September 13, 2011

「香港 路地的 裏グルメ」

HonkongRojiteki2.jpg香港路地的裏グルメ/池上千恵 著・小野寺光子 イラスト/世界文化社

 ぼくが日頃から愛読しているブログのひとつ、いやふたつ、おっと三つだ。「お江戸から芝麻緑豆」「開心香港街市」の"こももさん"こと池上千恵さんが著者、「ONE DAY」の小野寺光子さんがイラストをお描きになったガイドブック仕立ての本が出た。「香港 女子的 裏グルメ」の続編である。
 おふたりのブログは、たべものに向ける情熱の大きさと熱、その書きっぷりが楽しい。それが二人分重なるんだから、この本がおもしろくないわけがない。さっそく買ってきた。
香港が好きで好きで好きでたまらないふたりが、その思いのたけをそそぐ、香港の裏通りにあって地元のひとびとが日常的に通う店の、内臓のうずたかく乗せられた麺やお粥や丼もの・点心、そしておやつの数々。

 異文化を理解するなら、まず好きになることからはじめるのがいいに決まってる。だとすれば、人間に普遍的な興味である「食べること」を手がかりにするのは相互理解の王道だ。国家というヤツは、国境はここだあそこだと押し合いへし合いして、のべつ排他的にならざるをえない。しかしひとりひとりの人間はそれとちがって、店のオヤジが「これはうまいよ」と言って皿に盛った料理を出し、それを食べた客が「なんてうまいんだ!」と喜べばそれだけで、たがいに理解と信頼を結ぶことができる。それが路地的裏グルメの力だ。

HongkongRojiteki2S.jpgClick to PopuP
 期待にたがわず、書かれているもののどれもこれもが旨そうで、しかも20〜30香港ドル(1ドル=10円)から、50$に届かないくらいのものばかり、手当たり次第に食べあるいたら何日かかるだろう。その安い旨い繁盛する店の背後にある主の人柄、店構え、やってくる常連たちの振る舞いにいたるまで、記述は著者の主観であるとおっしゃる。そうやってひとりの人間が自分の数枚のコインと責任をもって評価を下してこそ、料理と店のありようと著者自身を、ぼくたちは感じとり信じられるのだ。だれの眼鏡をかけて見たものなのかわからない新聞の記事や世論調査など、ぼくは信じない。全ての店名、食べ物の名称に広東語読みでルビがふってあるから、多少は広東語を勉強できる。それもまた、いつか香港で不器用な友情を構築する助けになるだろう。

 こももさんと光子さんには香港とは別に大きな情熱を傾ける対象があるが、その情熱のあまりの大きさと深さは、ぼくの理解のかなたにある。V6レスリー・チャンである。V6は香港とは関わりがなさそうだが、情熱のほどを知るにはブログのバックナンバーを探す必要がある。( 補記:そう書いたら、こももさんのコメントで、V6にハマったのは香港公演を見て以来だと訂正があった。じつはV6とも香港を通じてのご縁なのだ )光子さんがONE DAYの新しいエントリー「すべてはレスリーから始まった」にくわしく語っていらっしゃるように、レスリー・チャンと香港への愛情は分かちがたく結ばれている。彼女は、この本でたくさんのイラストを描いていらっしゃるが文章はないだけに、香港について語ればとどまるところを知らないと言われる情熱のすべてがイラストに姿を変えているにちがいない。
出版記念のトークショーを聞きに行こうと思っていたが、またたく間に予約が埋まったそうだから、人気のほどが知れる。
最後にひとつ付け加えておこう、ふたりは軽挙妄動を気取っていらっしゃるが、そのかげに品の良さがところどころで見え隠れするのがこの本の味わいをいいものにしている。

かつてスパイ小説で読んだ香港ははるか遠くにあったが、いまはなんて近くにあるんだろう。・・・といってもぼくは、現実には返還前に一度行ったきりだから、そう感じるのはこの本とおふたりのブログのお蔭なのだ。

■こんな催しがひらかれます
 池上千恵著『香港路地的裏グルメ』出版記念
「香港“女子的&路地的”裏グルメ 小野寺光子 ILLUSTRATION原画展」
 会期:2011年9月18日(日)〜22日(木)10:30~18:00(22日は15:00終了)
 会場: SPACE K代官山
■追加情報
iPhoneのアプリケーションに、こんなものがあるのを見つけました。
料理の広東語表記があって発音を聞けるのは、とてもたのしいのだが、もうすこし料理の種類をふやしてほしい。
バージョンアップしてくれることを期待しよう。いずれも250円
飲茶点心ー中華料理(香港飲食)
香港茶餐廳 - Cha Chaan Teng(飲食店_喫茶・軽食)
Yum Cha Dim Sum (Food_Hong Kong):上記の「飲茶点心」の英語版

投稿者 玉井一匡 : September 13, 2011 08:15 PM
コメント

こももさま
 わたしは食べることや香港のような裏町が好きなので、お二人のブログに食べものが登場するのを、日頃から楽しみにしています。とりわけ香港モノは書き手の思いが深いからでしょう、目的に向かうときの勢いがひときわ前がかりであるのを好もしく思い浮かべながら読んでいます。そうか、かの6の諸君への想いもそうでしたね。(いや、1/6なのかもしれませんが)やはり、彼らも香港がらみだったのですね。そうこなくっちゃあ話がおもしろくない。つじつまがあってひと安心です。ところで、恐れ多くもあからさまに*6などと書いてしまい失礼しました。
今後ともさらなる香港侵入記を期待しています。

Posted by: 玉井一匡 : September 14, 2011 05:53 PM

Kadoori-aveさま
 この本は、取材の過程からONE DAYで見学させていただいたので、なんだか自分のことのようでした。お二人がめしあがったものを、一緒にむさぼり食っていました。こういう本は拾い読みしているうちに読み終わるということが多いのでしょうが、通読してしまいました。これでも香港の一部分でしかないのだから、すっかり行きたくなってしまいました。
吹き抜けから見おろした天井扇の陰にチラリとレスリーの額が掛けられているのを見つけて、ついニヤリとしました。

Posted by: 玉井一匡 : September 14, 2011 05:39 PM

ご無沙汰しております。こももこと池上千恵です。
ごていねいに本をご紹介くださり、ありがとうございます。イベントも刻々と日にちが迫る中、
緊張しつつも小野寺さんがご一緒というだけで心強く、楽しみな気持ちも強くなってきました。
ご縁あって一つのものを一緒に作ることができたことを、本当に光栄に思います。そしてその
ご縁が玉井さまをはじめ、多くの方との出会いを生んでくれたことも…。
V6、モロに名前があっておもわず、おおー!と(笑)。実は、こんなにどっぷりハマるきっかけ
は、彼らの香港公演に何の予備知識もなく参加したことでした。
やっぱり始まりは「香港」。今の私の全ての原点なのです。

Posted by: こもも : September 14, 2011 02:47 PM

本とイベントを取り上げてくださってありがとうございます。今回の「路地的」の本は、取材にも同行したため、前回よりさらに「ああ、この雰囲気や空気が伝わらないかしら、いえ、伝わってくれないと困る」という思いでイラストを描きました。池上千恵さんも私も、仕事ではありますが、好きで好きでたまらないものを、なぜ、どう好きなのか、どうしても伝えたいという気持ちが強いのだとおもいます。「ねえねえ、聞いて。こんなものを食べたのよ」「こんなものを見たのよ!」と、そばにいる人たちに話しかけるような気持ちで書いて&描いています。
お店で出されたものを残さないのも共通点です....♪

Posted by: kadoorie-ave : September 14, 2011 01:32 PM
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