August 17, 2010

ワイナリーのしあわせな猫たち

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 ぼくは犬と暮らしたことは多いけれどネコを飼ったことはない。だからネコの生態をあまりよく知らないので、かれらの行動の理由と意味について勝手に想像をめぐらすことができる。
このネコたちは、ぼくがそばを通ってもカメラを向けても、いっこうに気にかけない。すこぶる自由に気ままに、暑い夏を生きているようで、ひんやりとしたタイルの上に爆睡してるやつ、木の枝に下げてもらった手製のネットベッドの上でチェシャ猫を気取って人間を見下ろしているやつ。以前にエントリーしたラオスのホテルにいた犬も、暑さをかわしながらしあわせそうに生きているのが、とても魅力的だったけれど、このネコたちはあの犬とはまた別の自由を生きて人間のそばにいながら超然としている。かなり汚れているから野良ネコと飼いネコと小型野生猛獣のあいだにいるようでかっこいい。
 ここにたくさんのネコがいるのはわけがある・・・と、ぼくは思う。かれらの住んでいるところは「カーブドッチ」というワイナリーなのだ。おそらく、ワイナリーにはネズミが住みたがる、もちろんネズミに住んでもらいたくはない。そこで、かれらの出番になったにちがいない。それに、葡萄は鳥たちの食欲をそそるから、彼らに睨みを利かせてもらう必要もあるだろう。

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 左上の写真の熟睡しているネコの背後には、丸い穴のあいた箱がならんでいる。ネコの巣箱なのだ。合板の箱の中に白い発泡スチロールの箱が入っている。というよりも発泡スチロールの箱をコンパネでくるんで上に鉄板を張ったというべきかもしれない。冬の寒さをしのぐための家なのだ。冬の間、猫たちはこの箱の中で孤独をまもるのだろうか、それともだれかをさそってあたため合うのだろうか。

 このワイナリーは、できてからまだ十数年にすぎないが、鹿児島出身の落さんというひとが日本中をさがしまわって、ここを葡萄とワインをつくるのに一番と見込んだという話を聞いてから十年以上経った。だからカーブドッチ=CAVE D'OCCIは、「落のワイン蔵」というわけだ。何もなかったところに葡萄を育てることからはじめてワインをつくるなどという時間のかかることをよく踏み切ったものだ。はじめに知ったときにはワイン貯蔵庫の他にレストランがひとつあるだけだった。
そのころからあったヴィノクラブというのがいまも続けられていて、10,000円で葡萄の苗木一本のオーナーになると10年のあいだ毎年一本ずつワインをくれる。
 すこしずつ木造の建物を増やしてゆき、いまでは、フランス、ドイツ、イタリア料理などを食べさせるレストラン、小さな音楽ホール、パンとケーキの店、ソーセージ・ハム工場、もちろんワインの売店などに加えて温泉もできた今、小さな村のようになった。どの建物も、とてもよくできている。建物の間から山が見えるようになって、かえって山を印象的に大きく見せて引きたてるのだ。

 はじめから小学生未満の子供はお断りと言ってしまったし、VINESPAと名づけられた温泉は女湯を優遇して面積も広く女性専用のサービスが多い。その半面で、ワイン蔵の見学も自由にできるし芝生も立ち入り禁止が少ない。開くところ閉じるところの勇気ある思い切りも効果を生んだのだろう。日本のこういうところには珍しいことだが、建物が古くなり植物も馴染んできて時とともに村はますますよくなった。念のために付け加えておくけれど、ここにぼくは客としてたまに訪れることと、ヴィノクラブの会員として(それも、10年が終わったのが一昨年だった)以外の関わりはない。

 あの猫たちがいることも、この村の奥行きを深くすることに役だっている。ぼくは子供たちが好きだし、猫をかわいがったこともほとんどないが、子供がいないこと猫がいることによってつくりだされるまちのよさもあるのだ。

投稿者 玉井一匡 : August 17, 2010 11:00 PM
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