちへ」という意味の前置詞で、フランス語でレストランの名前などによく使われる「chez」と同じだ。こういう店名のつけかたは他の国にあるとはきいたことがない。おとずれるひとの動き、むかえるひとの気持ちが思い浮かぶようで、ぼくはとても好きだ。彼女は蕎麦粉選びの相談にも乗ってくれたし、ガレットとクレープはもとよりブルターニュ料理のつくりかたまで教え、開店前には夫妻で日本を訪れ指導してくれた。店の名をTi Rolandeとしたのは、彼女への感謝のしるしなのだ。だから、店の中にはTi Josとそこで仕事をする彼女のモノクロの写真がたくさんある。先日は、日本旅行にきたTi Josの常連がわざわざ訪ねてくれた。

 クレープはブルターニュの地方料理だから、ブルターニュ地方行きの列車が出るモンパルナス駅のあたりにはクレープ屋が多いのだそうだ。クレープは小麦粉を材料にして、デザートとして食べる甘いやつで、蕎麦粉をつかってチーズやハム、卵などを間にいれて焼くのがガレットだ、なんていいながら、ぼくは数ヶ月前にガレットや本格的なクレープを初めて食べたばかりの駆け出しだ。ロランド流のガレットは両面を焼くので、端が薄いクッキーのようにサクッとしているのがいい、なんてことを今では思うようになった。

 この店はあるじの服部さんこそ日本人だが、奥さんのイリーナはロシア人、クレープを焼くジャン・ポールとシェフのジュリアンはフランス人。バングラデシュから来たもうひとりの料理人のジャヒルルは、なんでもうまいものを作ってみせる。ルー・タバキンが、「ぼくたちは、みんな国籍が違うからインターナショナルトリオなんだ」と言うように、ここの人たちはインターナショナルスタッフなのだ。

■関連サイト
クレープリー ティ・ロランドの所在地:東京都渋谷区松涛1-28-11/Googleマップ
Creperie Ti Rorande 公式ホームページ(まだ、口上と地図だけですが)
「Irish meets Latinというライブ」/MyPlace

 

投稿者 玉井一匡 : August 1, 2010 05:05 AM
コメント

nOzさん
 そうおっしゃってくださると厨房長のやれやれの笑顔を想像して、なるほどそういうものかもしれないなと思い、いささか安心します。ありがとうございます。

Googleマップで、さっそくギャラリエ アンドウを探しました。
駐車場をはさんでいるとはいえ、本当の向かいにあるんですね。こんど行ったら、のぞいてみます。いろいろとご縁のネットワークが拡がるのがおもしろいなあ。

ぼくは、新国立美術館でやっていたときにルーシー・リー展をみそこなったので、益子でやる時には殻々工房とルーシー・リーをセットにしていくぞと思っていたのに、それも26日で終わってしまい行き損ないました。

Posted by: 玉井一匡 : September 30, 2010 04:26 PM

ご存知の通りうちの厨房長は日本人ですが、ラストオーダーの時間になると同時に、ヤッターー!とばかりにエプロンを外し階段を駆け上がって行きます。その嬉しそうな足音を聞くと、やるか、と、なってもらおうとは思えないもので、フランス人の彼にしても無理されなくて良かった、と思っています。

偶然にも、店の目の前にあるギャラリエ・アンドウで、友人が何度が個展をしておりまして、また今度、それに合わせてゆっくりお邪魔しようと思っています。楽しみです♪

Posted by: nOz : September 29, 2010 11:31 PM

iGaさん それに、野沢さん
 野沢さんと隣あわせとは、なんという偶然でしょう!

