November 13, 2011

「Steve Jobs 」英語版が届いた

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 大きい、厚い、しかし軽い。キッチンスケールで計ってみると英語版990g日本語版2冊合計985gで、ほとんど差がない。「Steve Jobs 」の英語版がやっと届いた。
 表と裏の表紙の見返しは、見開きで全面にジョブズが書斎の机の前に座っている同じ写真だ。机の上のiMacのディスプレイの中では、妻のローリーンが息子のリードの肩に腕をかけて笑顔がこぼれている。サンダルを履いたジョブズは椅子を下げてうしろに寄りかかっていて、黒のタートルをパンツインといういつもの姿で、デスクトップには目の前に愛用の眼鏡、右端には小さな箱が無造作にかさねられている。彼のボブ・ディランへの傾倒ぶりからすれば,この箱はブルースハープが入っているのではないだろうか。ディスプレイの上にはiSightカメラがついているし、SKYPEで2人と話しているという風情だ。こういうジョブズがあったのかと感じさせるいい写真だが、日本語版では下巻のとびらの「スティーブ・ジョブズ Ⅱ」という文字の下に小さく印刷されているにすぎない。同じ写真でも、扱い方ひとつで伝わるものがまったくちがうことがよくわかる。

 日本語版を初めて手にして開いたとき、ぼくは内容を読む前にデザインを不満に思った。表紙は英語版に日本語を加えたくらいのことだからそれほど悪くなりようがないが、目次と本文のページがどうにも間が抜けているし、写真はそれ自体ひと昔前の新聞のようなぼやけた代物であるうえに文字との関係もしまりがなくて愛情をこめてつくった本にはとても感じられず、読者であるぼくの方も愛情をいだけない。著者と主人公の国でつくればまさかこんなものにはしないだろうから、やはり英語版がほしいと思った。おおよそは、先に届いていたAKiさんの電話でうかがっていたが、日本語版と英語版は大違いだった。しかも、むこうは値段が安いんだ。:英語版 2,131円、日本語版上下合計3,990円なのに、日本語版は内容を省略、デザイン省力、編集簡略なんだから、為替格差のせいにはさせない。

 日本のamazonで1,400円台のペーパーバック版を見つけて注文したが、数日経っても発送通知のメールが来ない。amazonを見直すと、スペイン語版であることがわかった。あわててキャンセルの手続きをすると、さいわい間に合った。それからまた数日経、発送のメールが来ない。こんどは、まだ注文手続きを完了していなかったらしい。三度目の正直の注文をすましてやっと届いたのだった。
 日本語版を読み終わると、ありったけの力をそそぎ製品を生み出したジョブズの生涯を描く本を、こんなもので済ますはずがないと思ったとおり。日本語版は多くを省いている。aki's STOCKTAKINGにあるように、「ACKNOWLEDGMENTS(謝辞)、SOURCES(出典)、NOTES(覚書)、INDEX(索引)、ILLUSTRATION CREDITS(挿絵クレジット)」それに登場人物リストも削除。英語版の写真ページは紙質も印刷もきれいで文章のページの間にあるが,日本語版は文字と同じ紙に印刷して巻頭にまとめる。さらに、英語版では各章のはじめにあるスティーブの写真も日本語版では捨ててある。

 もうひとつ、理由の分からない違いがあるのに気づいた・・・章の数が違うのだ。英語版は42章あるのに日本語版は41章。つきあわせて比較すると内容が削られているのではない。英語版は20章の「A Regular Guy: Love Is a Four-Letter Word」、21章の「Family Man: At Home with the Jobs Clan」とあるものを、日本語版では第20章の「レギュラーガイ:凡夫を取り巻く人間模様」のひとつにまとめている。
 ジョーン・バエズをはじめいくつかの恋、生みの母と妹や父の消息探し、かつて認知を拒んだ娘リサなどを書いた第20章。ローリーン・パウエルとの出会いから結婚を経て3人の子供たちと築いた家庭、そこでリサもハイスクール時代を過ごす第21章のプライベイトな世界。その2章である。テレビのバラエティ番組のような副題「凡夫を取り巻く人間模様」とは、大切にしているとは思えない。別れた人たちを辿る第20章と、安定した家庭を築く第21章は、GuyとMan、RegularとFamilyを対比させる。それをひとまとめにして俗な副題をつけるどんな理由があるのか想像もつかない。表紙の見返しの大きな写真も、ジョブズの激しい生き方とは別のレイアに「Family Man」の穏やかな日々があったことを感じさせる。ちなみに、A Regular Guyとは、実の妹モナ・シンプソンが兄をモデルに書いた小説のタイトルである。

