October 02, 2011

科学博物館へ:「恐竜博2011」と2万4000年の物差し

KahakuTiraTriS.jpgClick to PopuP:トリケラトプスを待ち伏せるティラノサウルス

 10月1日、科学博物館へ行った。目的は2つ。
ひとつ目は、7月にチケットをいただいたのに「恐竜博2011」の会期がまたしても残り2日になってしまったので、トリケラトプスを待ち伏せするティラノサウルスの骨格などを見ることだったが、それにもうひとつ重要な目的があった。

 プルトニウム239の半減期である24,000年、あるいはフィンランドの核廃棄物貯蔵施設の保存期間が設定した100,000年という時間は、とてつもなく長くて実感がない。何か具体的な物差しとなるものが、博物館の常設展示にあるにちがいない。それを見つけたい。
科学博物館に着いたのは11時頃でちょっと出遅れたので、蛍の光を聞きながら出口に向かうことになった。子供の頃、一日中博物館にいた日曜日のように、ひさしぶりに長居して同じように胸を躍らせた。

 恐竜博の展示にはさまざまな実物の骨格化石がある。レプリカの骨格は、組立てかたに自由があるのだろう、生活や振る舞いを再生するように組み立てられている。待ち伏せる姿勢をつくらせたり、ほかの種と組み合わせて展示するなどの配慮があるのだ。待ち伏せるティラノサウルスは、小さな前足は伏せた状態から立ち上がるときに使われたという新しい説にもとづいたものなのだろう。研究が行動学にまで及んできた成果を反映したものなのだろう。中には、2011年2月に発表されたという最新の研究成果の展示まであったし、残された物質を分析して始祖鳥の羽の色まで復元したという展示は、2009年に発表された研究成果なのだ。まだ2年前のことだ。

 恐竜が栄えた期間は1億6000万年。いまから6550万年前にユカタン半島にぶつかった巨大隕石の衝突による気候変動で絶滅したとされるのだから、2万4000年を実感できる物差しは、もとよりこの特別展示にはない。
 しかし逆に言えば、かくも長い時間をかけて地球の環境に適応するようにつくられた緻密で巧妙な生物の共生システムを、ぼくたち人類は壊してしまうかもしれないのだ。現在、産業革命から数えて200年間、原子力をつくり出してから半世紀強、これを台無しにしてしまうに要した時間がいかに短いものかということを実感する。

KahakuHito1S.jpgClick to PopuP ネアンデルタール人:約20万年前〜2万数千年前
 ぼくが求めるものは、常設の地球館にあるはずだ。こちらは人が少なくて落ち着いて見られる。まずは「シアター360」の行列の最後尾についた。この日から10月の新しい出しもの「 マントルと地球の変動–驚異の地球内部–」&「宇宙137億年の旅-すべては星から生まれた-」である。球形の内側のスクリーンに映し出される映像を中央のブリッジから見ると前後上下左右の光景は、目も眩む臨場感だ。ビッグバンから地球の誕生そして現在の地球内部へ潜入するまで、長い長い137億年をわずか10分に縮めて説明し体験させ納得させる。映像のリアリティも編集もじつによくできている。15分の待ち時間は十分に報われた。

 そこを出て2万4000年の物差し探しにとりかかる。まずは人類の発生から始めようとB2Fの「地球環境の変動と生物の進化」の展示を探すと、ほどなく「彼」に遭遇した。この展示には、発見された猿人、原人あるいは旧人の骨からつくられた復元像が何人かいる。中には、二足歩行で名高い「ルーシー」もいた。彼女は320万年前のレディーだ。恐竜の時代が1億6000万年あったのに対して、人間は二足歩行を始めて300万年にすぎない。
 プルトニウムの半減期にもう少し近い復元像はネアンデルタール人、フランスの「ラ・フェラシー」で7万年前の骨からの復元像である。7万年は半減期のおよそ3倍だから、1/2の3乗つまりプルトニウムの線量が1/8になるわけだ。10万年までは、あと2万8000年。

KahakuNihonHomoS.jpg港川人:1万8000~1万6000年前
 ネアンデルタール人は2万数千年前ころまでいたというから、かれらの退場はほぼプルトニウムの半減期に一致する。彼らがいなくなったころは同時に、ホモサピエンスが表舞台に登場した時であるはずだ。そのホモサピエンスが現れたのが20~25万年前、プルトニウム239の半減期の10倍だ。人によっては、高濃度廃棄物が無害になるには20万年というから、ホモサピエンスのこれまでの歴史をそっくり費やすことになる。日本列島のホモサピエンスの骨は土質のために保存されにくく、3万2000~1万2000前の断片しか見つかっていないという・・・沖縄で骨が発見された「港川人」の小さな、しかし凛々しい男の絵が説明書きに添えられているだけだった。しかし、この時代まではプルトニウムの半減期にほぼ等しいではないか。ホモサピエンスの復元像がないのは、見てくれは今の人間と変わらないし、シンボルとしてはあまり面白みがないからなのかもしれない。

 ああ、おもしろい一日だったと思うそばから、いま我々は深刻な事態に直面していることを思った。いまのぼくたちには、プルトニウム239の半減期24,000年という時間がとても大きな意味をもつようになった。
かつて、原発か石器時代に逆戻りかという二者択一を迫っておどす連中がいた。じつは、石器時代は電力不足のシンボルではなく、原発の汚染の長さのシンボルであることがわかった。それは、ネアンデルタール人が滅びてから現在までの時間にひとしいのだと。

■関連サイト
 *国立科学博物館(高校生以下、65才以上は常設展示の入場料が無料です)
 *シアター360
 *アジアの先史時代年表
 *American Museum of Natural History(アメリカ自然史博物館)
■wikipediaの参照項目
 *Lucy
 *Neanderthal
 *ネアンデルタール博物館
 *ラスコー洞窟
 *Humanヒト(英語版)
 *Tyrannosaurus(ティラノサウルス英語版)
 *Triceratops(トリケラトプス英語版)

 

投稿者 玉井一匡 : October 2, 2011 12:07 PM
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