 昨夜、Ti Rolandeのオーナーの服部さんからiPhoneにメールが届きました。21:30過ぎに、玉井さんに紹介されたという方が、キース・ジャレットのコンサートの帰りに4人でいらっしゃったけれど、火を落としてしまったあとだったので、残念ながらお断りしなければならなかったということでした。こういうときにフランス人たちは、「でも、やるか」ってことにはなってくれないところが難しいと嘆いていました。
 誰だろうかと気になっていたのですが、可能性が高いのは、iGaさんかNiijimaさんだろうと思っていました。まさか野沢さんまで出くわして一緒だとは驚きましたが、ガレットを召し上がっていただけなかったのが残念です。
またの機会にお寄りください。

Posted by: 玉井一匡 : September 25, 2010 04:06 PM

一昨日、キース・ジャレット・トリオの公演会場で那須の野澤さん夫婦に遭遇、なんと隣の席。オーチャードホールの講演終了後に、近くなので時間的に閉店してるかもしれないけど駄目元で寄ってみましたが、やはり9時半のラストオーダーに間に合わず、厨房も火を落とした後で、無念の涙。アンコール二曲を聴かなければ...でしたが...ガレットは次の機会に...パンフレットを頂き、写真のパテも美味しそう。

Posted by: iGa : September 25, 2010 10:04 AM

Niijimaさん
このひとも2002年でしたか。
なるほど、いいやつそうですね。Niijimaさんは、この頃からアイリッシュにはまっていらしたんですか。
自由に移動してどこへでもいくという性質、人なつこいという性質のおかげで、ケルト文化はひろがったんでしょうか。アイルランドのサッカーを見ても、IRAのイギリスに対する戦いかたを見ても、最後の最後まで頑張るというしぶとさはいうまでもないでしょうが。
アンリとフランスチームは、そういうアイルランドを相手に「手」をつかってまでワールドカップに行ったから、ケルトの祟りであんなことになっちゃったんですね。

Posted by: 玉井一匡 : August 7, 2010 04:03 AM

何度もすみません。
オレンジとグリーンの人、2002年の丸の内にて。
http://across.mniijima.com/img/hst_cl09m.jpg
(写真のみ)

この写真の少年は大英帝国からの入植者の子孫でしょうが(アイルランド本国からやってきたと言っていました)、素朴で人なつこい性格が多いように思われます。

Posted by: M.Niijima : August 7, 2010 01:15 AM

iGaさん
 2002日韓ワールドカップの日本での第一戦は、新潟を会場としてあのカメルーンとアイルランドの試合でした。ちょうどぼくは新潟にいたんだったか、それに合わせて行ったのかは憶えていませんが、チケットは持っていなかったのでとにかくスタジアムの近くまで行きました。すると、オレンジとグリーンの服装の、ボストンから来たという団体のおじさんたちが沢山いたのにおどろきました。そういえばボストンのバスケットボールのチームはセルティックというんだったと気づいて、ケルトはあちらこちらに散らばっていて、しかも求心力が強いんだなと感心しました。
あの、素朴でひとのよさそうなオッさんたちとイモのパンケーキが、どこか通じるところがあるように、僕には感じられました。

 この店も、素朴なクレープやガレットがむしろ主なので、そのうち試し食いに行ってあげてください。

Posted by: 玉井一匡 : August 6, 2010 10:18 PM

そういえば、昔々、ジャガイモをすり下ろして作るパンケーキを家庭画報か何かの記事で見たことがありました。こうして見ると、ハッシュドポテトとパンケーキの間に幾つものバリエーションがあるみたいですね。
洗練されたLA VIE EN ROSEを作るのとてもは無理だけど、冷凍庫に蕎麦粉が残っているので、その蕎麦粉をつなぎにして、僕もワイルドなポテトのパンケーキを作ってみよう。

Posted by: iGa : August 6, 2010 03:11 PM

Niijimaさん
 今度の日曜にはボクスティをつくってみようと、楽しみにしています。
Wikipediaを見ました。ワールドカップには、イギリスは4チームに分かれて参加しますが、イングランド以外はすべてケルトの領域であることを、じつはこれまで意識したことがありませんでした。 
ケルト人たちが住み、いまも文化を保つところが6つもあって、アイルランドを別にしてもひとつの国家ができるほどですね。
国家の領域と文化の領域はズレがあるものですが、それが戦争というかたちをとらずに多重的に共存することは、おそらく平和のカギなのかもしれない。

