September 12, 2010

LADY BY MAPPLETHORPE:メイプルソープとリサ・ライオン

Mapplethorpe1S.jpgClick to PopuP  LADY BY MAPPLETHORPE/JICC出版局/1992年

「もしよかったら、かえりがけにメイプルソープの写真集をお届けしようかと思うんですが」
Niijimaさんが電話をくださった。
kai-wai散策のコメントで「1ページなしでもよろしければ、今度お持ちしましょう。masaさんと玉井さんで、是非(妖しい)本を回し読みください。」と書いてくださった約束を果たすためにわざわざ届けてくださるというのだ。おそくまでいますから、お持ちしていますと答えたのはいうまでもない。

 ひと月ほど前のこと、kai-wai散策で「二丁目の古書店」というエントリーがあった。写真は新宿二丁目の表通りにある古本屋だ。そこにNiijimaさんのこんなコメントがはじめに書かれた。
「以前、こちらでロバート・メイプルソープが女性ボディビルダーを撮った写真集を買ったことがございます。お店の新宿通りに面している側の右端のショウウインドウ(?)に『訳ありのため激安』と書かれた札とともに飾って(? 置いて)あったのでした。『訳』は1ページ引き千切られていた箇所があったのでした。」

 masaさんと女性ボディビルダーとメイプルソープそれにNiijimaさんが新宿二丁目にある古本屋で一堂に会したのがおもしろいし、なくなっていたというのはどんなページなのか気になって図書館のサイトで検索してみたがこの本はないようだと、ぼくはコメントに書いた。
「1ページなしでもよろしければ、今度お持ちしましょう。」とNiijimaさんがコメントに書いてくださったのだった。

Mapplethorpe2S.jpgClick to PopuP
 問題のページのコピーをとったものが、1ページ目にはさんであった。Niijimaさんが図書館から同じ本を借りて光沢紙にプリントしてくださったのだ。リサ・ライオンのヌードなんだろうと思っていたが、着衣のリサ・ライオンとミック・ジャガーのような風体のメイプルソープが並んでいる。これを持って行った人物は、メイプルソープの撮った写真よりメイプルソープを撮った写真の方に興味があったのだろう。メイプルソープの写真の下には「パティ・スミスに ロバート・メイプルソープ」とある。
 奥付によれば、写真と文章の著作権が1983年とあるから原書 Lady Lisa Lyonから30年、一回目の日本語版は1984年、この二回目の日本語版「LADY BY MAPPLETHORPE」の1992年2月初版から、いまでは20年経った。この間にゲイに対する世の中の意識はずいぶん変わった。日本の選挙にレズを公言して立候補する人がいても取り立てて騒がれることもない。30年前はボディビルの世界チャンピオンだと思ったリサのような肉体も、いまではときどき日本のまちで見かけるようになった。マドンナなど皮下脂肪をしぼっているのだろう、むしろリサよりも筋肉が際だつ。男のボディビルダーより、ぼくは筋肉質の女のひと方に好感を感じるが、それは、男が「男らしさ」をさらに強化しようとしているのに対して女は「女らしさ」に反逆しているからなのだろう。

 この写真集のリサ・ライオンとメイプルソープは、彼女が女であることを消そうとしない。みずからの中に、生物的に女であることとジェンダーとしての女への反逆の両者を重ねているようだ。反逆する筋肉を、女の皮膚で包み込んでいるのだ。さらにそれをLadyの衣服で包んだり暴力的な衣装で梱包したりする。なにごとであれ、対比的な属性あるいは補完的なものごとを共存させながら美しさをつくりだすことは容易なことではないが、重層が世界を豊かなものにする。ゲイの男たちが繊細だとか、心づかいが行きとどいているとか言われるのも、そこに理由があるのかもしれない。

 Niijimaさんは、この本の印刷はあまりよくないが編集がいいとkai-wai散策のコメントに書いていらっしゃる。たしかに、この本は写真そのものより編集あるいは構成で勝負することで、お金をかけなくてもおもしろい本になったので入手しやすくなっている。メイプルソープの写真のシャープなモノクロームは、彼自身の ROBERT MAPPLETHORPE FOUNDATIONのサイトのポートフォリオで見られる。
ところで、カタカナで「メープルソープ」「リサ・ライオン」と書かれているのを見て、かつて僕は「MAPLE SOAP」かと思っていたし、つい先日まで「LISA LION」だと思っていました。

■関連エントリー:二丁目の古書店/kai-wai散策

投稿者 玉井一匡 : September 12, 2010 01:25 PM
コメント

おっしーさん、はじめまして
 オオスミが書いたのかな、などと思ってクリックしたら、「2馬力・ボート・真空管アンプ」が開きました。大漁のビデオも見ました。36cmのアマダイの一夜干しとは、うらやましいかぎりです。釣り人ならではの贅沢ですね。
 「二丁目の古書店」/kai-wai散策のmasaさんもコメントをくださったNiijimaさんも、ブログで仲良しになった友人です。おもいがけない世界に拡がってゆくのが、ブログの楽しさのひとつですね。

Posted by: 玉井一匡 : November 4, 2011 12:25 PM

 はじめまして。
 本文、書き込み 等、格調高く、ナンカ、すごいっすネ。
 表紙に2通りあるので、不思議でしたが、第一刷と2刷ということみたいですね。ネットで買ってみようかなと思って、検索してみましたが、とても、参考になりました。

Posted by: おっしー : November 3, 2011 07:51 PM

Niijimaさんありがとうございます。
 この写真は時間をかけて撮ったものだとどこかに書かれていましたから、写真家自身あるいはリサ・ライオン自身さえ、互いにアイディアをぶつけあい、アイデンティティを発見し作り上げていった過程なのでしょうか。もしかすると、時間軸にそって並べてあるのかもしれない。

 ところで、「The Internet Surname Database」なんていうサイトがあるんですね。知りませんでした。とくにアメリカ人にとっては自分たちのルーツがどこにあるか、知りたいと思う人がおおいでしょうね。
Mapplethorpeというのはメープルソープじゃなくてマップルソープって発音するのかもしれないと思っていましたが、Katherine Maplethorpというひとがいたと書かれていますから、メイプルソープでいいわけですね。それに、出自はオランダあたりなのかなと、なんとなく思っていましたが、イングランドだったんですか。

Posted by: 玉井一匡 : September 14, 2010 03:33 PM

玉井さん、
以前所有した誰か(ではないかも知れませんが)によって、最初のページをひきちぎられ、新宿2丁目の古書店で傷物として売られていたこの本が、2010年にブログというパーソナル・コミュニティ・メディアで話題になるとは、元の所有者は想像だにもしなかったでしょうね。

ところで、この本はリサ・ライオンがリサ・ライオンであるところの、彼女のアイデンティティみたいなものがページを捲るにつれて見えてくるように思えていたのですが、玉井さんが書かれました、
> なにごとであれ、対比的な属性あるいは補完的なものごとを共存させながら美しさをつくりだすことは容易なことではないが、重層が世界を豊かなものにする。
という一文にはなるほどと唸らされました。

ちなみに"Mapplethorpe"という姓は、英国の一地方、Lincolnに出自があるそうで、「Malberts outlying farm」を意味し、その"farm"がデンマーク古語の"torp"に置き換わっている。史上最初の記録は"Malbertorp"として現れた(11世紀)とあります(下のURLのサイトより)。
http://www.surnamedb.com/Surname/Mapplethorpe

Posted by: M.Niijima : September 14, 2010 01:18 PM
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?