June 23, 2008

ゲリラガーデニング:Guerrilla Gardening

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 イギリスにGuerrilla Gardeningという活動をしているやつらがいると聞いた。
近頃ではゲリラという言葉が使われることさえめっきり少なくなったので、ぼくは言葉だけで深い好感と共感をいだいてしまった。昨今、マスコミが反政府ゲリラと呼ぶことも記憶にない。たいていは武装勢力といい、テロリストと呼び、それだけで暴力的で反社会的・犯罪的な存在であるように感じさせようとしている。かつて、ゲバラやカストロやホーチミンのように、ヒーローに使われたことばが犯罪者のためのものに置きかえられるようなった。
 それは、かつてのヒトラーとはちがって権力者の力の行使が巧妙になったからでもあり、直接にはかかわりのない市民を巻き添えにすることに、ゲリラが潔癖でなくなったからでもある。おそらくはマスコミが現在の権力者の流す情報を鵜呑みにするようになった怠慢のせいでもあるんだろう。
では、このゲリラガーデニングとははどういう行為なのか。

GuerrillaGardeningS.jpgClickToJumpToThisSite
 Googleで「Gardening Guerrilla」を検索してみると Guerrilla Gardening.ORGというサイトがある。
イギリスで活動している、すこぶる平和的なゲリラなのだ。放置されている公共用地を、夜陰に乗じて勝手に草を取ったり植栽したりしてしまうという。このサイトには、さまざまな活動(彼らはMissionと呼んでいるようだ)が報告されている。文章に加えて「BEFORE」と「AFTER」の写真もある。もちろん、このサイトからコミュニティへ(Community)への登録申し込み(Enlist)もできる。

 冒頭の「Welcome」は、こんなふうに書かれている。・・・なんといってもゲリラだ。戦闘的な文章にしておいた。
「このブログは、ロンドン周辺でわれらが企てた非合法の造園行為を記録すべく始めたものだ。
だが、それが見る間に拡がり深まりを見せるようになった現在、このサイトは公共空間をないがしろにする怠慢に戦いを挑むための武器庫(arsenal)と化した。のみならず、いまや世界中のゲリラガーデナーの集結する場となった。
 諸君!  同志として誓いをたてこの広場に集い、園芸戦の第一線から届けられる熱い報らせを分かち合おうではないか。」
・・・アーセナルはサッカーのクラブチーム・アーセナルFCが本拠地としているロンドン北部の地名であることは知っていたが、それが「武器庫」を意味することをぼくは知らなかった。
アーセナルのサッカーが攻撃的な人材が豊富なわけだ。

 たとえば、現在のところ一番はじめに書かれているMissionの例を見ると、冒頭に二つのデータがかかれている。行動の形式と場所、決行の年月日だ。
Maintanance Mission : Albert Embankment
Guerrilla Gardening:saturday31May 08
ここでは、ひとつひとつの行動をMissionと呼んでいる。テムズ川をはさんで国会議事堂の向かいの道路にある植え込みが雑草に覆われていて、いずれは植え込みそのものがつぶされてしまうのは必定というありさまだった。時は昼間とあって、役所の工事担当者に見えるようグリーンのつなぎを身につけて草刈りをしたら、すぐに見つけられてしまった。が、さいわいなことに彼女は彼らのシンパだったので、むしろトウモロコシとひまわりの種を寄付してくれることになった。・・・なんてことが書いてある。

 日本でも植え込みの管理をすべき自治体がろくに手入れをしないところがある。そんなことなら、その前に住む住民に依頼して植物の手入れをしてもらうことにすればいいものを、見るにみかねてその前にある店が自分で植栽をしていると、ある日、やってきたひとびとが違法行為であるとして植栽を撤去してしまったと聞いたことがある。ゲリラは、そうですかといって撤去されたら、また植えてしまえばいいのだ。植物はいつのまにか伸びるものだ。
 道路のアスファルトの割れ目、排水溝のコンクリートとアスファルトの隙間に花をつける三時花(サンジカ)なども、植物自身が行うゲリラ戦の一形態だとぼくは思う。
ゲリラ活動をまじめに考えれば、植えた植物のその後の手入れはどうするのだ、やたらにはびこるような植物はまずいだろう、なんてことも心配しなければならないところはあるが、こいつは面白い活動だ。国・都道府県・市町村の公共事業は必要か否かに関わりなく、むしろ金を使うこと自体を、隠れたしかし第一の動機としているものが少なくないのは周知の事実だ。それがおよぼすマイナスの効果に戦いを挑み、あちらこちらでまちを気持ちよいものにするためのさまざまな戦い方が、ガーデニングにかぎらず、たくさんあるのではないかと考えさせてくれる。