Posted by: 玉井一匡 : August 6, 2010 08:44 AM

すると玉井さんはあの日、松涛のブルターニュから、鍋島の敷地の小流れを下り、宇田川を経て、渋谷川のほとりにあるアイルランド(Irish Night)まで足を延ばしたのですね。

Boxtyがwikiのページにあるとは! 画像集も見たのですが、パンケーキ(ハンバーグ?)状のものは朝食でよく食べました。Irish Breakfast。
wikiのページにある写真のようなオムレツ風、ガレット風のものはBoxty専門のレストランでいただいたのですが、中味は肉や野菜を煮込んだものや、私がえらんだものは白味魚を調理したもので、あっさりとして美味でございました。(あまりモチモチ感はなかったような?=皮の部分)

ケルトの地へ思いを馳せていましたら "Celtic fringe"という言葉を思い出しました。
wikiなら、こちらのページで言及されています。
「Wiki: Celtic nations」
http://en.wikipedia.org/wiki/Celtic_nations

Posted by: M.Niijima : August 5, 2010 11:08 PM

Niijimaさん
 追加コメントです
ボクスティをWikipediaで調べてみました。なるほど、ジャガイモでつくったパンケーキという感じなんですね。Wikipediaの写真では、ビーフストロガノフみたいなものをくるんであるようで、なかなかうまそう。ジャガイモのなかのグルテンでモッチリした感じになるんでしょうね。ただの円形のポテトピザみたいなモノは、たまに僕もつくりますが、こうやると立派な一品になりますね。
*boxty/Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Boxty
*boxtyの写真   http://www.google.co.jp/imglanding?q=Boxty&imgurl=http://www.countrymarketsniltd.com/uploads/2470ab30-5294-4b7c-831e-47b6e0367e8c/boxty.jpg&imgrefurl=http://www.countrymarketsniltd.com/%3Ftabid%3D1110%26tabindex%3D23&h=293&w=397&sz=25&tbnid=5kQdDX4te_3_mM:&tbnh=92&tbnw=124&prev=/images%3Fq%3DBoxty&usg=__J2OeQWWq355iaJgmIyhFrNECPU8=&sa=X&ei=kYtZTJP0KsixccX-5YAJ&ved=0CCkQ9QEwAw&start=0#tbnid=5kQdDX4te_3_mM&start=0

Posted by: 玉井一匡 : August 5, 2010 12:55 AM

Niijimaさん
 どうもお騒がせしましたが、無事に回復しました。
ブルターニュがケルト人の住むところだとは、この店のことで初めて知りました。Ti Josの地下は、バグパイプの名手でもあるロランドさんのご主人が営むケルトバーで、夜になるとブルターニュ出身の人たちがフィドルやバグパイプを手にしてやってきては、みんなで演奏して楽しむんだそうです。
 スンダランドカフェで「Irish meets Latin」のライブにちょっと遅れたのは、この店で打合せをしていたからでした。

Posted by: 玉井一匡 : August 4, 2010 11:18 PM

サーバー内のファイル類が消えなくてよかったですね。
さて、このエントリーでクレープ、ガレットらがブルターニュを経てきていることがよく解りました。
以前ダブリンでボクスティ(Boxty)という芋からつくったガレット風のものを食しました。彼の地の土壌はあまり肥えておらず、小麦類よりも芋の栽培くらいしか(多くは)向いていなかった歴史があってのことだそうです。そのアイルランドとブルターニュは共にケルトの人々が住んでいたヨーロッパの辺境ということで文化が似通っているようですね。

Posted by: M.Niijima : August 4, 2010 10:45 PM
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