July 18, 2011

小出裕章氏の講演とインタビュー:原発とは何か+福島原発に何が起きたか、これからどうなるのか

KoideLecture.jpg←原発についての講演(YouTube)KoideInterview.jpg   福島原発のインタビュー(USTREAM)→
*これは4月21日にエントリーしたものですが、新たなエントリーをした場合にはこのエントリーの日付を変えて、当分のあいだはこれが二番目になるようにします。
 原子力発電がどういうものであるかを知るには、小出さんによるこの講演とインタビューにまさるものは他にないだろうと考えるからです。
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 原子力発電とはどういうものかについての講演と福島第一原発の事故についてのインタビューだ。それぞれが1時間をこえる長さだが、これを見れば、小出氏はぼくたちが原発についていだく疑問の大部分を解きほぐし、原発とそれがもたらすものの全体像をぼくたちの目の前に示してくれる。とくに、これまで原発は使わざるをえないのだと考えている方は、ぜひお読みください。

 講演は3月21日山口県柳井市で行われた。福島の事故については冒頭にふれるだけで、チェルノブイリや東海村の事故の被害の大きさと深刻さをふまえて原子力発電そのものについて、すこぶる分かりやすく説明する。講演会場の柳井市は近くに上関原発が計画されているので、聴き手の反応もいいのだろう。小出氏はおしつけがましさや大袈裟なもの言いがなく理路整然と説明するから、ことばは自然に吸収されて聴き手の深いところに届けられる。

 岩上安身氏によるインタビューは4月10日、福島第一原発の事故がどのような経過を経て、いまどういう状態にあるのか、これからどうなるのか、それにどう対処すべきなのかを訊ねる。われわれの知りたいと思っていることを岩上氏は質問してくれる。しめくくりに、そもそも原発なしでわれわれはやっていけるのだろうかという疑問に対して、「計画停電」などしなくても発電量は足りることを具体的に数値をあげて説明する。話の合間に何度となく小出氏がつくため息の深さが事態の深刻さを感じさせ、政治家の集まりで話をする気持ちはあるかと訊ねられ「政治家に話しても無駄です」と返す。その表情は、政治家にはいくら話をしても何もしてくれないという経験が繰り返されたであろうことをものがたる。

 かつて、NATOの空爆にさらされるサラエボ市民の状況が、インターネットを通じてじかに世界に伝えられ、爆撃される側の思いをだれもが共有して空爆の停止への力になった。また、数ヶ月前には、北アフリカの諸国でFacebookによって市民が動き始め、YouTubeで政府側の振舞いが映像として伝えられ市民を鼓舞して長期独裁政権を倒すまでになった。今回の震災と津波の被害を受けた日本に、思いがけないほどの援助が送られたが、それほどひとびとを動かしたのも津波の猛威をまざまざと示したYouTubeだったにちがいない。
 そしていま、小出氏の話でぼくたちは原発撤廃に希望を持つことができた。もしそれが実現できれば、ひとことひとことに込められた細かい思いやニュアンスを感じ取れる映像をとどけられることでYouTubeとUSTREAMのもうひとつの可能性を示すだろう。

Kakusarerugenshiryoku.jpg 小出氏について、wikipediaではつぎのように説明している。
「小出裕章(こいで ひろあき、1949年8月- )は、日本の工学者(原子力工学)。京都大学原子炉実験所助教。これからは石油・石炭でなく原子力の時代、と考えて原子力工学を志したが、現代の原子力工学における放射線被害に鑑み、途中から原子力発電をやめたほうがいいと思うようになり、以来一貫して"原子力をやめることに役に立つ研究"をおこなっている。」
 助教という言葉を、ぼくはこの記述で初めて見たのでやはりwikipediaで調べてみると、ぼくたちのころには助手と言った立場なのだと知った。
 ぼくたちが学生のころに、公害を研究し問題を指摘していた宇井純氏は東大ではずっと都市工学科助手のままだったし、薬害を追及した高橋晄正氏は、東大医学部の講師にとどまった。
 かつて、多くの研究者や学生にとっては大学の独立ということが重要な倫理であり「産学協同」は否定的な言葉として受けとられた時代でさえ、宇井氏や高橋氏のように産業の向かう方向に異議を唱えれば冷遇されたのだから、官僚や産業界の興味をひく研究に研究費が割り振られるであろう現在の学界では、小出氏のような流れに逆らう研究者がいかにすぐれていようと、ひどく冷遇されることは想像に難くない。それだけに、小出氏のことばが聞くもののなかに深く染みこむのだろう。
 講演でも言及される最新の著書「隠される原子力・核の真実」をさっそく探したが、まだ、あるいはもう本屋にはなくて、amazonでも5月1日入荷だという。

■小出裕章氏の講演とインタビュー(上の写真をクリックしても開きます)
小出裕章氏の講演/山口県柳井市/YouTube
岩上安身氏による小出氏のインタビュー/福島第一原発事故について/USTREAM

■上関原発について
上関原子力発電所/wikipedia
上関(かみのせき)原発予定地は、こんなところだ/山口県上関町四代田ノ浦/Googleマップ
 GoogleマップやGoogleEarthで計画地の現状を見ると、ここがいかに美しいところであるか、いいかえれば、失われるものの大きさがよくわかる。

■二酸化炭素温暖化原因説に関するエントリー/MyPlace
 炭素化合物を燃やしてできる二酸化炭素で地球温暖化が進んでいるとする説を、電力会社は原発の正当性の根拠にして、原発による電気はクリーンエネルギーだと主張してきた。しかし、この説には重大な欠陥があり、原因は別にあり。まちがった対策がなされていると指摘する説が以前からある。
 以前にエントリーした以下の三冊は、この問題を指摘している。
「不都合な真実」と「恐怖の存在」2007年1月30日
二酸化炭素温暖化説の崩壊2010年7月27日
正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために2010年11月13日