■参考のために
GuerrillaGardeningBook.jpg「ON GUERRILLA GARDENING」という本がある。Guerrilla Gardening.ORGに紹介されているのをぼくはまだ見てもいないが、副題に「境界なきガーデニングのハンドブック」という副題があって内容は容易に想像される。Guerrilla Gardening.ORGでつくったものだ。

・ゲリラ:Wikipediaによれば、ゲリラの語源はスペイン語だと書かれている。フランス語のGguerreからきているのだとぼくは思っていたのだが。
・レジスタンス:じゃあ、Wikipediaでは「レジスタンス」をどう書いているのだろうかと気になった。電気抵抗などから始まって、「レジスタンス運動」についてはすこぶるあっさり3行ほどですませている。じゃあ、フランス語版ならくわしいだろうと思って、「他の言語」から「Francais」を選んでみたが、「Conflit politique et résistance」は2行にしかならない。英語でもそうなのだ。どういうわけなんだろうか。

投稿者 玉井一匡 : 02:27 AM | コメント (21)

June 20, 2006

タチアオイとF.L.ライト

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 ぼくが子供の頃には、タチアオイはあちらこちらの空き地や庭先に咲いているありふれた花だったが、地面に近い下の方の葉っぱが黄色くなりはじめてもいつまでも落ちずについていたり、なぜかハエが葉っぱにやってくるので、ぼくには、ちょっときたない植物のように思われたのだが、じつはおいしい植物だったということなのかもしれない。同じように感じた人が多かったのだろうか、いつの頃からかあまり目にすることがなくなった。
 世の中にハエというものが少なくなったせいなのか、そのタチアオイが咲いているのを道すがら見ることがこのごろは多くなったように思う。いつも通る道の、中央分離帯にタチアオイが咲いているところがある。お役所仕事で部分的にタチアオイを植えているのは見たことがないし、整然とうえてあるわけではないから、近くの住人が勝手に植えたものだろう。そういうことを想像すると、ぼくはちょっと楽しくなる。
「目白・下落合歴史的建物のある散歩道」を見ていたら、目白駅から明日館にむかう道がライトの小径という、ちょっと気恥ずかしい名前をつけられていたので、ライトがタチアオイを好きだったことを思い出した。

  ライトは、古くからパースの前景にタチアオイを描いている。(左図は1901年)彼が植物としてあるいは花としてタチアオイが好きだったからというよりも、水平に伸びる住宅の多いライトのパースには、垂直に立ち上がるタチアオイの対比的な姿は建築をひきたてるからだったのではないか。つまり、タチアオイの姿が好きだったのだろう。ライトがデザインした、縦軸の周囲に小さなあかりが灯る照明器具は、いまでもペンダントやスタンドとして商品化されているが、これはタチアオイの姿をデザインソースにしたものにちがいない。

Barnsdall House(1917~21)ではクライアントのアリーン・バーンズドール夫人が好んだタチアオイ(Hollyhock)をさまざまに幾何学的デザインをほどこして外壁にも柱にも繰り返して装飾として使っているのでHollyhock Houseとも呼ばれた。ライトの住宅集の表紙に、その写真が使われている。(フランク・ロイド・ライト住宅集/A.D.A. EDITA Tokyo)
アリーンは、数年間この家に住んだあと、映画関係者に利用してもらうよう、ロサンジェルズ市に寄付したという。こんな大きな家をつくるのだからずいぶん金持ちなんだと思うが、それをポンと寄付してしまったのだから、もっと金持ちだったのだ。
 
 1932年、当時、MOMAのキュレーターだったフィリップ・ジョンソンが企画して開いたインターナショナルスタイル展への参加を、ライトは拒否したことがある。場所に固有の条件を生かした建築をつくるべきだと考えていたからだ。この家では南アメリカの先住民であるインカのデザインを継承して壁などにタチアオイをつかったレリーフをほどこした。そうやって古来の文化への尊敬を示すことは、当時の白人としては、精一杯のフェアな態度だったろう。
インディアンをだましたり殺したりしたおかげで白人が国土を手に入れたのだという共通認識が、今でさえできているとは思えないのだから。
 ところで、ライトとは何の関係もないことだが、JリーグJ2水戸のチームの愛称をホーリーホックとしたのは、水戸黄門の印籠の印、徳川家の家紋である三葵にちなんだものだろう。

投稿者 玉井一匡 : 09:40 PM | コメント (2) | トラックバック