 日本語版は、編集時間が少なかったのは分かる。といって、削除しなくてもどれだけの時間がかかっただろう。まして上下巻にわけるなら、下巻を少し遅らせればいい。今からでも、削除したものを別冊にして店頭で配布してくれないか。それもできないなら、ウェブサイトに公開すれば費用はかからないし、PDFでなくテキストで公開すれば、編集もプリントも製本も読われわれが自由にできる。
 パーソナルコンピューターが先頭を切っていた時代はそろそろ終わるという意味でも、ジョブズのインタビューをもとにした伝記は最初で最後という意味でも、これが大切な本であることが理解されていない。内容も理解しないまま、つくられたのかもしれない。APPLEなど知らない「ビジネスマン」なら人間の名前など興味がないし、APPLEを好きなやつは、すでに分かっていると思ったのか。日本人の読者には少しでも安いことが重要だとみくびったのか。・・・だとしたら、日本語版にかかわった諸君、もう一度この本を読んでみてくれないか、そういうものじゃないとジョブズが教えてくれるだろう。
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■追記  上の写真で机の右端に積んである小さな箱はブルースハープだろうと思って、裏をとろうと写真を検索したがみつからない。写真を添付してmasaさんにメールで質問すると、しばらくして返信がきた。「やはり、Hohner社のmarine bandというシリーズのハーモニカの箱ですね、間違いないと思います」という。Hohner社のサイトを見てみると、なるほど間違いなさそうだ。ボブディランのサイン入りのものもあって、ちょっと魅力的なのだ。wikipediaの「ハーモニカ」には、ブルースハープという名称はホーナー社の商品名だったのが、単音10穴のハーモニカを言うようになったとある。ジョブズがもうすこし長生きしたら、Garage Bandのレッスンストアで、ボブディランがハーモニカを教えてくれたかもしれない。

投稿者 玉井一匡 : November 13, 2011 01:45 PM
コメント

木村さん
 ご無沙汰してます。
いや、英語は斜め読みなどできませんからはずかしいことに拾い読みです。だから、あとで読み直そうと思っています。
ぼくは,英語版だけでは心もとないですが、木村さんなら英語版をお読みになった方がいいでしょう。

Posted by: 玉井一匡 : December 7, 2011 09:56 AM

おひさしぶりです。日本語版と英語版、両方をお読みになるとは!すごい。お教えくださりありがとうございます。
何事も仕事に対する意図って本当に大切だということを教えていただきました。ありがとうございます。

Posted by: 木村真 : December 6, 2011 07:38 PM

机の右端に積んである箱について追記しました。

Posted by: 玉井一匡 : November 17, 2011 10:43 PM

iGaさん、たびたびどうも。
たしかに、中身検索を見たら写真がいっぱいありますね。
この本はレストランで2時間ずつ56回のインタビューを重ねて、それをジーナ・スミスが文章化したようです。
謝辞は、ウォズとともにジーナ自身も書いています。
日本では、そういうばあいはゴーストライター扱いで名前を出さないのかもしれないけれど
著者としても氏名をあげ謝辞も書くというのがアメリカのスタイルだとすれば、フェアなやりかたですね。
あるいは、アメリカのスタイルというわけではなくてウォズのスタイルなのかもしれない。
日本語版でも、謝辞には名前を出しているんだから
表紙にも何かの形で出すようにすればいいだろうに。

Posted by: 玉井一匡 : November 13, 2011 06:49 PM

そう云えば"iWoz"のペーパーバック版で「なか見!検索」をクリックすると父親や子どもの頃の写真が沢山あるのに唖然としました。日本語版は表紙カバーを除いて写真が一枚もないのにね。ん〜...

それと奥付の著者もウォズだけで、共著者の名はなし...英文のcopyrightにその名があるだけ...なんかフェアじゃないなぁ...

Posted by: iGa : November 13, 2011 05:08 PM

iGaさん
 追記 自伝なんだから、iWozというのは「I was」を重ねているはずですから、日本語版も「iWoz」にするのがお洒落だとおもうけどなあ。
表紙に、ちっちゃくウォズのシルエットに黄色でiWozと書いてあるだけですね。

Posted by: 玉井一匡 : November 13, 2011 04:10 PM

iGaさん
 きのう,図書館で借りてきました。「APPLEを創った怪物」というタイトルにはあきれました。自伝にまさか自分で「怪物」はないでしょう。
もとのタイトルは「iWoz」ですね。
http://www.amazon.co.jp/iWoz-Computer-Invented-Personal-Co-founded/dp/0393330435/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1321165220&sr=8-1
日本語訳「APPLEを創った怪物」は
http://www.amazon.co.jp/アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝-スティーブ・ウォズニアック/dp/447800479X/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1321165220&sr=8-2

Posted by: 玉井一匡 : November 13, 2011 03:21 PM

もう一人のスティーブの自伝"iWoz"も同じ翻訳者で出版されていますが、日本語タイトルは書くのも憚れる酷さ...発行がダイヤモンド社と云うこともあるでしょうが日本人読者を小馬鹿にした確信犯的な印象を受けました。

Posted by: iGa : November 13, 2011 03:15 PM
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