■関連エントリー
「朽ちていった命」/MyPlace

投稿者 玉井一匡 : July 18, 2011 11:59 PM
コメント

iGaさん
 ベトナムまで外務大臣が出向いて原発の営業活動をしていたことを
むろん、自身も原発の輸出を日本の重要な軸のひとつにしようとしたことをきちんと自己批判して謝った上で
ベトナムにも自然エネルギーを導入しようじゃないかと呼びかけるような人物であってほしい。
菅直人には・・・というより日本国民の代表たる首相の座につく人物には。
つまり、代わってくれるなら、そういう人に代わってほしいと思います。

奇しくも、3月11日の午前にこの法案が閣議で通ったのだと
孫正義が、22日夜の記者会見で言っていました。
その前日、彼は21日に自然エネルギー財団をつくることを発表し
この会見では太陽光発電の可能性をプレゼンテーションして呼びかけました。
原発をビジネスチャンスにするより、自然エネルギーに再生のチャンスを託す方が間違いなく正しい
孫のことばに、ぼくはかなり感動しました。

Posted by: 玉井一匡 : April 24, 2011 02:18 AM

民主党のマニフェストにあった「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」が奇しくも3/11に閣議を通り第177回通常国会に提出すると云うことですから、東電マフィア等の抵抗勢力に屈しなければ代替エネルギーへの活路となるかも...少しでも希望は持ちたいですね。
http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html

Posted by: iGa : April 23, 2011 07:26 PM

iGaさん
 東京新聞は、原発でもやはり頑張ってるんですね。うちも東京新聞に代えようと思っていたら、カミさんがポカリスエット1L*1ダースという餌につられて1年分契約してしまいました。
 朝日では、小出氏の名前さえ見たことがありません。自分自身の責任でものごとを判断するのがこわいから、「公正な」立場の御用学者の意見や情報を選ぶのでしょう。「スリーマイル島以後は、原子力をやろうという優秀な人材がなくなった」と言うひとがいますが、そのとおりなんでしょうね。
 大手メディアがいまさら方向転換とは、これまで実情を知らなかったのだとすれば無知だし、知っていたがこれから意見をを変えるというのであれば、わけを聞きたいですね。

Posted by: 玉井一匡 : April 23, 2011 04:59 PM

小出裕章氏は東京新聞の特集記事と岩上安身氏のインタビューは見てましたが、この柳井市の講演は初めて見ました。(AppleTV経由のYouTubeを居間のTVで晩飯を食べながら...)聴衆の質問に対して『それは解らない...』と答えるところに誠意を感じました。それにしても一般の人は問題意識のある人でさえも、答え(正解)を求めすぎますね。何かに身を委ねて安心したいのでしょうが、そこに情報操作のつけ入る隙があるのでしょう。
そう云えば、先週土曜日のTBS報道特集で小中高向けの原発のプロパガンダ教育の実態をを取上げていましたが、副教科書やDVD等が電事連から無償で配布されている等、洗脳教育は北朝鮮に匹敵する内容ですね。TBS報道特集は金平茂紀が現場に戻ってから...まともになりつつありますが...圧力で潰されないことを...願いますです。TBSと同系列の毎日も原発批判にシフトしつつあるようですし...メディアが変わることを祈りたい気持ちです。

まぁ...某宗教団体の組織票を得て有権者の24%の信任で辛うじて四選を果たした都知事によれば原発に反対する人は『訳の分からぬおかしな連中』となりますが、原発に反対するのは地球に生きる人としての最低限のモラルですね。

Posted by: iGa : April 23, 2011 10:58 AM

加島裕吾さま

コメントありがとうございます。
小出氏の話は具体的であり話し方も冷静で、とてもよく伝わりますね。
ぼくも、これを見て全体像を実感として把握することができました。
すると
こういう巨大な危険をなくすためには代わりのエネルギーをどうするべきなのか
我々はどのように生活をするべきか
原発をどうすべきなのか
だれもが本気で考えられるようになるだろうと思います。

Posted by: 玉井一匡 : April 22, 2011 11:03 AM

玉井さん とんだ間抜けでした。小出氏のインタビューを見て福島及び、原発の現状が今頃分かりました。以前に、六ヶ所村ラプソディーを見た時も、再処理にばかり目が行き、そこに大量の使用済み核燃料があることを分かっていましたが、その意味するところがわかりませんでした。私たちは超大型核爆弾を50基以上持ち、さらにはもっと大量のものを六ヶ所村に保存しなければいけない宿命を持ってしまっているのですね。都市の電力の不足をうれいましたが、その必要もないことがわかりました。ましてや、化石燃料の枯渇という名目で作られたはずの原子力発電が、私たちが反対していた原子力空母や潜水艦よりもはるかに強大なものだったのも今頃気がつきました。バブルからのんびりとしていた間に大変な問題が残ってしまいました。これは本気で取り組まなくてはと思いました。今回のインタビューを載せてくさってありがとうございます。目が覚めました。このように現状を具体的に提示されたものは多くの人に見てもらいたいものです。福島の事故のこのような全体像までは知らない人が多くいるのではないかと思います。
 そして、今回の事故の最前線で事故の拡大を防ぐ為に身を挺している方々にはほんとうに申し訳なく思います。私には何が出来るのでしょう。それこそそれらの方が将来起こるべき障害に対しても、私たちで何か出来ないかとも思いました。

Posted by: 加嶋裕吾 : April 22, 2011 09:26 AM
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